素敵な名前のホテルが好きだ。
サンタモニカのShutters on the Beach
マンハッタンのThe Standard
ワイキキのHotel Renew
シンプルで響きがよく、リズミカルで文字面もよい。
HOTEL SHE, KYOTO
もしかして、日本で1番素敵な名前のホテルなんじゃないかな?と思う。それほど好き。
このホテルのプロデューサーである龍崎翔子氏(東大在学中の23歳)の言葉選びが私は好きなんだ、と思う。彼女のチョイスする言葉にはストーリーがあるのだ。
HOTEL SHE, KYOTOのHPには、「お客様」という言葉ではなく「旅人」という言葉が使われている。
乾いた旅人の心を潤す場所、旅人たちにひとときの安らぎを与える部屋、旅人たちを癒すアイスクリーム。
そうか、私はお客様でも宿泊者でもなく、旅人なんだ。彼女の選ぶ言葉で、私はすぐに物語の主人公になった。
開業3年目の3/21にリニューアルオープンを迎えるHOTEL SHE, KYOTO。
たくさんのストーリーを紡ぎ出す彼女が、今回、私たち旅人たちに向けて、どんな作品を見せてくれるのか?
大きな期待を胸に、東京から京都へ。旅人としてHOTEL SHE, KYOTOを訪ねてみた。
そこは本当に最果てであった
ホテルのテーマは“最果てにある旅のオアシス”だそうだ。
「え?東九条って京都駅から1駅でしょ?最果てなんかじゃないでしょ!?」。これ、京都に疎い人はみんなそう思うはず。私も例にもれず。だってすごく都会のイメージ、京都駅の隣だもの。
オープンなカフェがいっぱいあって、和モノのおしゃれなセレクトショップがあって、深夜までやってる素敵なバーが並ぶ。私が想像した東九条。
でも、実際に行ってみた東九条という街は、最果て感がたっぷりだった。
同時に「ホテルは辺境にあるもの」という彼女の想いが叶う場所であり、HOTEL SHE, KYOTOは間違いなくこの街の中で“オアシス”として、旅人に安らぎと潤いを与えるんだろう、と確信する場所でもあった。
オリジナリティとミニマル
フロントデスクの横には、レコードが数十枚収納されている。
すべての部屋にレコードプレイヤーが設置されており、ここで好きなレコードを視聴して購入することができるのだそう。
私は普段、音楽を聴かない。でも、ホテルの提案に乗っかるのは大好きだ。だからすぐに物色を始める。そしてまさに“秒”で、決めた。「コレだ!」。久々のレコードとの遭遇に緊張し、大事に抱えて、部屋にあがる。
部屋の中には、私が求めるものがすべて揃っていた。
・多めのハンガーラック
・ベッド脇のコンセント
・全身が写る鏡
・ベッド以外に座れる場所
・使い捨てのスリッパ
広い部屋やたくさんのアメニティは求めていない。でもこれらのどれか1つがないとストレスなのだ。私にとってミルマルな部屋。完璧。
そして何よりも、「あれ?どこにいるんだっけ!?」一瞬考えてしまう、街からは想像がつかないビジュアル。そうか、私は最果てのオアシスに来たのだった。
靴を脱いでスリッパに履き替えてから、荷物を開ける。洋服をハンガーにかけて、レコードに針を落とす。
音楽に慣れ親しまない私が、一瞬にしてレコードを選んだ理由。それはジャケット。今日たまたま私は1本のバラを買ってきていたのだ。旅先で聴く音楽の決め方、こんな感じがいいじゃない?
流れてくるハートフルなメロディに包まれながら、新しい出会いに感謝する。
もう1つの新しい出会い
フロントの横にアイスクリームのキオスク。なんということ。
ホテルの部屋の冷蔵庫には、冷凍庫がついていることがほとんどないので、おいしいアイスクリームを好きな時間に部屋で食べる、という行為はとてもハードルが高いのだ。
しかもオシャレすぎるアイスとして話題の“BIG BABY ICE CREAM”。
持ってきた本をめくりながら、ホテルのベッドの上でアイスクリームを食べる、という新しい体験。
流行や文化が生まれる場所
1Fエリアに大きく広がる、PARLOR SHE, SIDE(やっぱり名前がいいじゃない)。
至る所にコンセントがあり、パソコン持ち込み、もちろんスマホの充電だって自由。旅の合間だって仕事を片付けなくちゃならない、現代の旅人に向けた仕様がよい。
PARLOR SHE, SIDEでは、アルコールも飲める。宿泊者以外も利用可能。
見知らぬ同士の化学反応により、ここから新たな流行や文化が生まれていくんだろう。
朝ごはんも4種類からオーダーできる。ここで飲めるクラフトコーラの“ともコーラ”には、SHE, 用に作られたオリジナルフレーバーも。スパイシーで朝のカラダを目覚めさせるのにぴったり。
HOTEL SHE, KYOTOには、4つのシンクと電磁調理器が置かれたシェアキッチン、そして2台のランドリーマシンもある。長い旅路の途中でも安心。
「SHE,」その名前の由来と想い
“SHE”は“彼女”という意味だと思っていた私は、龍崎氏に会って開口一番、「“SHE”の後の“,(カンマ)”の意味を教えてください!」と。
「カンマは、文章を区切るためのもので、いったんそこで一息入れてね、という意味合いがあります。旅の途中に、一息休めるような場所でありたい、という思いからカンマを付けました。」
ものすごくなるほどである。
そして翌日になって思った。どう考えても、“SHE”は“彼女”ではないのではないか?
龍崎氏を目の前にして、ジェンダー的な意味合いを持たせた名前を付けるわけがない気がしたのである。
そこで、今さらながらSHEの意味を…と再度質問。
「私たちがホテルを運営するにあたり掲げているテーマ、Satisfaction(満足)、Heartful(心温まる)、Emotional(感動的な)の略で“SHE”です。普通のホテルってSatisfactionで終わってしまうことが多いと思うんですが、私たちはさらに、HeartfulとEmotionalを提供したい、と考えています」
“最果てにある旅のオアシス”で、ぜひ“SHE,”を体験してほしい。
HOTEL SHE, KYOTO
@hotelshekyoto
京都府京都市南区東九条南烏丸町16番地
「京都」駅八条口から徒歩10分/京都市営地下鉄「九条」駅から徒歩2分
1室1泊:5,000円~ 税別、宿泊料は季節により変動
公式HP
楽天トラベル
藤井利佳(フジイリカ)
ラジオ番組の制作からキャリアをスタートし、webメディアの企画運営、雑誌・書籍の創刊、監修、イべントのプロデュースなど、多くの女性向けコンテンツのクリエイションとサービスのディレクションを手がける。2016年9月、雑誌『GENIC』の編集長に就任。2017年4月より、当サイトの編集長も兼任している。