オカダキサラ
写真家兼会社員兼ブラリズム家 1988年生まれ、東京都出身。武蔵野美術大学在学中に、ストリートフォトに目覚める。『週刊オカダ』 (https://kenelephant.co.jp/magazine/)、『ROADSIDERS’weekly』(https://roadsiders.com/)で写真コラム掲載中。
愛用カメラ:Canon EOS R5、Sony α7 IV
愛用レンズ:Canon RF50mmF1.8STM/EF40mmF2.8STM、Sony FE40mm F2.5G
いま、ここで生きていることの不思議さ
見る人の経験や記憶、想像力や感性に働きかける一枚を撮りたい
「私にとって撮影することは、歯磨きと同じようなもの。カメラはいつも持ち歩いています。日常生活に溶け込んでいて、“撮影のため”に出かけるという感覚はあまりありません。散歩中に何か気づくものがあれば、シャッターを切ります。路上フォトを撮っていると、日常を客観視できるだけでなく、あらゆるものにアンテナが広がり、感覚が敏感になります。予想外の出来事を発見する機会も増えて、『今日はどんな瞬間に出会えるだろう』と、毎日ワクワクできます」。
ふっと笑えるだけでなく社会性や時代性も写したい
「撮影中はハッと気づいたものをひたすら追いかけ、写真をセレクトするときに初めて『どういうものを表現しようか』と考えます。ふっと笑えるだけが選ぶ基準ではなく、構図や色味が美しかったり、物理的には写っていない社会性や時代性が写っていたりするものを最終的に選んでいます。写真を見てくださる方から『どうしてこうなったんだろう』とツッコミをいただけるよう、多くの要素を画面に盛り込むようにしています」。
「標準レンズを使用し、被写体の方に撮影していることがわかるようにして撮っています。また、一個人を傷つける恐れや事件性の高いシーンは、撮影や発表を避けます。『これは本当に特定の被写体の方を傷つけないか』と自分自身に問いかけることが、制作上で一番長い時間です」。
たった一度きりしか体験できない瞬間の連続を生きていることを、路上フォトは教えてくれる
「一箇所でジッとしていることが苦手な性分で、撮影では1分も待つことはありません。『ここでこんな感じの人が通りかかってくれればかっこいいのに...』と思うことはたくさんありますが、固執して他の瞬間を見逃すほうがもったいないので、あまり理想のシーンは持たないようにしています」。
「目指している写真は、ふっと笑ってくださると同時に、写された風景に疑問を持ち、見る人の経験や記憶、想像力や感性に働きかけることができる一枚。路上フォトグラフィーを続けていると、二度と同じシーンには出会えないことを痛感し、たった一度きりしか体験できない瞬間の連続を生きていることを学びます。私の作品が、見てくださる方にとってご自身だけの日常の奇跡を発見するきっかけになれたら嬉しいです」。
GENIC vol.63 【すばらしきドラマな路上】
Edit:Satoko Takeda
GENIC vol.63
GENIC7月号のテーマは「Street Photography」。
ただの一瞬だって同じシーンはやってこない。切り取るのは瞬間の物語。人々の息吹を感じる雑踏、昨日の余韻が薫る路地、光と影が落としたアート、行き交う人が生み出すドラマ…。想像力を掻き立てるストリートフォトグラフィーと、撮り手の想いをお届けします。