急遽の予定変更。縁があって富士宮市へ移住
この記事に登場する女性は、京都府福知山市出身で、東京都内で3年間営業職として働いた後、退職して富士宮市街地に移住した、ayameさんです。
といっても、彼女の当初の計画では、退職後はオーストラリアのワーキングホリデーに行く予定でした。
出国予定は、2020年春。時節柄、出国を諦めたayameさんは、縁を頼って、まずは山梨県南部町の宿にステイ。そこで住み込みの仕事をしながら、今後の身の振り方を考えている最中に、これまた人の縁で出会った静岡県富士宮市のシェアハウスに移住することを決めました。
オーストラリアで暮らした後、国内でゆっくりと「暮らす場所探しの旅」をしようと考えていた彼女が、なぜ今富士宮市を選び、納得して暮らし続けているのでしょうか?
最初は直感。けれど、求めていたバランスのよさをすべて備えた街だった
「富士宮市に住もうと思ったきっかけは、最初は直感でした。なんだか、ここで暮らしてみたいな、と感じたんです」。
その気持ちを紐解いてみると、鍵は富士宮市の都会・自然のバランスのよさと、街を流れるゆったりとした時間の流れにありました。
ayameさんは、もともと東京都内で営業職として働いており、朝早く起きて満員電車に乗り、夜遅く帰宅。急いで夕食を食べ、明日のために即眠るような慌ただしい毎日に、疑問を抱いていたそう。
「だから、次に暮らす街では、ゆっくりと暮らそう、と心に決めていました。その視点で富士宮市を見てみると、富士山に抱かれた自然豊かな場所にほどよく街が繁栄していて、おしゃれなスポットも点在。街を流れる空気はゆったりとしていて、肌に合う、と感じられました」。
アクセスのよさも、移住の決断を後押しした理由のひとつ。「友だちや、通い続けたい美容室がある東京都心に電車で2時間で行けますし、出身地である関西にも、電車・バスで気軽に帰ることができるので、移住する!という重たさを感じずに済みました」。
会社員と個人事業主の両立。「仕事の理想」も具現化できた
現在は、富士宮近郊に本社を置く設計事務所で、週4日勤務の正社員として働きながら、設計事務所の一角を借りて、個人のジャグアアーティストとしても活動しています。
ジャグアアートとは、自然由来のインクを用いて、2週間ほど持続するアートを肌に施すこと。
ayameさんの得意なモチーフは、花や植物など自然由来のもの。Instagram(@monro_jagua)に施術事例やアートカタログを載せ、予約制で施術するスタイルで仕事をしています。
「以前の営業職では、本当にお客様が喜んでくださっているのか、自信が持てなかったんです。
けれどジャグアアートの仕事は、基本的には施術を望んだ方が予約してくださり、施術後は喜んでくださる姿を間近で見られるため、私にとっていい循環がある仕事だな、と感じます。
開業当初は、このままジャグアアーティストとして独立することも考えました。けれど正直、移住先で、個人事業主一本で仕事をしていくことは不安でした。
なので、住んだシェアハウスでご縁をいただいた設計事務所で、週5日の正社員ではなく、週4日の正社員として採用していただき、ライフワークとしてジャグアアートをすることに決めました。
わがままを聞いてくれた設計事務所には、今でもとても感謝しています。富士宮市に移住してから、自分に合ったリズムで生きられるようになったんです」。
日常の景色が贅沢。春夏秋冬、目が離せない富士宮市の暮らし
「仕事のほかにも、富士宮市に移住して、幸せだなぁと感じる瞬間はたくさんあります。
たとえば、家から市街地にある富士山本宮浅間大社まで、朝のジョギングをする時。目的地が浅間大社であることも、富士山が合間に見えることも、とても贅沢。
晴れの日はもちろん、曇りや雨の日にも富士山が見える可能性があって、その表情が毎日異なることを知ってからは、"今日はどんな風に富士山が見えるかな"とわくわくします」。
「ふと思い立って足を伸ばして朝霧高原に出かけて、誰もいない大自然の光景を独り占めすることも。7月〜10月の早朝にだけ見られる、朝日を反射した珍しい『赤富士』が観察できた日は、未だに感動してしまいます。
こんな日々が、私が前に暮らしていた東京都心から、数時間の距離の街で味わえるなんて、すごいことです」。
今度は私が、富士宮市のよさを広めていきたい
富士山の美しさはもちろん、喫茶店めぐりや、富士宮市近郊で活動する「小粋なイベント屋さん nicoli」主催のドレスコードありのマルシェ訪問など、まだまだ「発見」していきたい富士宮市街地の魅力がたくさんある、と語るayameさん。
今後は、勤めている設計事務所が創設する富士宮市内の新シェアハウスの管理人に就任して、SNSなどを通じて街の魅力を発信する側になりたいと考えています。
「世界を旅して暮らしたい場所を探そうと思っていたけれど、私にとってのぴったりな街は、富士宮市にありました。よかったら、富士宮市に一度遊びに来てみてくださいね」。
ayameさんから、移住を希望する人へのアドバイス
富士宮の街中移住にぴったりな人って、どんな人?
ローカルのリズムと、自然が好き。けれど、街中の便利さやおしゃれなスポットめぐり、東京へのお出かけも捨てがたい、と感じる欲張りな人に、富士宮市街地への移住はぴったりなんじゃないかなぁと思います。「ほどよい田舎」を求めている方にオススメしたいです!
逆に、こんな人は向いていないかも……と思うタイプの人はいる?
富士宮市といっても、市街地と朝霧高原エリアでは暮らし方が異なるので、たとえば「集落を盛り上げたい」という気持ちがある人は、柚野(ゆの)や猪之頭(いのかしら)など、富士宮市街地ではない場所への移住のほうが楽しめるかもしれません。市内に様々な顔があるのが、富士宮市の魅力のひとつだと思います。
伊佐知美の取材後記
移住というと、「絶対にこの街で暮らすんだ!」という強い意志がある人が実行するイメージがあるかもしれませんが、ayameさんはちょっぴり違いました。出会いや縁を頼りに、柔軟に人生プランを変更し得る「余白スペース」みたいなものを持ったまま、富士宮市街地というご自身にぴったりの場所にたどりついて、ぴたりとハマった、という印象を受けました。肩に力が入っていないというか、自然体で素敵な女性です。
「ほどよい田舎暮らし」をベースに、ローカルに根ざしたおしゃれスポットを自分でカスタマイズしながら巡って、朝霧高原エリアで雄大な富士山を眺め、帰り道ではお気に入りの富士宮やきそばを食べ、週4日社員をしつつ、ライフワークであるジャグアアーティストとしても活動するーー。
大自然でもなく、街だけでもなく。けれど「ここにしかない」をたくさん提供してくれる富士宮市での日々は、たしかにとても楽しそうです。その片鱗、まずは富士宮市への短期旅行で、味わってみるのはいかが?
伊佐知美さんがお届けする富士宮市の魅力
「移住女子」の著者でもあり、GENICで連載コラム「伊佐知美の旅するように移住」を執筆する伊佐知美さんが、4回にわたって富士宮市の魅力をレポートします。
第3回:移住者インタビュー「ジャグアアーティストが富士宮の町中移住を選んだ理由」(本記事)
観光・ワーケーション・移住など富士宮市情報はこちらから
伊佐知美
これからの暮らしを考える『灯台もと暮らし』創刊編集長。日本一周、世界二周、語学留学しながらの多拠点居住など「旅×仕事」の移動暮らしを経て沖縄・読谷村に移住。移住体験者の声をまとめた『移住女子』の著者でもある。