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堀井ヒロツグ写真展「身体の脱ぎ方」が京都のギャラリーPURPLEで開催。セクシュアリティーと社会的な価値観との軋轢から表現を生み出す。

©Hirotsugu Horii

東京と京都を拠点に活動する写真家 堀井ヒロツグ。京都のギャラリー PURPLEにて、2024年6月14日(金)~6月30日(日)に、写真展「身体の脱ぎ方 The way a body tired of meaning dances」を開催。
同氏は、セクシュアリティーと社会的な価値観との軋轢から表現を生み出してきました。写真を糸口に、制度や付加された記号的な身体像からの脱出を図る表現が、親密な他者との接触・非接触を介して無垢な身体性を浮かび上がらせます。本展では写真作品の展示に加え、近年、同氏が取り組んできた映像インスタレーションも展開されます。
6月28日(金)には写真史家の戸田昌子を招いてのトークイベントも実施予定。

  • 開催期間:2024.6.14 ~ 2024.6.30

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目次

写真家 堀井ヒロツグ プロフィール

堀井ヒロツグ

写真家 2008年早稲田大学芸術学校空間映像科写真専攻卒業。直近の主な展覧会に「都美セレクション2023」東京都美術館(2023)。2013年に東川国際写真祭ポートフォリオオーディションでグランプリ、2021年にIMA nextでショートリスト(J・ポール・ゲティ美術館キュレーター:アマンダ・マドックス選 )を受賞。

親密な他者との接触・非接触を介して無垢な身体性を浮かび上がらせる

《目を瞑って水の中で手を繋ぐ》2020 ©Hirotsugu Horii

夜にならないと見えない言葉がある。それは、微弱な明るさのペンで書かれたような言葉だ。カーテンに滲み出した影がすっかりと部屋をひたす頃になって、ようやくその明るさに気づけるような、曖昧に光る未成の言葉。それは脆弱そうに見えて、ただ昼とは異なる力の次元に属している̶̶
かつて、友達でも恋人でもない、特別なリレーションシップが人生に一度だけ存在した。互いのセクシュアリティーの違いを出発点にして、既存の制度の外側に居心地を探そうとした数年間があった。その跡地には、今もなお、弱さの光が憩っている。そんな話をしたい。
出会った頃の私たちは、いつもなぜか少しだけ疲れていた。部屋に帰るなり、身に纏っていた衣服や靴下を脱いでいくと、ほんの少しだけ軽くなる。回復することは、この現実の重力の外側を思い出すことに似ている。目の前に見える世界の在り方は、ほんの僅かでしかないとわかっていること。
身体という場所は、私を修飾するあらゆる記号や、政治が決定する関係性やジェンダーのように、遠くて抗いにくい視線によって用意された役割をなぞって生きてしまう。そしてそこに潜む疲れとは、「そうでないこと」を回避し続けることで生じる疲れを含んでいる。ひとつの身体に現れる多様な本心や、未だ名付けられていない価値を見逃し続けることの予感とともに。
意味のフレームの外側から訪れる意味を結ばない光に、私たちはたびたび感応しようとしてきた。本当は光はどこにでも満ちているのに、単一な昼の言葉ばかりを生きていると、それは容易に見えなくなってしまう。最後まで名前を与えることのできなかった関係の跡地に残っているのは、そんな痕跡の一部だ。
私たちが写真や映像を「遅い鏡」として自分たちのイメージを覗き込んできた行為は、決して脱ぐことのできない身体で、その光に手を重ねてみようとする、祈りにも近い遊びだったように思う。

堀井ヒロツグ

©Hirotsugu Horii

堀井ヒロツグ×写真史家 戸田昌子 トークイベント情報(要予約)

《ミッドナイト・コール》2023 ©Hirotsugu Horii

あらゆる時間とあらゆる霧をひとつにこりかためたような声を

「この水を超えて、彼らの船に警告する声が必要だ。わたしはそういう声を作ろう。あらゆる時間とあらゆる霧をひとつにこりかためたような声をつくろう。」

以前、レイ・ブラッドベリの小説『霧笛』の一節を、戸田さんが教えてくれたことがあった。身体が超えられない距離があるとき、声だけが唯一、線を超えていくことができる。そんなイメージを持ちながら、時々、戸田さんの軽やかな声の響きを反芻する。

「声」という経験には、どこか侵入的な接触の感覚が伴っている。受話器(と呼ぶのは少し時代遅れだが)が直接耳に触れる電話越しなら尚更だ。そこでは会話が終わった後にも、しばらくの間、声の霧は残響する。そしてそれはこちらの思う通りに留まったり立ち去ったりはしない。
だからこそ「いい声」や「聞けない声」を、皮膚は聞き分けてきたように感じる。

一つの声の成り立ちを振り返ると、例えば地域性やジェンダー(社会的・文化的な性)が切り離せないように、そこには個人を超えた集合的な要素が混在している。そしてまた、発話しようとする身体の中に、個人的な「言えなさ」や「日常の中には現れない何か」が意図を超えて紛れ込んでしまうことがある。いくつもの忘れられた時間や場所が、私の声を通して今も生き続けているのかもしれない。

声はときに叫びにも歌にもなり、宛先を超えていく力を持つ。その一方で、言葉ばかりが氾濫するこの社会では、強さの文体を持たない声の「音」は常に取りこぼされているように見える。沈黙を守る声や、はっきりと意味を結ばない声もまた、私の中にある名付けようのない心を照らしている。

無形なはずの「声」が作ってきた道を、戸田さんの声を灯りにしてさまよい歩いてみたいと思う。

堀井ヒロツグ

開催日時:6月28日(金)19:00~20:00
会場:PURPLE
料金:1,000円(要予約)
定員:30名

予約はこちらから(PURPLEサイトへ)

戸田昌子

©Frederic Froumen

写真史家 1975生まれ。東京大学大学院博士課程満期退学。
共著に『岡村昭彦の写真 生きること死ぬことのすべて』(東京都写真美術館編、美術出版社、2014年)、『Japanese Photography Magazines 1880s-1980s』(Goliga、2022年)、『日本写真史写真雑誌 1874-1985』(平凡社)ほか多数。監修書に『いま、我々はどんな時代に生きているのか 岡村昭彦の言葉と写真』(赤々舎、2020年)、『Hisae Imai』(赤々舎、2022年)など。東京綜合写真専門学校および武蔵野美術大学非常勤講師。

Instagram

写真家 堀井ヒロツグ 個展「身体の脱ぎ方 The way a body tired of meaning dances」情報

開催日時

2024年6月14日(金)~6月30日(日)
水~金 13:00~20:00
土、日、祝 11:00~19:00
休廊:月、火

入場料

無料

会場

PURPLE
〒604-8261 京都市中京区式阿弥町122-1 3階

Google Map

行き方・アクセス

<電車>京都市営地下鉄烏丸線「烏丸御池駅」出口4-1から徒歩で約7分
京都市営地下鉄東西線「二条城前駅」出口2から徒歩で約4分
京都市営バス9・12・15・50・67・101系統「堀川御池」から徒歩で約3分

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