東京から一番近い棚田「大山千枚田」
千葉県鴨川市は、千葉市からは約50km、東京都心からは約80kmの距離にあります。太平洋(外房)に面し、年間を通して温暖な気候であり、「長狭(ながさ)米」 など知名度が高く品質の優れた農産物が生産されています。
そんな鴨川市街から西へ、狭く長い長狭平野のある愛宕山のふもとに位置するのが「大山千枚田」。
都心から車で約2時間弱で行けるため、“東京から一番近い棚田”として有名です。
3.2haに大小様々な375枚の棚田が階段状に並び、まさに日本の原風景ともいえる、素晴らしい田園風景が広がっています。
稲作の機械化と農業従事者の高齢化のため、急速に姿を消しつつある棚田ですが、この大山千枚田は、「NPO法人大山千枚田保存会」による保全活動が行われていて、都市と農村の文化交流を通して新しい農村のスタイルを実践しています。また秋〜冬にかけては、LEDライトによるライトアップイベントが開催されていたりなど、観光地としても人気です。
「日本の棚田百選」に選出された、日本で唯一の天水田
大山千枚田は、1999年に「日本の棚田百選」に選定されています。
棚田とは、山間部など傾斜面に階段状に作られた水田のこと。棚田は美味しいお米を作り、保水機能があるなどのさまざまな利点がありますが、その一方で耕作効率の悪さが指摘されることもあり、後継者がいないところも多いのです。農林水産省は、棚田の保全や農業・農村に対する理解を深めるために優れた棚田に「日本の棚田百選」の認定を実施。千葉県で「日本の棚田百選」に認定されているのは大山千枚田のみで、関東地方では大山千枚田を入れて3つしかありません。
2002年には千葉県指定名勝となり、さらには2022年2月には「つなぐ棚田遺産」にも選定されています。
また、大山千枚田はため池や用水路等の水利施設がなく、日本で唯一雨水のみで耕作を行っている天水田からなる棚田です。動植物も貴重なものが多く生息し、洪水などの災害防止にも役立っています。
オーナー制度によって守られている棚田
大山千枚田保存会は、全国に先駆けて「棚田オーナー制度」を導入し、都市との交流を通した豊かで潤いのある地域社会づくりに向けた幅広い活動を行っています。
棚田オーナーは、ひと区画の棚田を借り受け、自ら田植え、草刈り、脱穀など7回程度の作業を実施。収穫したお米はオーナーに配分されます。すべて手作業ですが、地元の農家がこまかに指導をしてくれるので、全くの初心者でも安心です。「棚田を守りたい」という大山千枚田保存会の思いと、「自分で米作りをしてみたい、もっと自然と触れ合いたい」という都会に住む人々のニーズがマッチし、オーナーは年々増加。
また、「酒づくりオーナー制度」も導入していて、オーナーになると稲作体験や酒米づくりの各作業に参加することができます。
オーナーになっていない人でも参加できる、田植えや農業体験をはじめとした様々な体験プログラムや、自然観察会なども開催されています。各種情報は大山千枚田保存会の公式HPに載っているので、気になる人は検索してみて。
ライトアップイベントで幻想的な千枚田夜景を
例年秋〜冬にかけての約2ヶ月半の間は、夕方〜夜に大山千枚田のライトアップイベント「棚田のあかり」が開催されています。15分ごとに橙・青・緑・紫と4色に変化する約1万本のLEDライトで彩られた、幻想的な棚田の雰囲気が楽しめ、鴨川の秋〜冬の風物詩ともなっています。
棚田の輪郭に沿って配置された、LEDライトによる光のラインが視界いっぱいに広がり、まるで異世界へ足を踏み入れたような感覚に陥ります。
また、例年10月下旬には1年の収穫を感謝する「棚田の夜祭り」が開催され、LEDライトに加え、松明(たいまつ)約3,000本が灯されます。ステージイベントなども催され、エンディング花火も打ち上がります。
季節ごとに異なる美しい風景
大山千枚田は、秋〜冬のライトアップイベントだけでなく、一年を通して四季折々の美しい景観が楽しめることでも評判です。
春は、田んぼに張られた水に風景が写り込み、美しいリフレクションが見られます。特に日の出の時間は、朝焼けが水面に映り、妖艶な姿を見ることができます。
4月には大山千枚田に咲く桜を楽しむことができ、5月には田植えが行われます。
初夏〜夏にかけては稲がぐんぐん成長し、鮮やかな新緑が一面に広がります。
秋が訪れると、彼岸花とのコラボレーションも。
2010年には天皇陛下が大山千枚田を訪れ、この風景に感動し、「刈り終へし棚田に稲葉青く茂りあぜのなだりに彼岸花咲く」という歌を詠みました。その短歌が記された御製碑(ぎょせいひ)も、大山千枚田に建てられています。
大山千枚田(おおやませんまいだ)/千葉<日本>
大山千枚田 基本データ
<住所>千葉県鴨川市平塚540
<TEL>04-7099-9050(NPO法人 大山千枚田保存会)
<駐車場>あり
入場料
無料
行き方・アクセス
<車>館山自動車道「君津IC」から約40分/館山自動車道「鋸南保田IC」から約30分
<電車・バス>JR東日本「安房鴨川駅」から路線バス(長狭線・金谷線)で約15分「大山千枚田入口」下車後、案内板に沿って徒歩で約20分
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