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移住先での友だち作りと地域コミュニティ/伊佐知美の「旅するように移住」Vol.13

様々な移住者にインタビューした『移住女子』の著者であり、自身も現在、沖縄・読谷村に移住中の伊佐知美が送る連載コラム。移住に向いてる人、向いてない人、お金や仕事のことなど、気になる話を15回にわたってお届けします。
「"いま"この街で暮らしている意味って、なんだろう?」そんな疑問を持っている方の背中をポンッと押す、“最新の移住”コラム。
第12回は、移住後の悩みについてお話します。

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連載コラム:伊佐知美の「旅するように移住」

目次ページはこちらです。

移住先での友だち作りと地域コミュニティ/伊佐知美の「旅するように移住」Vol.13

移住したら、ご近所付き合いって必須なの? 友だちってどうやって増やしたらいい?など、移住前後に多くの人がぶつかる、人間関係にまつわる悩み。

もしそんな悩みの種を抱えている人がこの記事を読んでくれているとしたら、私は「大丈夫、その悩みはみんなが抱える、いわゆる『移住あるある』なので、あなただけのことじゃないよ!ひとりで悩みすぎないで!」と伝えたい。

この記事では、もはやメジャーともいえる移住先での人間関係の悩みの中から、代表的なものを2つ、Q&A方式でご紹介します。

移住先には、ご近所付き合いだったり、地域コミュニティみたいなものがやっぱりあるの? それは必須?

答えは、「YESでもあるしNOでもある」。
理由は、地域の人付き合いの濃度は、本当に地域による……つまり、どこに移住するかによって異なるからだ。同じ市内・町内・村内に移住したとしても、区域や集落が違えば状況は大きく変わってくるので、一概にはいえないのが正直なところ。

取材の肌感としては、地域ならではの付き合い(たとえば集落の行事や祭り、消防団への参加、清掃当番担当や、根強いおすそ分け文化など)があると話す人は、人口が数十人から数百人単位の「誰がその地域に住んでいるか把握できる=住人の顔と名前が一致するエリア」への移住者に多いなぁと感じる。

たとえば、私は住民票上は「村民」だけれど、村の人口は4万人以上で、小さなショッピングモールや全国チェーンのコーヒー店があったりと、それなりの町機能がある場所なので、村暮らしとはいえ匿名性が担保されている部分もあり、印象としては東京の頃の人付き合いとさほど変わらない。

もちろん、生活道路や、地元の人が通うカフェや商店の数が限られているので、結果的に近所に顔なじみができやすく、会ったら挨拶を交わしたり井戸端会議的にちょっと話したり、不在時は大家さんが好意で宅配便を受け取ってくれたり、時折ゴーヤやバナナなどの差し入れをいただいたり……ということはある。けれど、地域コミュニティが強固で行事参加が必須ということはなく、ただひたすらに心地よい人間関係がある、という感じなのだ。

人間関係の濃密度合いは、当然だけれども、何がいい・悪いではなく、地域の特性の話なので、自分は、どんな環境で暮らしたいのか?を考えてみて、それに合う場所を選んで移住するのが一番いいと私は思う。

ただ、こればっかりは移住前に正確な温度感を知ることが難しく、事前リサーチといっても限度があるけれど……できることとしては、先輩移住者に質問したり、家探しの際に大家さんや不動産屋さんに聞いたり、だと思うので、気になる人は事前にリサーチしてみてね。

移住した人は、どうやって友だちを増やしているの?

さてさて、2つ目は友だち作りについて。これは本当に、移住実践者の身としても、ものすごく聞かれてきた悩みです。もしかしたら、本気で移住したいと思っている人からの質問の中では、トップかも……。

移住実践者の先輩方いわく、解決方法は基本的には1つ。「勇気がいるかもしれないけれど、家からできるだけ出て、知り合いを作るためのアクションを自分から起こすに尽きる」そう。なんたるマッチョイズム。

具体的な行動例は、地域のカフェやホテルが主催するオープンなイベントを探して参加してみる、常連になれそうな店を探してオーナーさんと仲良くなる、習い事を始めて先生や生徒の方と知り合いになる、移住者が移住後に開業したお店を探して相談に乗ってもらう、など。

中には、「この1ヶ月間は知り合いを増やす月間」と決めて、その期間はなるべくイベントごとに顔を出す、飲み会やお茶など人に誘ってもらった場合は絶対に断らない!などマイルールを設けて行動して友だち作りを頑張った、という人もいた。
あとは、SNSで移住について発信すると、移住先にすでに知り合いがいる友だちがコメントをくれて、その人につないでもらって輪を広げたよ、という話もよく聞くので有効そうだ。

実際に、私も上記に挙げた例を、すべておこなって友だちを増やしていった。移住先の友だち作りは必須ではないけれど、何かあった時の心強さにもつながると思うので、理想の暮らしに近づくために、みんな一緒に頑張ろうね。

おまけ:すごく印象的だった取材の話

最後に、取材を通じて「あぁ、やっぱり移住先でのコミュニティや、人間関係の豊富さって大切なんだな」と感じた話を。

その人は都会暮らしをしていたけれど、サーフィンが大好きすぎて、「サーフィン三昧の日々が送れたら自分の人生は最高だな」と感じて、退職を決めた後、サーフィンスポットのすぐ近くの人が少ない大自然エリアへの移住を決行した。

移住後、最初の数ヶ月間はとっても楽しく過ごしていたけれど、時間が経つに連れて、そのエリアで関わる人が限定的なことに気が付き、いつも同じ人と会話している状況に物足りなさを感じ始めたそう。

移住前は、サーフィンが楽しめさえすれば自分は幸せなのだろうと想像していたけれど、複数のコミュニティに属することや、偶然の出会いが楽しめる環境にいることの重要性を感じた結果、もう少し都会寄りの場所に移住し直したということだった。

サーフィン重視の大自然エリアへの移住ということで、ちょっぴり極端な例ではあるけれど、移住先の自然環境がベストだとしても、人間関係やコミュニティが十分でないと、人間って寂しくなっちゃう生き物なのかもしれないな、と感じさせられたエピソード。

その気持ちは、沖縄県内でも田舎エリアの、海と空とサトウキビ、灯台と岬、みたいな場所を選んで暮らしている私からしても、すごく理解ができるもの。やっぱり私も、一週間に一度は那覇に通って、誰かと会って話したり、新しい出会いや発見を求めたりしているもんなぁ。

なんだかんだ、たくさん書いてしまったけれど、人の悩みの大部分は人間関係だといわれたりもするし、移住先でのコミュニティや友だち作りについての悩みって、尽きないですよね。

人との距離感・接し方は人それぞれだと思うから、正解があるものではないけれど、移住関連の人付き合いで悩みを抱える人にとって、何かヒントがある記事でありますように。心地よく過ごせる環境に出会えることを願っています!

伊佐知美

これからの暮らしを考える『灯台もと暮らし』創刊編集長。日本一周、世界二周、語学留学しながらの多拠点居住など「旅×仕事」の移動暮らしを経て沖縄・読谷村に移住。移住体験者の声をまとめた『移住女子』の著者でもある。

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