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2025年度の「ライカ・ピクチャー・オブ・ザ・イヤー」をアメリカの写真家 ジョエル・マイロウィッツが受賞。世界27のライカギャラリーにて限定販売

今年度の「ライカ・ピクチャー・オブ・ザ・イヤー」を、アメリカの写真家 ジョエル・マイロウィッツが受賞。1960年代から現在まで、アメリカを代表する写真家の一人として活躍するジョエル・マイロウィッツ。同氏のストリートフォトグラフィーは、独自のスタイルを持ち、とりわけ「色彩」は欠かせない表現要素となっています。2025年度「ライカ・ピクチャー・オブ・ザ・イヤー」に選出されたこの一枚は、初期作品のひとつにあたります。2025年12月より、世界各地のライカギャラリーにて限定版のプリントとして販売されます。

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目次

プロフィール

ジョエル・マイロウィッツ(Joel Meyerowitz)

1938年ニューヨーク生まれ。全米芸術基金(NEA)および全米人文科学基金(NEH)の助成を受ける写真家。2001年の同時多発テロ後、唯一グラウンド・ゼロへの無制限の立ち入りを許可された写真家として記録を残し、その作品は2002年のヴェネツィア・ビエンナーレ建築展においてアメリカ合衆国代表として発表された。作品は、MoMA、メトロポリタン美術館、テート・モダンをはじめ、世界各地の主要美術館に収蔵されている。現在はロンドンとニューヨークを拠点に活動。

® Joel Meyerowitz

ライカ・ピクチャー・オブ・ザ・イヤーとは

2021年より、「ライカ・ホール・オブ・フェイム・アワード」を受賞したライカフォトグラファーを対象に授与されているのが「ライカ・ピクチャー・オブ・ザ・イヤー」です。偉大さの一端をすべてのライカ愛好家と共有するという目的でも、「ライカ・ピクチャー・オブ・ザ・イヤー」を毎年選出しており、選出作品は、世界27か所のライカギャラリーで限定販売されます。コレクターやライカ愛好家にとっては、限定版のプリントを通してライカの偉大な写真家たちを讃える唯一無二の作品コレクションを手にする絶好の機会となります。ラルフ・ギブソン、トーマス・ヘプカー、エリオット・アーウィット、ヘアリンデ・ケルブルに続き、2016年から「ライカ・ホール・オブ・フェイム」に殿堂入りを果たしているジョエル・マイロウィッツの「ライカ・ピクチャー・オブ・ザ・イヤー」がこの豪華なグループに加わります。

2025年度 受賞作品

「Puerto Rican Day Parade, Manhattan, New York City 1963」

私はパレードを、自分の内気さを克服するきっかけにしました。人々が通りを練り歩くパレードに目を奪われている間、私はまるでレーダーに映らないほど低く飛ぶ飛行機のように、そっとその視線をすり抜けることができたのです。

その瞬間が放つエネルギーこそが、何よりも大切でした。

── ジョエル・マイロウィッツ

Leica Picture of the Year 2025 © Joel Meyerowitz

「ライカ・ピクチャー・オブ・ザ・イヤー」を受賞したこの作品は「プエルトリカン・デイ・パレード」の傍らで誕生しました。このパレードは今日でもニューヨーク市のパレードプログラムにおいて欠かせない存在となっています。1959年以来、このパレードはプエルトリコの文化と歴史、そしてとりわけアメリカで暮らす数百万人のプエルトリコ系住民に対する誇りと尊重の象徴となっています。毎年6月の第2日曜日には、パレードがマンハッタンを行進し、大勢の見物客で賑わいます。この写真では、5番街にある店の入り口で出会った4人の女性が、メイクを完璧に仕上げています。パレードの熱気と喧騒の中、マイロウィッツは人々の視線からすっかり外れ、その場の数々の印象へ瞬時に反応することができました。彼の目を捉えたのは、彼女たちの洋服の色や髪型、靴だったのでしょうか。マイロウィッツにとって、路上で写真を撮ることはいわば「見ること」を学ぶ場となりました。なぜなら、彼自身が語るように「ストリートで私が最初に学んだことのひとつは、適切な瞬間が訪れたら、それを正確に捉える必要があるということだった」からです。そのため、4人の女性たちの写真は知覚や即興性について多くを物語り、今日では時代を写す資料としても読み取ることができます。

── 2025年度ライカ・ピクチャー・オブ・ザ・イヤー プレスリリースより

過去の受賞作品

2024年度 ヘアリンデ・ケルブル 「Metamorphoses」

ヘアリンデ・ケルブル(Herlinde Koelbl)

1939年10月31日、ドイツのリンダウ生まれ。最初に学んだのはファッションで、1970年代半ばに表現のためのクリエイティブなメディアとして写真に出会う。その後、雑誌を中心に写真家として活動をスタートし、その傍らで自身の長期プロジェクトにおいて非常に多くの作品を出版。その作品の多くは写真だけでなくインタビューも添える構成で、ドキュメンタリー映画として発信したプロジェクトもある。『ツァイトマガジン』誌では、感受性にあふれ、時に哲学的なケルブルのインタビューが定期的に掲載された。作品制作で愛用したカメラは、35mmフォーマットでは主にライカのカメラ、ミドルフォーマットではハッセルブラッド社のカメラ。これまでに写真集を20冊以上出版。受賞歴に、ライカ・メダル・オブ・エクセレンス(1987年)やドイツ写真協会のドクター・エーリッヒ・ザロモン賞(2001年)などのほか、ドイツ連邦共和国功労勲章(2009年)やバイエルン功労勲章(2013年)。現在は、ミュンヘン近郊のノイリートに生活と活動の拠点を置いている。

Portrait Herlinde Koelbl
© Johannes Rodach© Herlinde Koelbl/Leica Hall of Fame Award 2024 Leica Gallery Wetzlar 2024

Leica Picture of the Year 2024 © Herlinde Koelbl

長年にわたってさまざまなプロジェクトを手がけてきましたが、人物がまったく登場しないのはこれが初めてです。しかし、どのプロジェクトでも主要なテーマは「変化、儚さ」であり、一貫して変わっていません

これは、いわばビジュアルで見る考古学。私たちが当然だと思い込んでいる像や概念と部分的に重なり合うだけなく、相反することすらあるものです。

過去と現在は互いに、一方から他方へと流れ込んでいます。そして、それらの再現が未来なのです

── ヘアリンデ・ケルブル

「儚いことの美しさ」を印象的かつカラフルに表現したシリーズ「Metamorphoses」の中の作品。植物のフォルム、色合い、質感がクローズアップで描き出されており、フレームの中に神秘的で不思議で抽象的な世界が広がりを見せています。そこに記録されているのは枯れゆく植物の姿ですが緻密な構図によって新たなレベルの現実が表出し、認識がもたらされます。衰えゆく過程で見出された美しさ――どんなものも同じ状態であり続けることはできないのです。

2023年度 エリオット・アーウィット 「Bulldogs」

エリオット・アーウィット(Elliott Erwitt)

1928年にパリでロシア人の両親のもとに生まれる。1951年、兵役に徴兵され、ドイツとフランスの陸軍信号隊の部隊で勤務しながら、さまざまな写真撮影の任務を引き受ける。1953年 Magnum Photos に入社し、Collier's、Look、LIFE、Holiday などの雑誌の黄金期にフリーランスの写真家として勤務。以降映画に転向し1970年代にはいくつかドキュメンタリーを制作、1980年代にはHBO向けに18本のコメディ映画を制作。

Elliott Erwitt, New York City, USA 1999 © Elliott Erwitt_MAGNUM PHOTOS

New York City, USA 2000 © Elliott Erwitt_MAGNUM PHOTOS

マンハッタンのアッパーウェストサイドの目と鼻の先にある自分のスタジオから出て、友人の久保田博二と散歩をしていた時、私はカメラは持っていませんでした。でもこの場面を目撃して、カメラを貸してくれるよう彼に頼みました。彼が親切にも自分のライカを貸してくれたので、フィルムを使い切るまで撮影したのです。

── エリオット・アーウィット

「Bulldogs」は犬をモチーフにしたアーウィットのシグネチャー的な作品の一つ。犬と飼い主の完璧な共生関係をアーウィットが偶然発見したのは、近所を散歩している時でした。犬と飼い主はまるでシュルレアリスムアートのような構図でしたが、写真左側にいる二匹目のブルドッグも偶然同じポーズを取ったことでこの写真のどこかユーモラスな魅力がさらに際立っています。アーウィットは辛抱強く取り組むことで、新たな代表作となる写真を撮影することができたのです。彼がそうする理由は「たくさん写真を撮ることが優れた一枚につながるから」だと言います。

2022年度 トーマス・ヘプカー 「Advertisement and passengers on bus」

トーマス・ヘプカー(Thomas Hoepker)

1936年、ドイツのミュンヘンに生まれ。14歳の誕生日に祖父から古いプレートカメラをプレゼントされ、それがきっかけで写真に挑戦するように。1960年、学業を終える前に『ミュンヒナー・イルストリエテ』誌に採用。その後、1963年まで『クリスタル』誌に勤務し、1964年には『シュテルン』誌に入社。同年、マグナム・フォトに招待される。1989年には正会員となり、2003年から2006年までマグナムの会長を務める。2024年7月10日、チリのサンティアゴで亡くなる。享年88歳。

LPotY2022_Hoepker signing_© Bodo Philipp

Leica Picture of the Year 2022_© Thomas Hoepker, Magnum Photos_New York, USA, 1963

ストリート写真を撮影している時に、幸運に恵まれることがあります。1963年、私はライカのカメラを携えてニューヨークの街を歩いていました。この時は1台のバスがそばを通り過ぎようとして、バスの側面にあった胃薬の奇妙な広告が目に映ったのです。それを1枚撮影したのですが、その写真のことはそれきり忘れていました。数週間後、コンタクトプリントを見返していてその写真に気づきました。バスの中には男性と女性の乗客がいて、その2人の表情が消化不良に悩まされているように見えました。私はどこか奇妙でユニークな写真が大好きなのです。

── トーマス・ヘプカー

ヘプカーは当時、ドイツの雑誌「クリスタル」の写真家として活動しており、アメリカを好奇と批判の目で探るという撮影依頼を受けて、数カ月にわたってロードトリップを行っていました。撮影場所は交通量が多く騒がしいニューヨークの街中、被写体は公共バスで、バスの中から窓越しに外を見る2人の乗客の眼差しとバスの側面に掲出された胃薬の広告の人物が皮肉的に表現されたスナップショットです。

文章はすべて、ライカ・ピクチャー・オブ・ザ・イヤー プレスリリースより引用

2025年度 ライカ・ピクチャー・オブ・ザ・イヤー 受賞作品情報

Leica Picture of the Year 2025 © Joel Meyerowitz

写真家:ジョエル・マイロウィッツ
タイトル:Puerto Rican Day Parade, Manhattan, New York City 1963
プリント用紙:サテンキャンソン インフィニティ260g/m²
プリント:Prolab Fotofachlabor(ドイツ)がプリント
全体サイズ:40 × 50cm [15.75 × 19.69インチ]、写真サイズ:25.4 × 38.1cm [10 × 15インチ]
サインとエディションナンバー入り
付属品:作品証明書付き、エディションナンバー入り、特製フォルダー入り
販売数:81点
世界各地のライカギャラリーでの限定販売
価格:275,000円(税込。本体250,000円)

※世界各地のライカギャラリーでの限定販売
※国内ではライカギャラリー東京、ライカギャラリー京都、ライカギャラリー表参道にて2025年12月より順次販売開始

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