伊佐知美
Contents Atelier「Somewhere&Here」主宰。
編集者、ライター、フォトグラファー。世界一周旅行に二度出発、海外70カ国を訪問。
その後、日本に帰国し47都道府県を巡る。現在は東京をベースに活動。最近は「世界中で見た色彩が詰まっている」と感じる花と植物に夢中。
好きな街は「東京のはしっこ」が見える二子玉川。
#01_MY ROOM 「好き」だけに囲まれた空間
東京の部屋のいいところは、好きなだけ紙の本をしまっておけること。本棚は、世田谷の「ムカイ林檎店」のリンゴ箱を使って。原稿に行き詰まったときは、ギターを練習するのが最近の日課。
季節と時間の移ろいを感じられる空間で
世界中旅することを、本当に愛している、と思う。
でも、いつだって大きな移動は
「時間」や「季節」を飛び越えてしまうから。
東京にいるときは、せめて季節や時間、太陽や月や星がきちんとめぐり、変化することを
感じながら過ごしたい。
たとえば、植物、花、アーバンアグリカルチャーの種を蒔くみたいに、小さな自分だけの箱庭を育てること。
ハレとケの「ケ」を愛しむ。
日常を刻むために心地よいもの、ぜんぶ。
ローズマリーやセージ、タイムやミント、レモンヴァーベナなど、数種類のハーブを育てて、気が向いたときに収穫。体調や気分に合わせてフレッシュハーブティーを作るのにハマっている。これは旅の間は絶対にできない贅沢。
旬の生花を飾った後、お気に入りの花々はじっくりと時間をかけてドライフラワーに。つぼみから咲き誇りの全盛、セミドライから完全にドライになる様子は、「大切ないのちのはじまりと終わり」を見ているみたいで「今」を大事にしたいと思うきっかけに。
コーヒーのことはあまり詳しくないけれど、豆を挽いているときの香りが好きなので、知ったかぶりでコーヒーミルを使っている。写真には写っていないけれど、ヴァン・ナチュールワインのストックがたくさん持てるのも、家のいいところ。
#02_LOVED ITEM ここにしかない離したくないもの
電子書籍のおかげで、旅中の読書は随分と楽になった。けれど、やっぱり「情報としての文章」ではなく、「質量をともなった物質としての本」に囲まれて過ごす日々が好き。谷川俊太郎さんの文章と、川島小鳥さんの写真で沖縄の時間を閉じ込めた『おやすみ神たち』と、『アルケミスト 夢を旅した少年』は、絶対に手放したくない本のひとつ。
「旅をしていない」からこそ近くにいられる
訪れた国は70カ国を超え、抱えきれないほど買ったおみやげは、
いつもこっそりダンボールに詰め込んで、日本に送り続けていた。
届く先が、この部屋。世界中の空気をたっぷり詰め込んで、
けれど「ここでしかできないこと」にあふれた空間。
「重くて持ち歩けないよ」なんて気にしなくていいところが、
旅のオフタイムの醍醐味だと思う。
渋谷の日本茶専門店「GENGEN AN by EN TEA」の茶香炉。緑茶を焚くと、部屋中に心を落ち着かせる香りがじっくりと広がっていく。焚き終えると、きれいな緑色をしていた緑茶が、茶色のほうじ茶に。もちろん飲める。
食べたら「東京に帰ってきたな」って思う。代々木の「ナタ・デ・クリスチアノ」のエッグタルト。
まぁ、ポルトガルのスイーツではあるのだけれど……(笑)。ティータイムは、「世界で一番かわいい焼き物」と惚れ込んで、地球の裏側メキシコからわざわざ持って帰ってきた「セルビン焼き」のマグカップと一緒に。
#03_FAVORITE PLACE また羽ばたくための拠点
まるで異世界への扉のような、中目黒「ex.flower shop & laboratory」の入り口。東京のど真ん中に在るのにもっと遠い場所にいるような、不思議な気持ちになる店。
新たな世界を教えてくれる場所
旅をし尽くして、さぁ次に何の世界に飛び込もう? と思ったとき、心に浮かんだのは
「花屋」という存在だった。世界に求めていた「色彩」が詰まっている、
季節を告げ、想いを運ぶ花たち。その美しさを支える農家や流通、
フローリストの在り方などすべてに改革を、と次々にイノベーションを起こす
「BOTANIC」との出逢いは、私を東京に引き止める大きな理由のひとつ。
「家族へ」「友人へ」「大切なあのひとに」店にいると、さまざまなひとが、それぞれの想いを花に託して、誰かに贈るシチュエーションによく出逢う。旅も花も、「明日生きることが楽しみになる」ものじゃないかな。
「これからの生き方を考える」をテーマに、『灯台もと暮らし』というウェブメディアの編集長を務めていたことがある。「想い」に焦点を当てたそのメディアが、「理想を詰め込んで作った花屋」みたいだな、と思う。
GENIC VOL.55【生きる場所と暮らす場所 Good Home with TOKYO】
Edit:Izumi Hashimoto
GENIC VOL.55
テーマは「TOKYO and ME 表現者が撮る東京」
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