植田正治(うえだ しょうじ) プロフィール
1913年 鳥取県西伯郡境町(現境港市)生まれ。(~2000年)
世界で最も注目された日本人写真家の1人。鳥取県境港市を離れず、山陰の空・地平線・そして砂丘を背景として、被写体をまるでオブジェのように配置した植田正治の演出写真は、写真誕生の地フランスで日本語表記そのままにUeda-cho(植田調)という言葉で広く紹介されている。植田正治の作品はこのような作品ばかりではなく、70年近くに及ぶ作業活動を通して、常に斬新で多彩なイメージを掲示し、アマチュア精神を抱き続けた偉大な写真家の軌跡は、まるで日本の写真史そのもののようでもある。
塩谷定好(しおたに ていこう) プロフィール
1899年 鳥取県東伯郡赤崎村(現琴浦町)生まれ。(~1988年)
芸術写真の分野で国内の草分け的存在として活躍、海外においても評価が高い。大正時代に一世を風靡した単玉レンズのカメラ「ヴェスト・ポケット・コダック」(通称ベス単)を愛用し、「ベス単のフードはずし」と称された軟調描写(ソフトフォーカス)が作品の特徴。生まれ育った故郷を愛し、生涯にわたって山陰地方の自然を撮り続けた。作品は、フランス国立図書館、ハンブルク工芸美術館、サンタフェ美術館、東京都写真美術館、横浜美術館、鳥取県立博物館、島根県立美術館、米子市美術館などに所蔵されている
心あたたまる写真 心に染みる写真
写真をはじめたばかりの若き日の植田正治にとって、写真雑誌の月例題賞で全国1位になるなど目覚しい活躍をする神様のような存在の塩谷定好。山陰の海辺や村々、素朴な人々と子供たちの笑顔、こよなくこの地を愛した2人の作家ならではの作品群は、見る者の心に染みていきます。
上記の写真は、それぞれの娘を撮影したものです。日本の芸術写真を代表する塩谷定好とモダニスムを代表する植田正治、身近な被写体を愛情込めて映し出す2人の巨匠の作品が、出雲神話の地を写した作品も含め約100点展示されます。
展覧会の見どころ
1.植田正治も塩谷定好も、生涯山陰で暮らし、山陰を舞台に作品を制作。山や海、心あたたかな人々など、見る人にとっても身近な風物が、実に豊かな作品となってその良さを再発見させてくれます。
2.絵のような写真「芸術写真」が一世を風靡した大正末から昭和初期、その代表となる写真家が塩谷定好でした。塩谷に憧れ、写真の道を歩んだ植田正治も、この芸術写真から出発しています。その後、次世代の「モダン・フォトグラフィ」へと没頭していくこととなるのです。
同じモチーフを撮影しても、共通しているところと異なるところがあり、比較して楽しむことができます。
3.2人の写真家が、出雲神話の地を撮影した写真を展観します。植田正治の《出雲》《松江》は、特別出品作品で、初めての展観となります。
展覧会の構成
第一章 家族の肖像
身近な生活のなかの心情を大切にした2人。日々の暮らしで触れ合う家族や近所の人々、海や山などの自然を、こよなく愛して写真にしました。家族の肖像からは、その愛情が伝わってきます。
2人の属した「日本光画協会」は、この身近な生活感情を重視する作風を特色としていました。両者は後年までも、そうした作品を作り続けています。
第二章 海辺の光景
空と海と砂浜。その広がりは、花曇りの日に写すと、均質な淡いグレーの写真に仕上がります。砂浜は、遠近感を失わせます。遠くの人は小さく見えますが、その距離を感じさせないのです。その砂のマジックを使って、植田正治も塩谷定好も名作を生み出しています。
美しい海辺の続く山陰。その自然の舞台を生かして数々の写真を映し出してきました。
第三章 出雲神話の地
出雲の地には、古代の神話が息づいています。山河に、地名の由来に、農耕生活の風習に、『出雲風土記』に語られた出雲神話の名残が残るこの地を、二人の写真家は映し出しています。とりわけ、植田正治は、出雲をライフワークと考え、くまなく巡っていきました。
今回、特別出品として植田正治の《出雲》《松江》が展示されます。
植田正治生誕110年記念「植田正治と塩谷定好」情報
開催日時
2024年1月18日(木)~4月15日(月)
1・2月10:00~18:30
3・4月10:00~日没後30分
展示室への入場は閉館時刻の30分前まで
休館日:火曜日
入場料
大人 300円
大学生 200円
高校生以下 無料
会場
島根県立美術館 展示室4
〒690-0049 島根県松江市袖師町1-5
行き方・アクセス
<電車>
JR西日本「松江駅」から徒歩で約15分または松江市営バスで6分、バス停「県立美術館前」下車すぐ
一畑電車「松江しんじ湖温泉駅」から観光ループバス「ぐるっと松江レイクライン」で約15分、バス停「県立美術館前」下車すぐ
- 【お問い合わせ先】
- 島根県立美術館
- shimane-art-museum.jp