梅守志歩
ホテルオーナー/1988年生まれ、奈良県出身。大学卒業後3年間大阪での会社勤めを経て、実家である奈良市内の寿司製造会社の仕事に従事。車で通勤圏内の山添村に移住し、昨春、古民家をリノベーションしたホテル「ume, yamazoe」をオープン。
ちょっと不自由なホテルをつくりました
実家に近いIターン移住で、唯一無二のホテルオーナーに
“ちょっと不自由なホテル”というユニークなコンセプトのume, yamazoeを、奈良県山添村に昨春オープンさせた梅守さん。奈良市出身で大阪暮らしを経て、山添村に移住して3年目になる。
「以前は奈良の田舎が嫌いで、東京で働きたい!とばかり考えていました。そんな折に読んだ星野道夫さんの本『旅をする木』に影響を受け、自然との暮らしを意識するように。両親の知り合いがいたことをきっかけに、山添村に移住しました」。
自分と違うものを愛せる感覚を創造する場所をつくりたい
「住む前は“近い田舎”くらいの印象しかなかったのですが、初めて山添村に来たとき、ただ歩いて挨拶しただけで何人もの方から軽自動車のトランクいっぱいになるほど野菜をいただき、人が優しいエリアだと実感。最初は単純に“村に住む”ことを楽しんでいたのですが、観光資源もない田舎が直面するさまざまなものが失われていく厳しい状況を知りました。村の魅力を残すために私ができること、そして訪れる人たちが心優しく穏やかに、いろいろなものが調和して社会が成立していることを感じられる場所を目指してume, yama zoeをつくりました」。
Q.ume,yamazoeのこだわりは?
A.ベッドからご来光が見える
「築100年を超える東向きの家をリノベーション。季節によっては雲海からのご来光が見えます。母屋のコの字型カウンターキッチンでお客様一同がお食事をしたり、サウナという共通体験をしたりすることで、自然発生的なコミュニケーションが生まれる場所であることもこだわりです」。
Q.地域に溶け込むコツは?
A.一軒ずつ挨拶まわり
「村に拠点を移した際、手土産と手書きの自己紹介カードのようなものを持って、観光協会のおじさんに案内してもらいながら近隣の集落を一軒ずつ挨拶しました。特別なことをやったというより、昔からやったほうがいいよね、と言われているけどだんだん割愛されてきたことを普通にやった、という感じです」。
Q.自分にとって、ume,yamazoeとは?
A.創造の場
「重度の精神障害を患う姉と、白血病の妹という心や身体の弱い姉妹がいるのですが、いわゆる社会的弱者と言われる人の置かれた環境や家族の辛さを体験し、人が優しくて足りないものや不十分なもの、自分と違うものを許せたり愛せたりする感覚を創造する場所をつくりたいと思いました。また、地域の経済活動の創造も目標。たとえばお料理は地元の野菜をたくさん“買い”ながら、地域の経済をまわすハブになれるよう意識しています」。
Q.旅と移住の共通点は?
A.自分の世界を拡張すること
「その土地に触れることで、今まで知らなかった生き方や人、暮らし方など、自分の枠を広げてくれるエッセンスに触れることができます。旅先や移住先で気がついたことで、また新たな世界を見て、次の自分のことに目を向けるというような循環材料になっている気がします」。
GENIC VOL.57 【旅するように暮らすデュアルライフ&移住ライフ】
Edit:Satoko Takeda
GENIC VOL.57
テーマは「100人の旅という表現」。
表現者たちのオンリーワンな旅スタイルや、撮欲も満たすひとり旅、旅するように暮らす多拠点生活など、様々な旅する人とその想いに迫ります。