目次
- プロフィール
- 同郷ふたり旅 ─Your Focal Length
- 滋賀在住の別所隆弘が、故郷を離れた古屋呂敏を5つのスポットに案内
- 故郷を離れた呂敏が地元をどんなFOCAL LENGTHで見つめるのかに興味があった by 別所
- 別所さんが普段見ている滋賀の景色を僕も見てみたいと思って by 呂敏
- “同郷ふたり旅”のきっかけ
- 地元に、こんなに美しい景色があったことを知らなかったという驚き
- SPOT1 視点や切り取り方の違いが表れた「メタセコイヤ並木」
- SPOT2 お互いが育った故郷を一望できる「夢見が丘展望台」
- 物理的には同じ場所で育ったにもかかわらず、見ている風景は違う、 というのが面白い by 別所
- 琵琶湖を中心に広がる水辺の景色の美しさ、県外へのアクセスの良さも滋賀の魅力
- SPOT3 愛着ある場を撮るという感覚を共有した「琵琶湖疏水」
- 初めて来た場所なのに安心感があって、気持ちいい。こういう包まれ方をするのが地元なんだなと by 呂敏
- お互いが地元を見る焦点距離“YOUR FOCAL LENGTH”を受け止めながら、自分はどこに魅力を感じるのかを探る、同郷ふたり旅
- SPOT4 互いのFOCAL LENGTHが際立った 「大阪国際(伊丹)空港」
- 急にある瞬間から周りが見えなくなり、 没頭していく姿を見ながら、 俳優・古屋呂敏を感じていた by 別所
- 自分ももっと飛びたいなという思いがつくり出したMY FOCAL LENGTH写真でした by 呂敏
- SPOT5 びわ湖大花火大会
- 地元を撮るなら まず想いの強いところから by 別所
- 旅先としての滋賀の魅力とは
- 写真家にとって大好物な 地理条件が揃っている
- 滋賀には可能性しかないな、 と感じました by 呂敏
- ふたりで地元を旅した感想は?
- GENIC vol.77
- おすすめ記事
プロフィール
別所隆弘
フォトグラファー/文学研究者/ライター 滋賀県出身・在住。関西大学社会学部メディア専攻講師。写真と文学という2つの領域を横断しつつ、「その間」の表現を探究している。著書に『写真で何かを伝えたいすべての人たちへ』(2024年、インプレス)。
愛用カメラ:Nikon Z8、Z5II、ZR
愛用レンズ:NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S、Z 14-24mm f/2.8 S、Z 24-70mm f/2.8 SII
古屋呂敏
俳優/フォトグラファー 1990年、京都生まれ滋賀/ハワイ育ち。2016年より独学でカメラを始める。Nikon Zf、Z8を愛用。父はハワイ島出身の日系アメリカ人、母は日本人。MBS/TBS「恋をするなら二度目が上等」(2024年)などに出演。俳優のみならず、フォトグラファー、映像クリエイターROBIN FURUYAとしても活動。2022年には初の写真展「reflection(リフレクション)」、2023年9月には第2回写真展「LoveWind」、2025年6月、ニコンプラザ東京 THE GALLERY、2025年7月、ニコンプラザ大阪 THE GALLERYにて、写真展「MY FOCAL LENGTH」を開催。写真集に『MY FOCAL LENGTH』(2025年、ミツバチワークス)がある。
同郷ふたり旅 ─Your Focal Length
滋賀在住の別所隆弘が、故郷を離れた古屋呂敏を5つのスポットに案内
故郷を離れた呂敏が地元をどんなFOCAL LENGTHで見つめるのかに興味があった by 別所
別所さんが普段見ている滋賀の景色を僕も見てみたいと思って by 呂敏
“同郷ふたり旅”のきっかけ
別所:CP+のときに、GENICの編集長に僕と地元が一緒のはずだと呂敏を紹介していただいて。どれくらい同郷かというと車で20分の距離だとわかり、滋賀で一緒に撮ろうという話になったよね。
呂敏:その通りです。僕は滋賀の高校を卒業してからあまり帰っていなかったので、地元で写真を撮っていなくて。それで別所さんが普段見ている景色を僕も見てみたいと思ったことが一番のきっかけです。
別所:僕の方も呂敏に見てもらいたいという感覚があって。というのも呂敏は地元を知っているけど知らないはず。高校生の活動範囲なんてせいぜい半径10km程度で、しかも遊びに行くとなると僕ら滋賀県人というのは京都か大阪に行くので。そういう僕も実は36歳でカメラを始めるまで、素敵な場所は全然知らなくて。今回一緒に巡ったところには僕もかつて知らなかったところもあり、呂敏にとっては自分の地元であるにもかかわらず、知らないところなので、そういう場所を見てもらうのも面白いなと思いました
呂敏:本当にものすごく楽しかったです。
地元に、こんなに美しい景色があったことを知らなかったという驚き
別所:朝10時頃に集合して、21時ぐらいまで1日中ぐるぐる回って。
呂敏:今回、僕にとっては全く知らない滋賀でした。だから行く先々で「あ、こんなところがあったんだ」という驚きがあって。灯台下暗しではないですが、こんな近くにこんなに美しい景色があったんだということにびっくりしましたし、目を向けないと美しい景色って見つけられないんだなと改めて思いました。
SPOT1 視点や切り取り方の違いが表れた「メタセコイヤ並木」
滋賀北西部の高島市マキノ町の県道を四季折々に彩るメタセコイヤ並木。「初めて訪れたときは誰もいませんでしたが、今では日本全国秋に紅葉を撮りに行きたいランキングがあったらベスト3に入るくらい有名に」と別所さん。2025年4月にオープンした観光養老牧場の体験メニューで、並木沿いでの乗馬や馬車なども楽しめる。(別所さん撮影の2枚は、過去に撮影されたもの)
別所:メタセコイヤ並木は写真家のウルトラ定番を超えて、普通に観光地になった場所。これを撮りに行ったときは、紅葉の季節に比べると人が少ないほうだったけど、それでもたくさんの観光客がいて。いかに観光地感を出さずに撮るかという、そこはうまく撮ったよね。呂敏の馬車の写真なんて、誰もいない静かな海外みたいじゃない?
呂敏:実際はものすごく人がたくさんいましたね。乗馬している人もいましたし。
別所:普通は並木全体に目を奪われてしまうところが、呂敏は馬車をパッと見て、それを構図化して、写真に収める瞬発力の高さがすごいなと。僕、ここで馬車の写真を撮ったことは一度もなかったんですよ。呂敏はやっぱり人がいる風景にロマンを感じるんだなって思いながら、僕も何枚か撮ってみた。このときは僕のほうがYOUR FOCAL LENGTHになっていたね。
呂敏:それはうれしいですね!
別所:まさにメタセコイヤ並木は焦点距離が一番ものを言う場所。広角で撮ったら、幹はスカスカになっていくけれども広く大きくなっていく。望遠で撮ったら、今度は圧縮効果で間がつめつめになっていって、本来あるべき距離が埋まって密集した並木道に見えていく。呂敏がどんな焦点距離で撮るのかなというのは、純粋に写真家としての興味でした。
呂敏:僕、初めて行く場所って、すごく心躍るんですよ。表現はおかしいですが、好きな人と初めてデートに行くみたいな(笑)。ワクワクドキドキするんですよね。最初は別所さん、どう撮るのかなって見ていましたが、別所さんがいろいろなレンズを貸してくださって…。その後はもう別所さんが見えなくなってMY FOCAL LENGTHに浸りました(笑)。
別所:呂敏は面白いくらい、本当にひとりの世界に入るよね。ある程度まで周りを見ているけど、急にある瞬間から役に入ったかのごとく周りが見えなくなっていくみたいな。対象にグワーと入った呂敏がどうなるかというと、道の端の溝にまで入りました!
呂敏:はい。寝転びそうにもなっていましたね(笑)。いや僕、この場所のことを全く知らなかったんですよ。だから本当に新しい出会い、“初デート”でした。
SPOT2 お互いが育った故郷を一望できる「夢見が丘展望台」
大津市山中町・比叡山ドライブウェイにある、琵琶湖と大津を一望できる展望台。「呂敏と僕の地元が集約されている一枚で、真ん中に写っているのが琵琶湖。本当に巨大で、昔の人が海と間違えたというのがよくわかる。初めてここから全貌を見たときの感動が写真家としての原点。ここからびわ湖大花火も見えます」と別所さん。
物理的には同じ場所で育ったにもかかわらず、見ている風景は違う、 というのが面白い by 別所
別所:夢見が丘展望台に登って初めて写真を撮ったとき、「何、このデカさ!」と感動したという話を呂敏にもしたんだけど、地元をこのサイズ感で見られることって、滋賀県人でさえあまり理解してないよね。呂敏はここからどう地元を見た?
呂敏:実際に足を運んでその景色を目の前にしたら、やっぱり見えているのは一人一人違う景色なんですよね。僕自身が育った滋賀と、別所さんが育った滋賀は違って、そういうバックボーンの違いは写真にも反映されるものなんだろうなと感じました。
別所:呂敏の言う通り、僕らが育ってきた滋賀は違うけれど、物理的には同じ場所。この風景の中に僕が通っていた学校があって、その奥の方には呂敏の地元がうっすら見えて、僕らの子どもの頃や青春時代が凝縮されているけれど、見てきた風景は違う。それはそこに立ってみないと実感できないよね。僕もかつて「地元ってこんなんなんや」と前のめりになって撮りましたが、呂敏は今、その状態なんだなと思うと面白かったね。
呂敏:地元を俯瞰で見てみると、やはり想いが被ってくるなと。別所さんが子供の頃にご家族と花火に行った話をしてくれましたけど、僕自身も小・中学校の頃、違う角度から花火を見ていた。そのときのことを思い出したり、過去の映像が浮かんできたりして。想いがすっと入ってくると、なんだか大人になった気分にもなって、本当に大きな景色なんだけど、どこか小さくも見えるし。東京に出てからこんなにも美しいものから離れてしまっていたんだなという気づきにもなりました。だから、その景色を改めて別所さんに見せていただいたことは、僕の中ですごく温かい時間になりましたね。
別所:展望台から見ると相対距離がわかるんですよ。自分はそこにいた、自分の人生はこの距離の中にあるみたいな感じで。それが地面にいると近すぎて距離感がわからず、自分の居場所を見失いがちで。でも高いところから俯瞰で見ると相関関係みたいなものも見える。同時に僕と呂敏はあの日あのとき、それぞれ違う角度から同じ空を見ていた。それが一枚の写真の中のどこかでかつて起こっていたことだと思うと、ちょっと素敵じゃないですか。
琵琶湖を中心に広がる水辺の景色の美しさ、県外へのアクセスの良さも滋賀の魅力
SPOT3 愛着ある場を撮るという感覚を共有した「琵琶湖疏水」
大津市から京都市へ琵琶湖の湖水を流すために明治時代に作られた約20kmの水路。2025年8月、施設の一部が国宝に指定された。「ここは僕にとってものすごく大事な場所で実はこの緑は全部桜です。満開の光景はすごくきれいで、小学生の頃からこの場所が心の支えに。写真家として風景を撮り始めたもう一つの原点です」と別所さん。
初めて来た場所なのに安心感があって、気持ちいい。こういう包まれ方をするのが地元なんだなと by 呂敏
別所:僕は琵琶湖疏水の横の小学校に通っていたんです。当時、転校生で友達ゼロ。その上、生意気だったのでいじめられて、学校を逃げ出して来るところがこの辺りで。だから僕にとっては因縁と自分の心の救いが同居している場所。そこをきれいに撮りたいなというのが写真家になった動機でもあったので、呂敏に見てもらおうかなと思って。呂敏は基本的には人物写真家じゃないですか。だから今回の旅撮影って、ジャンルさえ呂敏にとっては異国のようだったよね。
呂敏:すごく難しかったです。僕、風景はあまり撮ってこなかったので、それをメインにされている方の横で風景を撮るっていうのは緊張するし、力が入っちゃう。だからむしろ逆にもう、自由に撮ってみました。
別所:そんな感じはしたよ。呂敏にとっては全く未知の場所で脳をフル回転させている雰囲気があって。2人とも結構黙っているんだよね、撮っている間は。
呂敏:そうですね。そこで僕が無言になっていた理由というのは、別所さんがどう感じてここに来ていたんだろうということにすごく興味が湧いていたからで。何を思いながらいつもカメラを向けてきたのか、みたいなことを知りたくなって、それを感じようとしていました。
別所:その感覚は俳優的だよね。誰かの人生を生きる仕事をしている。僕は呂敏が撮った写真にとても興味が湧いた。地元と言いながら、ほとんど地元ではないわけで。滋賀県の人間であるという愛着と、でも初めて来た異国人みたいな目線というのが両方、写真の中にあって。呂敏の写真を見ると、まるで外国人の旅行の写真にも似た感じがあるなと。
呂敏:面白い表現ですね!
別所:この場所をものすごく楽しんでいる人間の目線があるんですよ。
呂敏:別所さんが撮った写真と同じように撮ったら、僕が撮る必要がないから、自分なりのクリエイティブを考えていました。他の方が一度シャッターを切った画角というのは、僕からすると誰かが歩いた道だし、別所さんに対して失礼にあたるかな、と。だから僕としてのあの景色を捉えたいなって。
別所:何を感じながら撮っていたんだろう?
呂敏:初めての場所だけれど、そこに流れる空気や風に間違いなく受け入れてもらっているなと感じていました。立っていると肩の力が抜けるというか、初めてなのに落ち着きがあるというか。目の前に広がる景色に、別所さんの言葉が重なることによって、普段見るなにげない景色よりも愛が持てるみたいな。あの気持ちよさはなんでしょうね。これが地元なんだ、こういう包まれ方するんだ、と感じました。
お互いが地元を見る焦点距離“YOUR FOCAL LENGTH”を受け止めながら、自分はどこに魅力を感じるのかを探る、同郷ふたり旅
SPOT4 互いのFOCAL LENGTHが際立った 「大阪国際(伊丹)空港」
大津市からは高速で52分の大阪国際(伊丹)空港。「大阪までドライブして、伊丹空港へ。僕はひたすらそこで呂敏が飛行機を撮る姿を撮っていました。俳優さんは基本的には別の人物になりきっていながら、その人間性が役に滲み出てくるものですが、少し写真と似ている気がしました」と別所さん。
急にある瞬間から周りが見えなくなり、 没頭していく姿を見ながら、 俳優・古屋呂敏を感じていた by 別所
自分ももっと飛びたいなという思いがつくり出したMY FOCAL LENGTH写真でした by 呂敏
別所:滋賀ではないんだけど、僕がSNSですごくバズった飛行機写真が撮れる場所にも案内したいなと、伊丹空港にも行ったね。
呂敏:空港では別所さんの焦点距離らしい写真を撮らせてもらいつつも、僕自身のMY FOCAL LENGTHの写真もたくさん撮りました。自分ももっと飛びたいという思いもあり、飛行機を掴むような手を入れて…。
別所:MY FOCAL LENGTHとYOUR FOCAL LENGTHをすごく感じたよ。
呂敏:僕は人物を撮るとき、どんどん近くに、もっともっと鮮明にって寄っていっちゃうんですよ。別所さんはあえて引いて、そこに住んでいる人たちの物語を入れ込む、引きの美学というものを改めて感じました。
別所:逆に言うと、呂敏のほうは距離を詰められる勇気を持っているよね。僕はどうしてもいろいろなものを入れたくなるので、結果として引いてしまうんです。一方、呂敏は人の本質を捉えようとするから、風景でも僕より一歩踏み込むんですよ。これが呂敏の焦点距離、FOCAL LENGTHなんだな、というのは撮りながら思っていたことです。
SPOT5 びわ湖大花火大会
琵琶湖で行われる花火大会で最大規模なのが、例年8月8日に大津市で開かれる「びわ湖大花火大会」。滋賀に住んでいた頃、「サッカーボールばかり追いかけていた」という呂敏さんの18歳までの記憶の中では、滋賀を象徴する眺めだそう。「琵琶湖の横幅全部を使って花火が上がるので、ものすごくワイドですよ」と別所さん。2025年は別所さんの案内で呂敏さんも初めて撮影したそう。
地元を撮るなら まず想いの強いところから by 別所
旅先としての滋賀の魅力とは
呂敏:滋賀県って何もないとか、琵琶湖だけだとか、よく言われるじゃないですか。
別所:だから僕はもう水しかないって言うんですよ。
呂敏:ダメじゃないですか(笑)。僕、逆にそれってすごく魅力だと思っていて。何もないと思っているところに何かあったときの感動に勝るものはないと思っています。予期しないところ、自分が想像してないところに何かを見つけたときって、何よりも心が動くと思うんです。その何かが滋賀県には絶対にたくさんあると、僕は今回別所さんに連れていっていただいて、改めて感じました。
別所:たしかに発見されてない場所があるっていうのは一つ、滋賀の魅力だよね。もう一つ、水がいい場所というのはご飯が美味しくなるんですよ。琵琶湖のおかげで美味しいものが各地にあります。あとは琵琶湖を中心に北東、北西、南東、南西と4分割されていて、ちなみに僕と呂敏は京都に近い南西の民で、京都の文化と自分のアイデンティティが混じり合った文化圏。北東には長浜という大きな町があって、そこは北陸文化圏に近い、そういう文化の違いも面白さです。
呂敏:そうですね。旅の醍醐味って、いろいろな人が美しいと思うところに行くこともそうですけど、自分だけの美しいものを見つけることでもあって。そういう魅力が滋賀県にはたくさんあるということを今回、すごく伝えたいなと思いました。
別所:いいですねー。呂敏には俳優として写真家として、滋賀県に人をいっぱい呼んでほしいな。
呂敏:来てほしいですね。盛り上げたいです。
写真家にとって大好物な 地理条件が揃っている
滋賀には可能性しかないな、 と感じました by 呂敏
別所:滋賀はど真ん中に湖があることで、僕ら写真家にとっては大好物な水辺の風景ができあがるんですね。さらにその周りを囲む山々がいろいろな風景を織りなしていて、琵琶湖の周りはまだ見つけられてない美しい場所がいっぱいある。実は滋賀って、写真を撮るのに有利な条件が揃っているんですよ。だから滋賀県には上手な写真家が多いんです。
呂敏:なるほど!
別所:あと僕らは東に行けばすぐ名古屋で、西に行けば京都で、京都から20分高速を走れば大阪で、さらに30分行けば兵庫でと、すごくアクセスが楽。ちなみに京都駅から大津駅まで9分です。なのでGENIC読者の皆さんには京都の流れで滋賀に来て、琵琶湖を前に絶望してほしいですね(笑)。「なんだ、この平たさは」って。いつも富士山がねたましいですよ。富士山は立体で構図が作りやすいので。ただ琵琶湖は難しいからこそ面白さもあるし、いつまで経っても撮れたと思えないところもあって、追求し続けられるところも良さかな。
呂敏:僕、暮らしている頃はまだ写真を撮っていなかったですけど、今回改めて滋賀には可能性しかないなと、すごく感じました。
別所:かっこいい!それをタイトルにしてください。
呂敏:いやいや(笑)、別所さんのお話の通り、わかりやすいものがないので、滋賀県って絶対的に掴みづらいところがありますよね。ビジュアルのイメージ的にも。湖?みたいな。だからこそ、その人が自分の色で滋賀県を見ることができる余白がたくさんある。そういう意味で可能性がすごくあると僕は感じます。
別所:最高じゃん!言うなれば琵琶湖以外、全部余白みたいなものですよ。
呂敏:でも、みんなわかりやすくアイコニックなものというのは飽きてくると思うんですね。オアフ島はオアフ島で素晴らしいけれど、次に目指すのはマウイ島やハワイ島。自分にしか見えない世界を見て、それを感じたい、というような。そこは滋賀県にも通ずるものがあります。
別所:確かに風景写真のムーブとして、いわゆるTHEを撮らなくなってきているところはあって。オーバーツーリズムの問題もありますけど、例えば秋の京都は完成されすぎていて、自分が参与できる余白が少ない。やっぱり余白を発見していくのが旅の楽しみでもあるじゃないですか。もちろんTHEを撮るのもありですよ。でもそれをやった後、全員同じ壁にぶち当たると思う。「みんなと同じ写真や」って。例えば地元で初めて彼女とデートした時のことを思いながら撮る花火と、単に映えている花火だったら、自分の想いがのっている方が作品の良し悪しは抜きにして、満足度が違うと思います。
ふたりで地元を旅した感想は?
呂敏:大人になればなるほど好きなものが固定されて、無意識のうちに自分の視野に入れたいものだけを入れることが多くなっているなと僕自身、感じていたんですね。そんな中で他の方がどういう風にその世界を見ているのか、その距離感を感じながら、自分がその場に立ってカメラを向けるとまた違うなあと。まず別所さんの心、見ているものを僕の中にすっと入れて、そこからじゃあ自分はこの場所にどう魅力を感じるんだろうというふうに考えながら、地元を巡っていたんです。だからある種、別所さんの好きな世界を僕のファインダーを通して見ている感じで、YOUR FOCAL LENGTHをベースに旅した気分でした。
別所:いいこと言うね。僕の視点から見た過去の光景を取り込んだ上で、現在の自分の焦点距離の中に取りこんでいくって、すごいことだよ。
呂敏:何より今回の旅で楽しかったのがふたりで回るということで。僕、あまり他の写真家さんと一緒に撮りに出かけたことがないので、別所さんと一緒に回ってみて、ここでお互い15分撮ろう、コーヒーを飲みながら自分の一番好きな写真を見せ合いっこしよう、これがもうすごく楽しくて。そうやって別所さんの写真を見せていただきながら、「あれ、同じ立ち位置だったはずなのにこう見えているんだ」といった気づきや、「この隙間から僕は狙いたかったんですよ」みたいなやりとりも面白かったです。
別所:僕も、案内しているというより、YOUR FOCAL LENGTHを感じる旅でした。一緒に回ってみると自分にも新しい発見があるし、呂敏が撮った写真を見て刺激も受けて。プロの写真家ふたりが互いに触発されながら、半日間地元をぐるぐる回っているみたいな雰囲気はものすごく楽しかったです。
GENIC vol.77【同郷ふたり旅 ─Your Focal Length】
Edit:Akiko Eguchi
GENIC vol.77
2026年1月号のテーマは「写真家が選んだ、最高の旅先」
どんな旅をしたらいい?
その答えは、As you like. お好きなように、自分らしく。ルートを持たない余白たっぷりの旅でも。行先を詰め込んだ時間割びっしりな旅でも。
だって、旅は表現だから。
さて、旅人でもある写真家たちが選んだ「最高の旅先」はどこでしょうか?何かがあなたの心を撫でたなら、そこは次の目的地かもしれません。
永久保存版、GENICらしい、新しい旅のガイドブックの登場です。