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1泊2日で巡る「別府・国東半島」アートの旅

大分県別府市は、言わずと知れた日本有数の温泉の街。源泉の総数、温泉総湧出量ともに日本一を誇ります。そんな別府市を中心に、大分県ではアートを活用した街づくりを行っているのをご存じでしょうか?また、別府市の北東部に位置する国東半島(くにさきはんとう)でも、10年以上前からアートプロジェクトが行われていて、自然や歴史的な建造物とアートが融合した、美しい景観を楽しむことができます。温泉だけではない、アートと神秘を楽しむ大分県別府市と国東半島の旅に、ファッション・コーディネイターの佐藤匠さんが1泊2日で出かけてきました。

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目次

日本有数の温泉地「別府」でアートに触れる

気軽に立ち寄れる「大分県立美術館(OPAM)」

「五感のミュージアム」「出会いのミュージアム」がコンセプトの「​​大分県立美術館」、愛称はOPAM(オーパム)。建築界のノーベル賞と言われる米プリツカー賞を受賞した坂茂(ばん しげる)さんをはじめとしたメンバーが設計し、2015年に開館しました。

ガラス窓の使い方が印象的で開放感あふれる建物です。通りから中の様子が見え、気軽に立ち寄れるように設計されています。

1Fのエントランスに常設展示されている巨大な卵型オブジェは、アムステルダムを拠点に世界的に活躍するデザイナー、マルセル・ワンダースのインスタレーション「ユーラシアン・ガーデン・スピリット」。ゆらゆら揺れていて、起き上がり小法師のように、押してその反応を楽しむことができます。

3Fまでのエスカレーターを上がると、目に飛び込んでくるのは「天庭(​​あまにわ)」。ガラスで囲われた、空に抜ける庭と屋外展示作品を目にした瞬間、気持ちが一気に高まります。ここでは​​日本の現代工芸を代表する3名、磯崎真理子さん、徳丸鏡子さん、高橋禎彦さんの作品が展示されています。

大分県立美術館(OPAM) 基本データ

<住所>〒870-0036 大分県大分市寿町2−1
<TEL>097-533-4500
<開館時間>10:00~19:00
<休館日>原則無休
<駐車場>あり

入場料

大人 300円
大学生・高校生 200円
中学生以下 無料
※企画展は別料金

行き方・アクセス

<電車>JR九州「大分駅」府内中央口(北口)から徒歩で約15分
<電車・バス>JR九州「大分駅」前7番乗り場からバスに乗車。「オアシスひろば前」下車徒歩すぐ
<車>東九州自動車道「大分IC」から約10分

別府の街で「塩田千春」と出会う

別府市内で開催される文化・芸術のイベント「ベップ・アート・マンス」。2022年のプログラム数はなんと125。そのひとつとして市内の2か所で、ベルリンを拠点に国際的に活躍するアーティスト・塩田千春さんの『巡る記憶』と題したインスタレーションが行われていたので巡ってきました。(現在はすでに終了)

1つめの展示は、食品を扱う元卸問屋だった建物で。入ってみると、無数の白い糸が張り巡らされた空間が。糸をつたって水が滴り落ちる仕掛けになっています。

ポタりポタりと。ゆっくり落ちる雫を静かに眺め続けました。

1つ目の展示場所から徒歩約3分。こちらは、元中華料理屋だった空間で行われているインスタレーション。

今度は赤い糸が店内を覆っています。当時の活気が浮かび上がるような、食器が宙に浮かぶ展示が面白くて、ぐるぐると3周は回りました。

塩田千春さんは『巡る記憶』の2つの展示に、このような言葉を寄せています。
「糸が記憶を紡ぎ、不在となった部屋の記憶を呼び起こす。どちらの空間も、誰もいないのについさっきまで誰かがいたかのように不在の中の存在がある。この場所では人々の記憶が生きたまま湯気のように循環し続ける」。今後の「ベップ・アート・マンス」も楽しみです。

「清島アパート」でアートの未来を感じて

次に訪れたのは「清島アパート」。戦後すぐに建てられた3棟22室からなる元下宿アパートで、現在は、NPO法人BEPPU PROJECTがアーティストの活動支援の一環として運営。アーティストやクリエイターが、居住しながら作品の制作ができる場所として活用されています。

壁には清島アパートで暮らしてきた人たちの手描き年表が。

今年度は6名が居住しているとのこと。予約すると見学も可能で、住民が案内してくれます。これはこの日案内してくれたアーティスト・東 智恵さんの作品。

清島アパート 基本データ

<住所>〒874-0938 大分県別府市末広町2
※見学希望者は、事前に「NPO法人 BEPPU PROJECT」の公式サイトにてご確認ください

お土産はミュージアムショップ「SELECT BEPPU」で

「別府のまちのミュージアムショップ」をコンセプトに、つくり手がもたらす自由な発想や表現と人々の暮らしをつなぐ店。築100年以上が経つ長屋の1階にあります。

竹のバッグやカゴは人気の商品。日々の暮らしが楽しくなりそうなクラフトが勢ぞろいしているので、お土産探しにぴったりです。

SELECT BEPPU 基本データ

<住所>〒874-0936 大分県別府市中央町9−34
<TEL>0977-80-7226
<営業時間>11:00〜18:00
<休業日>火曜、水曜日※祝日は営業
<駐車場>なし※近隣にコインパーキングあり

行き方・アクセス

<電車>JR九州「別府駅」から徒歩で約5分
<車>東九州自動車道「別府IC」から県道52号経由で15分

自然とアートが融合する「国東半島」へ

アントニー・ゴームリー作『ANOTHER TIME XX』と対面

2011年度から取り組みが始まった国東半島アートプロジェクト。今回はまず、大自然の頂点に立つ、とあるアートを見に出かけます。

山登りは1時間ちょっと。静かで神秘的な空間をゆっくり歩きます。ちょっと急な階段はあるけれど、基本ゆるやかな道。

そこに現れたのは、高さ191cm、重量629kgのこの作品。
アントニー・ゴームリー作の『ANOTHER TIME XX』。アントニー・ゴームリーは、1970年代にインドで仏教を学んで以来、自身をかたどった鉄製の人体像をつくり続けているアーティストで、このANOTHER TIME XXは等身大の作品だそう。

九州ではいち早く仏教が栄えた地域である国東半島の切り立った岩場の上で、悠久の自然が広がる東側を向いて立ち続けるこの鉄像は、雨風にさらされ、表面はさび、たえず変化を続けています。

ANOTHER TIME XX 基本データ

<住所>〒872-1614 大分県国東市国見町千燈
<TEL>0978-72-5175(国東市活力創生課)
<駐車場>登山口にあり※不動山の中腹にある「不動茶屋」の駐車場(無料)から徒歩

行き方・アクセス

<車>「大分空港」から国道213号で不動山まで約50分

絶景も楽しめる「五辻不動尊」

ゴームリーの像から少しのぼったところにあるのが、地元では「ごつじさん」と呼ばれ親しまれている「五辻不動尊(いつつじふどうそん)」。仁聞(にんもん)菩薩が4人の同行者と修行した地で、不動明王を祀っており、まるで岩に埋まったかのように建てられています。

この岩屋からのビューは絶景で、晴れた日は山口県まで見渡せるほど。岩場が多いので足元には注意が必要です。

五辻不動尊 基本データ

<住所>〒872-1614 大分県国東市国見町千燈
<TEL>0978-72-5168(国東市役所観光課)
<駐車場>登山口にあり※不動山の中腹にある「不動茶屋」の駐車場(無料)から徒歩

行き方・アクセス

<車>「大分空港」から国道213号で不動山まで約50分

花とアートの岬「長崎鼻」でアート散策

国東半島の先端に位置し、周防灘に向かい「鼻」のように突き出した「長崎鼻」は、花とアートの岬と呼ばれ、多くのアート作品を楽しむことができるエリアです。
アート散策をゆっくり楽しんだので、いくつかを紹介します。

不均質な自然と人の美術館

自然をテーマにしたメディアアート作品が収蔵された施設。テクノロジーを介して、自然と人とがインタラクティブに触れ合うことをテーマにしたデジタルアート作品を展示しています。

「森の部屋」は、円筒型の空間にコンピューターのアルゴリズムでアニメーションを生成・構築しているジェネラティブ・アート作品。

「海の部屋」は、水の玉が空中に浮かび、自由に動き回っているように見える不思議な体験が演出された作品。浮かんでいるように見える水の玉は、触れようとするとインタラクティブに反応してくれます。

自然光とインタラクティブに触れ合うよう設計された作品「太陽と月の部屋」。
窓は自動で開閉する288個の小窓で覆われており、それぞれピアノの音に合わせて開閉します。

不均質な自然と人の美術館 基本データ

<住所>〒872-1207 大分県豊後高田市4060 長崎鼻リゾートキャンプ場内
<TEL>0978-23-1860(豊後高田市観光まちづくり(株))
<開館時間>12月~2月 10:00~16:00
3月~11月 10:00~17:00
<休館日>12月~2月/火・水・木(ただし、祝日を除く)
3月~11月/毎週木曜日
<駐車場>あり(一般車500円)※長崎鼻リゾートキャンプ場駐車場

入場料

一般 700円
子ども 300円

行き方・アクセス

<車>九州自動車道「宇佐IC」から約50分

戸田裕介作「水土の門/天地を巡るもの-Ⅱ(stage2)」

海に向かうように、ステンレススティールと黒御影石で作られた、約6,400kgもの作品。

自分を映して撮ると、アートと共演しているかのような、不思議な写真が生まれます。

戸田裕介作「水土の門/天地を巡るもの-Ⅱ(stage2)」 基本データ

<住所>〒872-1207 大分県豊後高田市4060 長崎鼻リゾートキャンプ場内
※常設展示

鴻池朋子作「One Wild Day」

絵画、彫刻、絵本などさまざまなメディアを用いて世界的に活躍する美術家の鴻池朋子さんの作品。国東半島の自然の中で、触れてのぼれるパブリックアートです。

鴻池朋子作「One Wild Day」 基本データ

<住所>〒872-1207 大分県豊後高田市4060 長崎鼻リゾートキャンプ場内
※常設展示

淀川テクニック作「国東半島のラクダ」

モチーフは、旅人を運ぶラクダ。表面は国東半島で集めた漂流物で覆われています。

ラクダのお腹をパカッと開けると、中には種や植物が。自由に持ち帰ったり持ち寄ったりすることができ、鑑賞だけではなく参加もできる作品です。

淀川テクニック作「国東半島のラクダ」 基本データ

<住所>〒872-1207 大分県豊後高田市4060 長崎鼻リゾートキャンプ場内
※常設展示

別府で楽しく「泊まる」&「食べる」

「アマネク別府ゆらり」で極上ステイ

開放感に満ちた上質なスタイリッシュ空間が広がる、「アマネク別府ゆらり」は2021年12月にオープンしたホテル。隣には、リーズナブルでシンプルな滞在ができる「アマネクイン別府」もあり、旅のスタイルに合わせて選ぶことができます。

館内には、別府ならではの竹細工や格子をモチーフにした開放的な空間が広がります。上質でスタイリッシュで新しい!さらに、別府駅東口から徒歩3分という抜群のアクセスのよさ。どんな旅の拠点にもぴったりです。

宿泊したスーペリアキングの部屋は、180cm幅のキングサイズベッドがあり、コンパクトに機能的にまとまった快適空間。
3名、4名で泊まれる部屋や和洋室タイプもあり、スイートでは源泉かけ流しの客室風呂が楽しめます。

14階には、「美肌の湯」とも称される炭酸水素塩温泉の大浴場が。見晴らしがよく、朝風呂の際は、朝日が照らし出す別府湾の美景を見ながらの温泉浴が叶います。

最上階には、別府湾と雄大な風景に包まれる「温泉インフィニティプール」!フィンランド式のテントサウナも楽しめます。ぜひ水着を持参して!

朝食は、和洋2種類から選べる、ハーフビュッフェスタイル。和食は、一膳釜炊きご飯付きです。部屋で食べたい人向けには、朝食BOXというスタイルも!

アマネク別府ゆらり 基本データ

<住所>〒874-0934 大分県別府市駅前本町6-35
<TEL>0977-76-5566
<駐車場>あり

行き方・アクセス

<電車>JR九州「別府駅」東口から徒歩で約3分
<車>東九州自動車道「別府IC」から県道52号経由で約15分

夕飯におすすめ「居酒屋 より道」

地元の人にとても人気の「居酒屋 より道」。別府の味が楽しめるので、旅のごはんにもぴったりです。

大分はかぼすの生産量日本一で、何にでも、かぼすをつけて食べると教えてもらいました。そんな旅先での会話はとても楽しいものです。

大分の郷土料理「りゅうきゅう」をまずは。

お店の名物である「ねぎ焼き」も評判の味です。温泉豆腐もとろりとしていて美味しいので外せません。お腹をすかせて向かうのがおすすめです。

居酒屋 より道 基本データ

<住所>〒874-0937 大分県別府市秋葉町6-31
<TEL>0977-22-5048
<営業時間>11:30〜13:00(無くなり次第終了)/18:00〜22:30
<休業日>木曜※日曜・祝日は夜のみ営業
<駐車場>あり

行き方・アクセス

<電車>JR九州「別府駅」東口から徒歩で約10分
<車>東九州自動車道「別府IC」から県道52号経由で約15分

温泉だけじゃない!アートも楽しめる別府&国東半島への旅

別府と国東半島で楽しむアートに触れる旅。いかがでしたでしょうか?さまざまな作品を直接見て感じることは、自分の感性磨きにつながります。極上の温泉で癒されつつ、自分自身のアップデートもできる、プラスαを叶える旅がここにあります。

佐藤 匠

ファッションコーディネーター。1990年生まれ、東京都出身。
ファッションに関する企画・スタイリング・モデル・執筆・PRなど幅広く活動。2022年10月Nikon Z 30を手にしたことがカメラを始めたきっかけ。現在カメラライフを満喫中。

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