Halno
アートディレクター・写真家 福島県出身。ほうきに乗った浮遊写真を撮り続け、Instagramメインのインフルエンサーとして世界各国で撮影。写真集発刊、テレビ出演や広告出演多数。2021年には大阪のなんばパークスにて、南海電鉄主催による単独写真展を成功させる。現在はカナダのモントリオールで生活。
愛用カメラ:Leica M10、Plaubel makina67、Sony α 7 II
愛用レンズ:SUMMILUX -M f1.4/50mm、Tamron70-180mm F/2.8
Old and new Montreal
伝統と革新のフュージョン、モントリオールの街と人の息遣いを写し出す
「カナダ第二の都市モントリオールは、“北米のパリ”と呼ばれるほど、ヨーロッパの文化が色濃く残った街。新築であることよりも、古い建物を丁寧に使い、継承することに喜びを感じる文化。アートに対する懐の深さも魅力のひとつで、街の至る所にウォールアートがあります」。
初めて見て感じた情景を大切にしたい
ほうきに乗った浮遊写真で有名なHalnoさんがカナダ・モントリオールに移住したのは、
「今後はよりグローバル化が進み、生活の基盤を日本だけにとどめる時代ではないと常々感じていた。子供たちにもその可能性を示したいと思ったことが理由です」。
「モントリオールのあるケベック州はカナダで唯一、フランス語が第一言語ですが、もちろん英語も話しますし、多様な文化や思考に対して非常に柔軟な土地だと感じています」。
「モントリオール人は犬が大好き。急いで撮ったからピントが甘いけれど、お気に入り」。
イタリア系移民が多く暮らすリトル・イタリー。「たくさんの美しい教会やモスクが点在し、建築好きにはたまらない街。古い建物とグラフィカルな落書きやポスターとの融合も見どころ。春の到来を喜んでみんなが一斉に外に出て運動を始める、この街の情景すべてを凝縮した1枚」。
人と街のイメージがマッチする、その瞬間は“一点もの”
浮遊写真で国内外の各地を回っているうちに、その土地が持つ文化を撮りたくなったというHalnoさん。
「モントリオールは北米でありながらフランス領時代の文化や歴史を大切に継承し、現代とうまくミックスしながら発展する様子が魅力。文化財が多く残る街のあちこちにある、かなりレベルの高いグラフィティアートを見ると、つい撮影してしまいます。撮りたいシーンにこだわりはありませんが、初めて見て感じた情景を大切にしたいという想いはあるかもしれない。人と街のイメージがマッチした写真が撮れた時はうれしいです。ストリート写真の面白さは、その瞬間の“一点もの”であること。街と人の息遣いを捉え、世界は美しいということを伝えられたらと思います」。
「モントリオールは北米でも特に多民族・多宗教。さまざまな価値観を自然と受け入れる多様性の街だと聞いています」。
高層ビルが建ち並ぶダウンタウンは、歴史ある街並みと近代的な建物が自然に溶け込む。
ケベック州モントリオール島からセントローレンス川にかかるジャックカルティエ橋。「鉄橋が多く、このゴツゴツした感じは日本にはない光景」。
ダウンタウンにある古いビル。「向かい側にはガラス張りの近代的なビルがあり、光で反射している、新旧のストーリーを捉えた1枚」。
モントリオールの語源と言われる「モン・ロワイヤル」という小さな山を中心に街が広がり、丘の上には広大な公園がある。「少し上がればどこからでも、歴史とモダンが融合した美しい街を望むことができます」。
「ほとんど人がいない早朝のダウンタウンを散歩していた時に見かけた消火活動の様子」。
「日の出日の入りの条件が日本とは異なるため、朝日と夕日の美しさは格別」。
寒い日には–20°Cを下回る極寒の巨大都市ならではの構造で、寒さに対する環境が整っているモントリオール。「全長約33kmにおよぶ世界最大級の地下街が広がっていて、よく迷います(笑)。この写真は地下に通じる階段の上から撮ったもの。明暗が美しく、地下にもぐらず傘をさして歩く女性がポイント。通りで出会う住人をその街の象徴に見立てて、光景に写り込んだ時には思わずシャッターを切ります」。
GENIC vol.63 【World Street Photography】
Edit:Yuka Higuchi
GENIC vol.63
GENIC7月号のテーマは「Street Photography」。
ただの一瞬だって同じシーンはやってこない。切り取るのは瞬間の物語。人々の息吹を感じる雑踏、昨日の余韻が薫る路地、光と影が落としたアート、行き交う人が生み出すドラマ…。想像力を掻き立てるストリートフォトグラフィーと、撮り手の想いをお届けします。