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海を歩く/龍崎翔子のクリップボード Vol.42

龍崎翔子<連載コラム>第2木曜日更新
HOTEL SHE, OSAKA、
HOTEL SHE, KYOTOなど
25歳にして5つのホテルを経営する
ホテルプロデューサー龍崎翔子が
ホテルの構想へ着地するまでを公開!

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海を歩く/龍崎翔子のクリップボード Vol.42

かつて、海は『隔てるもの』だと思われていた。土地と土地の間に横たわる海や湖、河川。それらは人の行く手を遮り、橋や船を通じて克服するものだと、少なくとも私は思っていた。琵琶湖を横断し物資と情報を売り買いした近江商人や、瀬戸内海を統率した村上海軍、水路や運河を通じて経済圏を築き上げた大坂商人、香辛料を求めて遥か遠方まで旅に出た東インド会社。海や川を拠点に活動をした人々がいることは知識としては当然知っていたけど、それが自分の実体験とリンクすることは今までほとんどなかった。

私は実はSUPが好きで、旅先で海に出る機会があれば、なるべく体験するようにしている。それは、SUPという体験そのものよりも、土地によって異なる海の色や潮風の匂い、水の冷たさ、砂浜の粒度などを、より高い身体性をもって感じたいからなのだと思う。よく、観光地には展望台があって、そこから海に浮かぶ美しい景色を眺めたり、記念撮影したりすることができるようになっているけれど、それよりもその景色の中に没入して、その世界と一体化する時間がより豊かだと感じられるような気がする。

瀬戸内海に浮かぶ島々や、長崎や志摩で無数に小さな島が続いていく景色を目の当たりにした時、すぐそこのあの島を探検してみたい、とふと思った。数百mか1kmくらい先の島まで、SUPで行けそうだ、と。その時急に、海は道なんだと実感した。陸路ではたどり着けない場所でも、小さな櫂があれば水面に浮かんで赴くことができる。

ただ、現実には、その島に行くには港からフェリーに乗って移動しないといけない。あるいは周遊船か、地元のアクティビティツアーが主催するカヌー体験か、わからないけれど、とにかく自転車に乗って1km先に行くような感覚で海を渡って隣の島に行くのは、今の日本ではまだ難しい。
これは何も特別な話ではなくて、大型の観光バスに乗って色々な名所を巡るより、自分たちだけで地図を持って街に赴き、地元の住民に紛れて道に迷ったり買い食いをしたりすることがより印象深い旅行体験となるのに近い話だと思う。この感覚に照らしていうと、周遊クルーズや、カヌー体験、SUP体験、もしかしたらバナナボートやジェットスキーなども、その乗り物に乗ること自体が目的化してしまう観光コンテンツはちょっと勿体無くって、もっと面白くて印象深い観光コンテンツに化けるんじゃないかと思ったりする。

例えば、移動の手段としてSUPやカヌーを使ったり、小舟やヨットの上で食事やお酒を楽しめたり、バナナボートや水上バイクのタクシーがあったり。もちろん安全面や法規制など様々な要因があって、旅行者や住人の方の生活を守るために今の状況であることは重々承知しているのだけれど、それでも観光価値としての海上交通に大きな可能性を感じている。私はレンタカーやレンタサイクルを借りるようにカヌーかSUPを借りて、海を自由に旅してみたい。そして、とりあえず1級船舶を取ろうと思っているそんなこの頃です。

龍崎翔子

2015年、大学1年生の頃に母とL&G GLOBAL BUSINESS, Inc.を立ち上げる。「ソーシャルホテル」をコンセプトに、北海道・富良野に『petit-hotel #MELON』をはじめとし、大阪・弁天町に『HOTEL SHE, OSAKA』、北海道・層雲峡で『HOTEL KUMOI』など、全国で計5軒をプロデュース。京都・九条にある『HOTEL SHE, KYOTO』はコンセプトを一新し、2019年3月21日にリニューアルオープン。

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