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映画のワンシーンのような1コマが撮れる
私にとって写真は、“自分のために、自分と向き合うためのもの”。写真を撮る理由はいつも、友達と見た美しい景色を忘れたくないだったり、旦那さんとの写真がほしいだったり——。自分のために撮っているのです。自分のために撮った写真を後から見返すことも好きで、そのときの記憶や感情が思い出されて、過去の自分と向き合っている気持ちになります。同時に、写真を撮ること自体も好きなので、写真は自分が楽しむためのツールでもあります。
富士フイルムのカメラとの出会いは4年前、「X-T10」を譲っていただいたのが始まりです。ただそのころはまだ、旅行など身軽な装備で行きたいときの使用に留まっていた感じ。それが半年前に、以前から気になっていたGFX50S IIとレンズキットを購入してからは、何気ない風景も絵になるGFXシリーズの虜になっています。
そもそも中判カメラに興味があって、ただレンズを全て買い直す金額面の問題や、操作感が変わってしまうことへの迷いがあり、なかなか一歩が踏み出せずにいました。そんなとき、カメラ友達がGFX50S IIを持っていたことに背中を押されて、購入に踏み切りました。
とにかく、買って正解!思い切って手に入れたGFX50S IIがきっかけでしっかりカメラと向き合うようになったし、フィルムシミュレーションによって、ファインダーを覗いた瞬間から私が好きなフィルムの色が写し出されることもあって、撮影がより楽しくなりました。私の父はフィルムカメラをたくさん持っていて、よくフィルム写真を撮影していました。父の写真を見てフィルム写真の色に魅了され、デジタルカメラでもフィルムらしい色で表現できたらいいのにとよく思っていたのですが、富士フイルムのカメラはまさにそれが叶うカメラです。
また、GFX50S IIのボケの美しさにも感動しました。玉ボケが美しく、背景も滑らかにボケて立体感を演出してくれる。本当にクオリティが高くて、背景も完全に溶けて消えてしまうのではなく、違和感のない自然な背景として被写体を際立たせてくれる。まるで映画のワンシーンのような1枚になるのです。
富士フイルムのカメラが表現する色のなかでも、とくに緑と黒の色が好みで、花畑など植物を撮ることがより一層楽しくなりました。以前は色や黒くつぶれてしまうような影の部分をレタッチすることがよくありました。それが富士フイルムのカメラを使うようになってからは、フィルムシミュレーションが私好みの色にしてくれるし、シルエットでさえも真っ黒にはならず立体感を演出してくれるため、調整はカメラ内で基本完結し、撮って出しで充分満足できるようになりました。
本当に色や描写が素晴らしくて、GFX50S IIにしてからすべてのお出かけに連れて行きたいと思うようになりました。まだ購入して半年ということもあり、いつもの風景も遠方へのお出かけも、どんなふうに写し出してくれるかわくわくしています。
今回の撮影では、ほとんどの写真を初めて使うFUJIFILM GFX100 IIで撮影しましたが、画質の高さに驚きました。どんなに拡大してもノイズを感じさせない美しさ。低感度がISO80まであり、日中の眩しい時間でも絞り開放での撮影ができるのも嬉しかったです。それにより、ピントが合っているところはもちろん、ボケの部分まで美しく表現することができました。
My favorite フィルムシミュレーション
1:クラシックネガ
フィルムシミュレーションの魅力の一つに、種類の豊富さがあると思います。撮影シーンやそのときどきの空の色などによっても使い分けができますし、同じ景色でもフィルムシミュレーションを変えることで雰囲気が違う写真が撮れる。撮影が本当に面白くなります。
数あるなかで、もっともお気に入りでよく使うフィルムシミュレーションが「クラシックネガ」。室内の撮影の際によく使用するのですが、外と室内で光の差があるとき、影やシルエットの黒い部分がくっきりと黒になることで、写真に締まりが出てメインの被写体を際立たせることができます。
また、クラッシクネガは緑の多い場所や曇り、雨の日にも使用することが多いです。クラシックネガの色は雨や曇りの日にもすごく合っていると感じていて、しっとりした雰囲気をつくり出せます。今まで雨や曇りの日に撮影したいと思うことが少なかったのですが、クラシックネガと出会ってから、雨の日の光も好きになりました。
プリセットで色表現に微調整を加え、より自分好みの色をつくり出すこともあります。クラシックネガ自体が少し紫色かぶりなので、ホワイトバランスを緑色に寄せて撮影したり、低彩度でもあるため少し彩度を高めつつ、やわらかい印象をキープできるよう、明瞭度をやや下げて撮影することもあります。
2:PROVIA/スタンダード
次いで好きなフィルムシミュレーションが、「PROVIA/スタンダード」です。PROVIAが写し出す青が好きで、夜空や夜景撮影などでよく使用します。自然な色味で、彩度が強くなりすぎることもなく、さまざまなシーンで使いやすいと感じています。暗い部分もしつこさがなく、明暗の差がある場所でも人物の肌色や、繊細な淡い色をきれいに表現してくれます。
フィルムシミュレーションは撮影後にかけることもできますが、私は撮る前に設定しておく派。レタッチの時間が格段に短くなるのはもちろん、撮影しながらその風景に合ったフィルムシミュレーションを選ぶことで、撮影がとても楽しくなるからです。また、RAW+JPEGで撮影すると、iPad版LightroomではRAWとJPEGを分けて保存することができないため、撮影時に設定した露出やフィルムシミュレーションなども結局あとがけになってしまうので、JPEGのみで撮影することが多いです。富士フイルムのカメラはJPEG撮って出しの写真で大満足!データ容量もRAWに比べて小さいので、たくさんシャッターを切りたいときでも重くならず、便利だと感じています。
土居夏実さんが愛するフィルムシミュレーションの特徴
1:クラシックネガとは?
スナップシューターに愛用されてきたネガフィルム「SUPERIA」がベース。メリハリのある諧調と、彩度を抑えつつも明部と暗部の色味を変えることで深みを増した色で、立体的な表現が得られます。
2:PROVIA/スタンダードとは?
プロ用のリバーサルフィルムのスタンダードタイプ「フジクローム・プロビア」がベース。多くの人が心地よく感じる色再現を追求し、風景から人物まで、あらゆる被写体に対応するオールマイティなフィルムシミュレーションです。
プロフィール
土居夏実
写真家 香川県出身。高校時代、写真部に所属し写真甲子園に出場。スタジオカメラマンを経て、地元である香川を拠点に活動中。星空や、海、植物が好きで、自然に溶け込んだような写真を撮影している。
土居夏実さんが使用したカメラ
GFX100 II
圧倒的な画質とシステム機動性に加え、新たに高速性能と動画性能を手に入れたGFXシリーズのフラッグシップモデル。アルゴリズムの改良により進化した顔・瞳AFに加え、動物・鳥・車・バイク・自転車・飛行機・電車・昆虫・ドローンを検出する。高速連写性能も進化し、従来のGFXシリーズでは撮影が難しかったスポーツ分野においても決定的瞬間を逃すことなく力を発揮してくれる。忠実な色再現性とメリハリのある階調表現を持ち合わせた「REALA ACE(リアラエース)」が加わり、フィルムシミュレーションも全20種にパワーアップ。
※2024年6月現在、「REALA ACE」を搭載しているのはGFX100 II・X100VIの2機種。今夏のファームアップでX-H2S、X-H2、X-T5、X-S20でも対応予定です。
GFX50S II
約900gの小型軽量ボディに5140万画素センサーを搭載したミラーレスデジタルカメラ。フルサイズ機と比較して約1.7倍の受光面積を誇る大きなピクセルによって、ノイズを抑え、広大なダイナミックレンジを実現している。対角55mm(ラージフォーマットセンサー)のイメージセンサーはカスタマイズが施された専用設計で、より正確に光を描き分け、輪郭強調処理をせずともメリハリのあるシャープな描写をつくり出す。質の高いRAWデータの生成を可能にし、撮影後に思いのままに調整を加えても画像劣化を極限まで抑えられる一台。