消費と創造どちらが好き?移住に向いている人、向いていない人/伊佐知美の「旅するように移住」Vol.3

様々な移住者にインタビューした『移住女子』の著者であり、自身も現在、沖縄・読谷村に移住中の伊佐知美が送る連載コラム。移住に向いてる人、向いてない人、お金や仕事のことなど、気になる話を15回にわたってお届けします。
「"いま"この街で暮らしている意味って、なんだろう?」そんな疑問を持っている方の背中をポンッと押す、“最新の移住”コラム。
第3回は、「消費と創造どちらが好き?移住に向いている人、向いていない人」です。

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連載コラム:伊佐知美の「旅するように移住」

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消費と創造どちらが好き?移住に向いている人、向いていない人/伊佐知美の「旅するように移住」Vol.3

「移住に向いている人」「移住に向いていない人」って、いるのだろうか?

このテーマについて考える時、一般的には「向いている要素」として、コミュニケーション能力がある、運転免許証を持っている、虫が苦手じゃない、などが挙げられることが多い。

けれど、移住者の取材をしているうち、移住ってそういった条件面以外にも、向き不向きをはかる「性格的傾向」があるのではないかと感じるようになった。

今回は、ちょっぴり暴論かもしれないけれど、移住で一番多い「都会」から「田舎」に移住するパターンで、移住の向き不向きについてもう少し踏み込んで考えてみたい。

「消費」が上手な人は、都会向き

私は、メイン拠点を沖縄・読谷村に置き、サブ拠点に東京・清澄白河を選んで暮らしている。

まったく違う構造の2つの街を行き来していると、一方にあって、一方にないものを如実に感じて、たまに頭がクラクラする。それくらい、いわゆる田舎と都会って構成要素が異なるのだ。

中でも、沖縄に少なくて東京にあるものといえば、以下を思い出す。

・美術館の展示、アーティストのライブなど、最新イベント
・センスのよいセレクトショップ
・看板、広告、新店オープン情報など街を歩くだけで得られる数々の刺激
・「Amazonプライム」「Uber Eats」などの即時サービスの恩恵
・そもそもの店舗数と人口数が織りなす都市の景観

東京にいる時、当たり前に周りにあったものが、田舎だと手が届かない存在になることは多い。

実店舗が少ない上に家から遠いということはザラにあるので、「今日買いに行こう」と思っても手に入らないものは確実にあるし、配送してもらうにも配送料が高かったり、配送日が少し先になったりする(もちろんどの田舎かによって変わるけれども!)。

たとえば、私は沖縄で「Aesop」というスキンケアブランドの在庫を切らせてしまった時、すぐにほしいなと思って最寄りの店舗を検索したら、最寄り店舗は台湾店です、と表示されて笑ってしまったことがある。

そういうことは、都会では起こりづらい。無数の選択肢から好きなものを選び、消費して楽しむことが上手で、それが幸せだと感じられる人は、都会以外で暮らすことが「不便」になりやすい。

私の周りにも、都会暮らしが上手な友人がたくさんいる。彼女たちがたまに疲れて「移住もいいな〜」とこぼした時は、まず1週間前後のバケーションを提案する。

彼女たちは、メイン拠点をどこか別の場所に変えたいわけではきっとないのだ。「癒やし」と「非日常」を求めて、旅行するというバランスがちょうどよさそうだな、と私は思う。

余白を見つけて「何かつくりたいな」と感じる人は、移住向き

対して、移住に向いている人ってどんな人なのだろう?

たくさんの移住者に取材をするうち、移住して幸せそうに暮らしている人たちには、共通点があるのではないかと感じるようになった。

[ a ] 移住によって叶えたいライフスタイルの優先順位が明確
[ b ] とはいえ、優先順位の4位以下くらいは、柔軟に変えられる(予想外のことが起こった時に、理想イメージに固執しすぎない、というのは移住に大事な要素)
[ c ] 「ないなら、つくろう」余白を見つけて遊ぶのが上手

とくに大切なのは、[ c ] 「ないなら、つくろう」余白を見つけて遊ぶのが上手、だと思う。

人気の移住先・豊かな自然が美しい島根県海士町は、島のスローガンとして「ないものはない」を謳ったけれど、これは「ないものは、ないのだ!」と開き直っているわけでは決してなく、「ないものは、つくればいいので、ないものがないです」という至極前向きに生産する姿勢を示している。

ものやコトにあふれる便利な都会とは異なり、田舎での暮らしは「何もなさ」を感じることがやっぱり増える。

そこを、そのまま「何もないなぁ」と捉えるのではなく、「真っ白なキャンバス」と捉え直して、「じゃあここに何かをつくろうか」と、未来を描き出すことができる人は、田舎暮らしとの相性がとってもいい。

といっても、特別な何かをつくり出す必要はなくて、「ないなら、つくろう」精神の出発点は「移住先の暮らしに自分がほしいもの」が一番いい。

たとえば、コーヒー屋がほしいならコーヒーを焙煎する、おいしいパン屋があったらいいと思うならパンを焼く。イベントがないならマルシェを企画、既存店舗にオンラインショップがないならBASEでつくってあげる、SNSアカウント運用が大変なら手伝うetc……。

そうする中で、地域の人とのコミュニケーションが生まれて、移住後の暮らしがどんどん充実していく人の例を無数に見てきた。

かくいう私も、沖縄という豊かな亜熱帯の自然を日々眺めていたら、気候に合ったワンピースやピアスを身に着けたくなり、気に入ったものが手頃な値段で手に入らなかったので、うっかり沖縄の植物由来の染め物を練習して、ワンピースやピアスをつくってしまった。

消費ではなく創造を楽しんで、暮らしを自らの手で豊かにしていくのもよさそう……と感じられる人にとって、田舎は「不便な土地」ではなく、素材にあふれる素敵な土地に映るはずだ。

自分が、都会の便利と田舎の余白、どちらに惹かれるかを把握することは、移住の向き不向きを考える上ではとても有効だと私は思う。

「真っ白な土地のキャンバスで、何かをつくるのっていいな」と感じた人、もしかしたら移住、向いているかもしれませんよ。

伊佐知美

これからの暮らしを考える『灯台もと暮らし』創刊編集長。日本一周、世界二周、語学留学しながらの多拠点居住など「旅×仕事」の移動暮らしを経て沖縄・読谷村に移住。移住体験者の声をまとめた『移住女子』の著者でもある。

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