何が “移住” で、何が “引っ越し” ?/伊佐知美の「旅するように移住」Vol.1

様々な移住者にインタビューした『移住女子』の著者であり、自身も現在、沖縄・読谷村に移住中の伊佐知美が送る連載コラム。移住に向いてる人、向いてない人、お金や仕事のことなど、気になる話を15回にわたってお届けします。
「"いま"この街で暮らしている意味って、なんだろう?」そんな疑問を持っている方の背中をポンッと押す、“最新の移住”コラム。
第1回のテーマは「何が“移住”で何が“引っ越し”?」です。

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連載コラム:伊佐知美の「旅するように移住」

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何が “移住” で、何が “引っ越し” ?/伊佐知美の「旅するように移住」Vol.1

「暮らす場所」を選ぶ前提が変わった2020

2020年、世界が急に変わって、私たちの暮らし方もなかなかの速度、角度で変わっていった。たとえば仕事のしかた、友だちと会う頻度や方法、時間・お金の使い方、様々な優先順位etc...。

通勤自体がなくなって、「部屋で過ごす時間が増えた」という人もとても多いと思う。たとえば、週5日職場に通っていた生活スタイルから、週5日部屋で仕事をするスタイルへ。

職場へのアクセスだけでなく、友だちや家族に会いやすいからという理由で、暮らす場所を選んできた今まで。けれど、そのすべての前提みたいなものが、急に変わった2020年。

びっくりするほど、価値観や常識の一部がすっかり入れ替わり、そんな中で、ふと「"いま"この街で暮らしている意味って、なんだろう?」と、漠然とした疑問にぶち当たった人って、少なくないんじゃないかと思う。

かくいう私もその一人だ。

私はコロナ前は、神奈川県の田園都市線沿い、渋谷駅まで20分圏内のベッドタウンで暮らしていた。けれど今は、もっと自然の近くで過ごす時間を増やしたくて、沖縄県の読谷村に自宅を移し、海と空、サトウキビ畑に囲まれた部屋でこの原稿を書いている。

はたから見たら、これって「移住」なのだと思う。

でも、正直「移住しよう」と大仰に決めたわけじゃない。理想のライフスタイルを実現するための場所が「神奈川県ではないな」と感じて、「ではどこでだったら実現できるのだろう?」と考えて、「引っ越そうかな」と思い当たった先が、沖縄県というちょっぴり遠い場所だっただけである。

じつは、移住という言葉の明確な定義って、世の中に存在しないのだ。

どこからどこまでが「引っ越し」で、どこからが「移住」に相当するかは、その人の心の持ちようだったり、状況だったりで線引きが難しいので、定義しづらい、というのが一般の見解だ。

・移住:ほかの土地または国へ移り住むこと(広辞苑)。永住を目的とすることも多い(Wikipedia)
・引っ越し:転居、転宅(広辞苑)

移住=永住、なの?

さてさて、ここからは私の自論なのだけれど……。永住って、字のごとく「末永く住むこと」だから、正直ちょっと言葉が重々しいな、と感じることがある。当然、移住の結果として永住という選択肢があったらハッピーだと思うけれど、移住=永住者になるという覚悟が前提にあってしかるべきとは、私は思えない。

なぜなら、それを前提として移住した人よりも、柔軟にいこう、と考えて進んだ人の方が、その土地にうまく馴染んで、結果長く暮らしていると、たくさんの移住者にインタビューしてみて感じているから。

もちろん、簡単に考えて気軽にやってみていいのが移住!と無責任に言いたいわけでは毛頭ない。でも、背水の陣を引きました、もう元の場所には戻れません、移住先に骨を埋めますという覚悟を持って、それを実行しなければ、というような感覚は、なくていいのではなかろうか。

「ライフスタイルを選び直そう」伊佐知美的、移住の定義

『移住女子』の著者である私が、移住というものを定義するなら、「ライフスタイルを選び直すことを主な目的に、メイン拠点を移すこと」であると思っている。

もっと言うと、引っ越しと移住の違いは、理由の発生どころの違いにあるのではないかと感じている。引っ越しは、進学や就職、転勤や家庭の事情など、何かしら「自分の外側」で起こることが大きな理由となって、なおかつある程度の強制力が発生していることが多そうだ。

けれど移住は、誰に強制されるでもなく、「自分の内側」から湧き上がってくる気持ちが最たる理由。「心地よさ」や「よりよい過ごし方」を求めて、実行することが多いだろう。

たとえば、もっと自然の近くで暮らしたい。四季の移り変わりを見つめて暮らしたい。ダイビングが趣味なので海のそばへ。キャンプが好きなので山のふもとへ。そんな大層で自覚しやすい変化でなくても、電車や車の音がもう少しだけ聞こえない静かな環境、図書館やスーパーの近く、大好きな焼き立てのパンが買いやすい場所――などなど、「自分の内側」から湧き上がってくる理由はなんだっていいのだ。

だって結局、日々の幸せな瞬間を増やしたいから、ライフスタイルを選び直したいんだもん。理由なんて、なんだってあり得る。でも、そういう小さな声に耳を傾けて、変化を促してあげられる生き方って、とても贅沢だし、素敵な「表現」なんじゃないかと私は思う。

今や誰しもの暮らしの延長線上に選択肢として存在する「移住」。幸せのベースアップが図れる手段として「移住」を定義し直して、一緒に疑問や不安に向き合っていく場所がつくれたらいいなと思い、筆を取り連載を始めました。

肩の力をすこし抜いて、まるでスキップをするかのように楽しく気軽に移住と向き合う、そんなきっかけになれたらとても嬉しいです。連載「旅するように移住」、これからどうぞ、よろしく。

Photo by:shigeki naganuma

伊佐知美

これからの暮らしを考える『灯台もと暮らし』創刊編集長。日本一周、世界二周、語学留学しながらの多拠点居住など「旅×仕事」の移動暮らしを経て沖縄・読谷村に移住。移住体験者の声をまとめた『移住女子』の著者でもある。

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