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日常の記録写真さえも、誰かに見せたくなるような作品に
数年前、猫の小雨と暮らし始めたことと、娘を出産したことをきっかけに、身近なものを撮ることが多くなりました。それまでは仕事でもプライベートでも遠くまで撮影しにいくことが多かったけれど、今は家の中や近所で撮影することが多いです。娘と愛猫の寝顔や、何気ない瞬間に見せてくれる表情が愛おしくて、毎日飽きることなく撮り続けています。
写真を見返すと娘の成長を実感したり、記憶の中にしまい込まれていた姿が鮮明に蘇ったり。私にとって写真は、「忘れたくない大切な瞬間」そのものだと感じます。
富士フイルムのカメラは、ビジュアルがフィルムライクでかっこいいな、とずっと憧れていましたが、なかなか手を出せずにいたので今回、初めて使う機会が訪れたことに、まず歓喜しました。そして実際X-T50を使ってみると、とくにダイヤルを回して設定を変えるところなど、フィルムカメラを愛用していた頃のわくわく感が思い出され、写真を撮ることの楽しさも蘇りました。
また、これまで写真は編集するのが当たり前だと思っていましたが、フィルムシミュレーションのおかげで、X-T50はシャッターを切ったときにはもう作品が仕上がっている。これには本当にびっくりさせられました。中判フィルムカメラを覗いたときのような、レンズ越しの世界にわくわくする感覚を久しぶりに味わうことができ、本当に感動しました。
そのうえ、フィルムカメラは一度フィルムを入れると1本撮り終わるまでフィルムを替えることができませんが、フィルムシミュレーションなら、撮りたい写真のイメージが見つかるまでダイヤルを回すだけで、フィルムを替えるように色表現を楽しめる。その点も、今回実感した魅力でした。シーンによってフィルムシミュレーションのダイヤルを回し、そのときに一番心ときめくものを使うのが、本当に楽しかったです。
普段、プライベートで撮った写真を編集する時間がなく、写真は気に入っていても「色味を編集したいな」と思って、編集待ちの写真がどんどんたまっていっているという状況です。それが、X-T50で撮影すると、撮って出しの状態でお気に入りの写真に仕上がっている。そのため写真が埋もれてたまってしまうことがなくなりました。それどころか、娘の成長など自分だけのために撮影した記録写真でさえも、誰かに見せたくなる、作品のように仕上がるからすごいです。
My favorite フィルムシミュレーション
1:ACROS
色による情報が制限され、見せたい表情をクローズアップすることができるという理由から、被写体の表情を見せたいときは、モノクロのフィルムシミュレーション「ACROS」を使用しました。室内のオレンジ色のライトなど、被写体への色かぶりもなく統一感を持たせられます。
その上で、ACROSは光と影がとてもきれいで立体感があると感じました。薄暗い部屋で光遊びするのも楽しくて、すべての撮影で使いたくなるくらい、フィルムシミュレーションの中で一番のお気に入りとなりました。
2:PRO Neg.Hi
家でふと娘や愛猫を撮るときは、「PRO Neg.Hi」を使いました。PRO Neg.Hiはコントラストが強めで、光が少ない室内でもメリハリがつくのがお気に入りのポイントでした。
実は、フィルムカメラで撮影していたときに使っていたフィルムが、このPRO Neg.HiのベースになっているというPRO160NHだったんです。スナップ写真などにおいて、陰影がはっきりして立体感が出るのが魅力で、ずっと愛用していました。
PRO Neg.Hiは、フィルムPRO160NHならではのノスタルジックな色味はそのままに、デジタルらしい繊細な描写が表現ができる、すばらしいフィルムシミュレーションだと感じました。
加藤 光さんが恋したフィルムシミュレーションの特徴
1:ACROSとは?
“世界最高の粒状性”と称賛されたモノクロフィルム「ACROS」がベース。豊かなシャドウディテール、高精細なシャープネスに加え、高感度では粒状性が増し、モノクロフィルムのような質感が得られます。
2:PRO Neg.Hiとは?
プロ用ネガフィルム「PRO160NH」がベース。「PRO Neg.Std」よりも階調がやや硬く、屋外など凝ったライティングができないシチュエーションでのポートレート撮影に適しているフィルムシミュレーションです。フラットなライティング下でも適度な陰影が得られます。
プロフィール
加藤 光
フォトグラファー 東京都在住。一児の母。12年前に中判フィルムカメラを使い始めたことがきっかけで本格的にカメラを始める。趣味で投稿していたインスタグラムが話題となり、フリーのフォトグラファーに転向。企業の広告や海外観光局の撮影、雑誌の連載など、旅の撮影を中心に幅広く活躍している。
加藤 光さんが使用したカメラ
X-T50
軍艦部に「フィルムシミュレーションダイヤル」を新規搭載し、フィルムシミュレーションの選択がかつてないほど直感的に。ダイヤルを回すだけで最新の「REALA ACE」を含む、20種類のフィルムシミュレーションモードから選ぶことができる。表示倍率0.62倍で269万ドットの電子ビューファインダーは高い視認性に加え、色彩や明るさが調整されているので、仕上がりを確認しながらの撮影が可能。また、クラシカルなフィルムカメラを彷彿とさせるX-Tシリーズのデザインを継承しながらも、わずか438gへと軽量化(バッテリー・メモリーカード含む)。洗練されたデザインとボディのコンパクトさも相まって、持つ喜びを感じられる、どこへでも持ち歩ける理想的なカメラ。