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色に恋して。デジタル写真をフィルム風に 「FUJIFILM フィルムシミュレーションの魅力」vol.5 加藤 光

デジタルカメラで撮影した写真を、フィルム写真のようなカラーに。そんな夢のような機能が、富士フイルムのデジタルカメラに搭載されています。その名も「フィルムシミュレーション」。フィルムを交換するような感覚で色再現を楽しめる機能で、その数なんと20種類。フィルム時代から90年以上にわたり、色の表現を研究してきた富士フイルムだからこそ作れる機能です。

「Xシリーズ」「GFXシリーズ」すべての機種で使用できるとあって、この機能に恋して、富士フイルムのデジタルカメラを愛用し続ける写真愛好家やフォトグラファーも多数。

そこで、本連載では「フィルムシミュレーション」の魅力を、全12回にわたってお届け。毎回1名のクリエイターがお気に入りのフィルムシミュレーションで撮影した作品とともにその魅力を語ります。

第5回は、フォトグラファーの加藤 光さん。富士フイルムのX-Tシリーズの最新機種「X-T50」で撮影した作品とともに、富士フイルムのカメラを使ってみた感想と、恋したフィルムシミュレーションについて紹介します。

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目次

日常の記録写真さえも、誰かに見せたくなるような作品に

数年前、猫の小雨と暮らし始めたことと、娘を出産したことをきっかけに、身近なものを撮ることが多くなりました。それまでは仕事でもプライベートでも遠くまで撮影しにいくことが多かったけれど、今は家の中や近所で撮影することが多いです。娘と愛猫の寝顔や、何気ない瞬間に見せてくれる表情が愛おしくて、毎日飽きることなく撮り続けています。

写真を見返すと娘の成長を実感したり、記憶の中にしまい込まれていた姿が鮮明に蘇ったり。私にとって写真は、「忘れたくない大切な瞬間」そのものだと感じます。

camera:X-T50 lens:XF50mmF1.0 R WR
フィルムシミュレーション: ACROS
「お絵描きが大好きで最近は絵の具で絵を描くことにはまっている娘。家のダイニングで、いつもは騒がしい娘が集中して絵を描いてる姿に愛おしさを感じ、撮影しました。記録写真のつもりで撮影しましたが、フィルムシミュレーションによって、荒れた部屋が目立つこともなく、むしろきれいなボケの描写に感激しました」。

富士フイルムのカメラは、ビジュアルがフィルムライクでかっこいいな、とずっと憧れていましたが、なかなか手を出せずにいたので今回、初めて使う機会が訪れたことに、まず歓喜しました。そして実際X-T50を使ってみると、とくにダイヤルを回して設定を変えるところなど、フィルムカメラを愛用していた頃のわくわく感が思い出され、写真を撮ることの楽しさも蘇りました。

camera:X-T50 lens:XF50mmF1.0 R WR
フィルムシミュレーション: PRO Neg.Hi
「寝室の一角にて。愛猫の小雨は甘えたくなるといろいろなところにすりよってアピールしてくるのですが、このときは待ちくたびれた様子でした。この1枚は猫の表情や写真全体の色味が気に入っています。優しく広がるランプの光が、フィルムシミュレーションの色味と相まって、部屋の中の雰囲気がしっかりと表現できました」。

また、これまで写真は編集するのが当たり前だと思っていましたが、フィルムシミュレーションのおかげで、X-T50はシャッターを切ったときにはもう作品が仕上がっている。これには本当にびっくりさせられました。中判フィルムカメラを覗いたときのような、レンズ越しの世界にわくわくする感覚を久しぶりに味わうことができ、本当に感動しました。

そのうえ、フィルムカメラは一度フィルムを入れると1本撮り終わるまでフィルムを替えることができませんが、フィルムシミュレーションなら、撮りたい写真のイメージが見つかるまでダイヤルを回すだけで、フィルムを替えるように色表現を楽しめる。その点も、今回実感した魅力でした。シーンによってフィルムシミュレーションのダイヤルを回し、そのときに一番心ときめくものを使うのが、本当に楽しかったです。

camera:X-T50 lens:XF35㎜F1.4R
フィルムシミュレーション: PRO Neg.Hi
「真夏の公園で、木漏れ日が落ちる壁を背景に友人を撮影しました。コントラストと彩度は高めでありつつも、鮮やか過ぎない落ち着いた色味がお気に入り。PRO Neg.Hiでは光と影がそれぞれしっかり描写され、なおかつ双方がうまく調和することに感動しました」。

普段、プライベートで撮った写真を編集する時間がなく、写真は気に入っていても「色味を編集したいな」と思って、編集待ちの写真がどんどんたまっていっているという状況です。それが、X-T50で撮影すると、撮って出しの状態でお気に入りの写真に仕上がっている。そのため写真が埋もれてたまってしまうことがなくなりました。それどころか、娘の成長など自分だけのために撮影した記録写真でさえも、誰かに見せたくなる、作品のように仕上がるからすごいです。

My favorite フィルムシミュレーション

1:ACROS

色による情報が制限され、見せたい表情をクローズアップすることができるという理由から、被写体の表情を見せたいときは、モノクロのフィルムシミュレーション「ACROS」を使用しました。室内のオレンジ色のライトなど、被写体への色かぶりもなく統一感を持たせられます。

その上で、ACROSは光と影がとてもきれいで立体感があると感じました。薄暗い部屋で光遊びするのも楽しくて、すべての撮影で使いたくなるくらい、フィルムシミュレーションの中で一番のお気に入りとなりました。

camera:X-T50 lens:XF50mmF1.0 R WR
フィルムシミュレーション: ACROS
「光があまり入らない玄関で、窓からの光が愛猫の顔だけを照らし、まるでスポットライトを浴びているようでした。陰影がきれいだったのでACROSが絶対合いそうだなと思い選びました。光にあたったふわふわとした毛並みと光に透ける瞳がお気に入り。見せたくない部分は影になり、見せたいものがより際立つ、印象的な写真になりました」。

camera:X-T50 lens:XF50mmF1.0 R WR
フィルムシミュレーション: ACROS
「ACROSが使いたかったので愛猫に被写体になってもらい、暗い部屋で撮影。モデルも慣れたものですが、このときは私の長い撮影に飽き飽きしていて、その顔がまたかわいいなと感じました。黒の中にも何色もの黒があって、そのグラデーションがきれいに表現されています。繊細な黒の表現が本当に美しいです」。

2:PRO Neg.Hi

家でふと娘や愛猫を撮るときは、「PRO Neg.Hi」を使いました。PRO Neg.Hiはコントラストが強めで、光が少ない室内でもメリハリがつくのがお気に入りのポイントでした。

実は、フィルムカメラで撮影していたときに使っていたフィルムが、このPRO Neg.HiのベースになっているというPRO160NHだったんです。スナップ写真などにおいて、陰影がはっきりして立体感が出るのが魅力で、ずっと愛用していました。

PRO Neg.Hiは、フィルムPRO160NHならではのノスタルジックな色味はそのままに、デジタルらしい繊細な描写が表現ができる、すばらしいフィルムシミュレーションだと感じました。

camera:X-T50 lens:XF35㎜F1.4R
フィルムシミュレーション: PRO Neg.Hi
「真夏の日中、訪れた公園の池を撮りました。水面に緑が反射し、鴨がリフレクションの緑の中を泳いでいるようでした。滑らかな水面に波紋が広がり、美しかったです。光と影が強いシチュエーションだと影がつぶれたり光の部分が白飛びしたりしがちなところ、光と影のコントラストはしっかりあるのにそれぞれがうまく調和しています」。

camera:X-T50 lens:XF50mmF1.0 R WR
フィルムシミュレーション: PRO Neg.Hi
「『今日もかわいいね。大好きだよ』と毎日思いを伝えながら撮影しています。猫はきっと自分の名前を『かわいい』だと思っています(笑)。照明が柔らかくなって全体的にまとまりがある、彩度が低めな色味がお気に入り。彩度が低めでもコントラストは高く、メリハリはちゃんと出ているのも優れていると感じます」。

加藤 光さんが恋したフィルムシミュレーションの特徴

1:ACROSとは?

“世界最高の粒状性”と称賛されたモノクロフィルム「ACROS」がベース。豊かなシャドウディテール、高精細なシャープネスに加え、高感度では粒状性が増し、モノクロフィルムのような質感が得られます。

camera:X-T50 lens:XF50mmF1.0 R WR
フィルムシミュレーション: ACROS
「私が仕事をしているといつも近くでずっと見守ってくれている小雨。このときは、待ちくたびれた表情がかわいくて、また、窓からの光に照らされた光と影がきれいだと感じ撮影しました。光と影と立体感が美しく、白から黒へのグラデーションが絶妙です。ACROSで撮影した1枚目の写真なのですが、ドストライクでびっくりしました」。

2:PRO Neg.Hiとは?

プロ用ネガフィルム「PRO160NH」がベース。「PRO Neg.Std」よりも階調がやや硬く、屋外など凝ったライティングができないシチュエーションでのポートレート撮影に適しているフィルムシミュレーションです。フラットなライティング下でも適度な陰影が得られます。

camera:X-T50 lens:XF35㎜F1.4R
フィルムシミュレーション: PRO Neg.Hi
「光が少ない中で撮影してもコントラストがほどよくあり、メリハリが出るので、家で撮影する際にPRO Neg.Hiはぴったりでした。写真をガラリと変えるような強さもないため、割とどんなシチュエーションでも、写真をより印象的に仕上げてくれる万能さを実感します。ここをベースに、少しずつ自分なりの味付けをして楽しむこともできる、基本のフィルムシミュレーションだと感じます」。

プロフィール

加藤 光

フォトグラファー 東京都在住。一児の母。12年前に中判フィルムカメラを使い始めたことがきっかけで本格的にカメラを始める。趣味で投稿していたインスタグラムが話題となり、フリーのフォトグラファーに転向。企業の広告や海外観光局の撮影、雑誌の連載など、旅の撮影を中心に幅広く活躍している。

加藤 光さんが使用したカメラ

X-T50

軍艦部に「フィルムシミュレーションダイヤル」を新規搭載し、フィルムシミュレーションの選択がかつてないほど直感的に。ダイヤルを回すだけで最新の「REALA ACE」を含む、20種類のフィルムシミュレーションモードから選ぶことができる。表示倍率0.62倍で269万ドットの電子ビューファインダーは高い視認性に加え、色彩や明るさが調整されているので、仕上がりを確認しながらの撮影が可能。また、クラシカルなフィルムカメラを彷彿とさせるX-Tシリーズのデザインを継承しながらも、わずか438gへと軽量化(バッテリー・メモリーカード含む)。洗練されたデザインとボディのコンパクトさも相まって、持つ喜びを感じられる、どこへでも持ち歩ける理想的なカメラ。

FUJIFILM WEB

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