一瞬で昭和の時代にタイムスリップ
1973年に静岡県に開業したホテルニューアカオは、相模湾や市街地の夜景、熱海海上花火大会などの眺望が人気で、昔から結婚式や家族旅行でよく利用された大型ホテルでした。赤い“ホテルニューアカオ”のネオン看板が目印の、海の上に建つような好立地にあるオーシャンビューの客室が自慢の老舗ホテル。しかし、20階建て・全250室の本館は、2021年には48年の歴史に幕を閉じ、宿泊営業は終了となりました。
ホテルニューアカオの営業終了の発表は、コロナ禍の休業中にあったため、「もう一度ホテルニューアカオに泊まりたい」と思っていた人にとっては、叶わぬ夢となり、突然の発表に悲しむ人が多くいました。
宿泊営業が終了となったホテルニューアカオ本館は、現在は「HOTEL ACAO ANNEX」という施設名となり、芸術の発信拠点として活用されていて、アートイベントの会場や撮影ロケ地として使用されています。また、まるで昭和にタイムスリップしたような空間のホテルニューアカオは、撮影スポットとしても人気。ノスタルジー溢れる館内は、フィルムカメラとの相性が良いのでおすすめです。
通常は閉鎖して中には入れませんが、イベント時に開放され中に入ることができます。人気アーティストのミュージックビデオのロケ地にもなったことがあり、ファンの間で“聖地”にも。
なお、宿泊営業終了と同時に社名はホテルニューアカオから「アカオ・スパ&リゾート」に変更となり、同敷地内にあるロイヤルウイングは「HOTEL ACAO」に名称を変更し、宿泊営業は継続されています。
「PROJECT ATAMI」の拠点として古き良き魅力を現代に発信
熱海の魅力をアートにより再発見し、目に見える形にすることで、それを体験し楽しむために生まれたプロジェクト「PROJECT ATAMI(プロジェクトアタミ)」。アカオ・スパ&リゾートと東方文化支援財団が2021年3月から始めたプロジェクトで、ホテルニューアカオを拠点に熱海の魅力をアートで再発見できるプロジェクトです。年間に20組の芸術家がホテルニューアカオに1~2カ月間滞在して制作活動に打ち込む「ACAO ART RESIDENCE(アカオアートレジデンス)」や、公募で選ばれたアーティストの作品を熱海市内に展示する「ATAMI ART GRANT(アタミアートグラント)」などの取り組みが行われています。
これまで開催されたイベントでは、来場者が会場で撮影した写真などがSNSに多く投稿され、大きな話題となりました。イベントを機にホテルニューアカオの一部を見学することができるため、懐かしのホテルを見たいという人も多く参加します。
最新のイベント情報についてはPROJECT ATAMI 公式WEBでご確認を。
レトロで溢れる館内を切り取る
ローマ宮殿のような「メインダイニング錦」
シアター風のレストラン「メインダイニング錦」。ローマ宮殿を思わせるきらびやかな内装が特徴で、ホテルのシンボルとして愛されてきました。毎夜、生演奏によるディナーショーが開催され、非日常感を演出してきた空間です。
大きな窓ガラスからは奇岩「馬の背」と相模湾が望め、海の波が窓のすぐ下に見え大迫力の景色が広がります。
海に浮かぶダンスホール「サロン・ド・錦鱗」
メインダイニング錦と共にホテルニューアカオを象徴する「サロン・ド・錦鱗(きんりん)」。かつては昼間はカフェ、夜はバーラウンジとして使われ、時にはダンスホールとしても使われていた空間です。15階にあり、両サイドがガラス張りで海が一望でき、まるで海に浮かぶホール。宿泊者がドリンクと絶景を楽しみながらゆっくりと過ごしていました。
重厚なスワロフスキー社製シャンデリアや優雅でゴージャスなカーテンなど、まさに夢のような空間。柱にはブルーオニキスという天然石が贅沢に使用されています。
南国リゾートイメージの「カパルア・プール」
南国のリゾート気分を味わえる室内温水プールだった「カパルア・プール」。「アカオ温泉街」というゲームコーナーを抜けた先にあります。ホテルの営業終了に先立って、2018年に老朽化により営業を終了。現在アートイベントの会場として使われるときは、かつてはプールサイドに並んでいたであろうビーチチェアがプールの底に設置されていて、そこに座って目の前にあるプロジェクターを鑑賞するスタイルになったりも。
写真は、ACAO OPEN RESIDENCE開催中にプールに展示されたKeeenue氏のビーズ作品。
「カパルア」とはハワイにある地名で、カパルア・プールは熱帯のリゾートをイメージしたプールでしたが、今はもうそのような温度を感じることができません。その温度差がより寂しさや物悲しさを感じさせます。
鯉が泳いでいた料亭「黒潮」
蕎麦や丼ものを中心とした和食を提供していた料亭「黒潮」。かつてはここに水を張って池にし、大きな鯉が優雅に泳いでいたそう。
昭和ゴージャスな「インペリアルスイートルーム」
贅を尽くした「インペリアルスイートルーム」はメゾネットタイプ。吹き抜けの空間に面した大きな窓からは伊豆半島が一望できます。イベント開催中は会場として使われていて、普段あまり利用する機会のない豪華なスイートルームの中に入ることができます。建築好きやインテリア好きの人にとっては堪らないのではないでしょうか。2階には和室があり、将棋の羽生善治氏の名人戦の会場として使われたことがあります。
フロントやロビーなど、随所に昭和の香りが色濃く残る館内。熱海で長年親しまれ、愛され続けてきたホテルニューアカオ。その空気を肌で感じに訪れ、アートイベントと共に楽しんでみては。
旧ホテルニューアカオ(現HOTEL ACAO ANNEX)/静岡<日本>
旧ホテルニューアカオ 基本データ
<住所>〒413-8555 静岡県熱海市熱海1993-250
<TEL>0557-82-5151(ACAO SPA & RESORT株式会社)
<駐車場>あり
行き方・アクセス
<車>東名高速道路「沼津IC」または「御殿場IC」または「厚木IC」から約60分
<電車・バス>JR東海「熱海駅」から無料送迎バスで約10分
※無料送迎バスは予約不要。乗り場などの詳細は公式HPにてご確認を
※旧ホテルニューアカオは2023年夏に営業再開が予定されています。
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