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外出自粛期間中に得た気づき/市川渚の“偏愛道” Vol.13

市川渚<連載コラム>第1・第3日曜日更新
ファッションとテクノロジーの世界で活躍する
クリエイティブ・コンサルタント市川渚が
身の回りのモノ/コトへの強いこだわり=偏愛を語る!

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外出自粛期間中に得た気づき/市川渚の“偏愛道” Vol.13

2ヶ月ほどの外出自粛期間を経て、少しずつ社会も気持ちも外に向かい始めた昨今。振り返ってみると、失ったものももちろん色々あるけれど、この期間がなければ得られなかった新たな気づきや知識、経験もたくさんあったなあ、と思う。

私が今住んでいる家は、元々夫が独身の頃から住んでいた家だ。静かで環境はとても良いし、一緒に住むようになってから、相当私の好きなようにさせてくれているのにもかかわらず、私はいつまでたっても、なぜか、どこか、この家を“自分ごと”にできない節があった。

ところが、この自粛期間を経て、改めて「ここが自分が生きる場所なんだ」と思えるようになってきた。

良い機会なので、気になっていたところや、なんとなくやり過ごしていたことを放っておかずに、解決方法を考えて提案し、必要なものは自分で率先して購入して、改善するようにしてみたら、何だかこれまでに比べ、毎日が清々しい気持ちで過ぎていくのだ。一つひとつは、日々の生活のほんの小さな要素でしかないのだけれど。

これまで日々の忙しさにかまけて「気になるけど、まあ、いっか」なんて諦めたり、目を瞑ったフリをしたりしてきた部分が、生活空間のさまざまなところに少しずつ散らばっている。それが、結果的にこの家における自分の当事者意識をさらに削いでいたようだった。無責任だし、これは良くない。

例えば、最近購入した毎朝飲むコーヒーの豆を保管しておくストッカー。「ストッカー、欲しいなあ」と思いながらも、これまでは「まあ、買った時の袋をクリップで留めとけばどうにかなるから、ま、いっか」と目を瞑っていたのだけれど、先日ふと思い立って、以前からカードケースや文房具入れとして使っていた「SyuRo」のブリキ缶を揃えてみた。

以前から使っていたものたちに、コーヒー豆ストッカーが加わっただけなのだけれど、道具のラインナップを少し整えるだけで、毎朝コーヒーを淹れるのがさらに楽しくなった。豆を計る時に、まずは新入りのストッカーを眺めて、ニヤニヤ。淹れながら、お気に入りのドリッパーセットを見て、ニヤニヤ。もう1年くらい愛用しているIoT保温マグの「ember」を見てニヤニヤ。温めたミルクを注ぎながら、こちらもお気に入りのミルクジャグを見てニヤニヤ。

そんな感じで終始ニヤニヤしながらコーヒーを淹れたのちに向かう仕事スペースも、この期間にだいぶアップデートした。目立つのはマイクだろうか。

外出自粛が始まったくらいのタイミングで、これまで苦手だった1人喋りの修行を兼ねて音声プラットフォームの「stand.fm」を使い、毎日リスナーの方たちから頂いた質問に答えていく、という自分のチャンネルをスタートさせた。折角なら聴きやすい音で聴いてもらいたいなあということで、録音するための環境を整えたのだ。

マイクはPodcasterにはお馴染みの「Yeti」のマイク。真っ白なモデルは日本ではなかなか手に入らなさそうだったので、アメリカからオンライン購入したもの。マイクを吊るすためのマイクアームはどうしてもシルバーのものが欲しくて、ひたすらインターネットを隅から隅まで探した。現状(おそらく)世界で唯一購入可能なシルバーのマイクアームがこれである。アメリカのとあるメーカーのウェブサイトで見つけたのだが、日本へは配送できないとのことだったので、仕方なく転送サービスを利用して取り寄せた。必死である。音声絡みの機器は黒いものがほとんどなのだけれど、結果的にこんな感じで白とシルバーで統一することができた。

こだわりにこだわって必死で揃えた録音機材に囲まれ、Stand.fmは毎朝ニヤニヤしながら収録している。そして、それが配信を続けるモチベーションを保つ一助になっていることは間違いない。

ちなみに、この収録用マイク一式はZoomなどのオンラインミーティングでも活躍してくれている。今後はライブ配信などでも、どんどん使っていきたい。

そういえば、最近はこんなものも購入してみた。YouTuberさんにはお馴染み、ワイヤレスマイクシステムの「Wireless Go」とマイクの「Lavalier Go」。これらをカメラなどに繋ぐとワイヤレスで音声が録音できちゃうというもの。

これを使って、やると言いながらなかなか本格的に手をつけられていなかったVlogなどにも改めて挑戦してみたいと思っている。

マイクを色々揃えたのもそうなのだけれど、音声や映像を介してオンラインでコミュニケーションを取る機会が以前と比べて俄然増えたこともあって、音声絡みの機材やライブ配信など、結果的に音や映像に関する知識を新たに得ることになった。この自粛期間がなければ、そんなことも、おそらく学ぶ機会はなかったはずだ。音声や映像でのライブ配信も、今後積極的にやっていきたいところ。

やってみたいこと、やりたいことがますます増えたなあ。しかし、白いピンマイク、可愛い……。

なんでもない毎日を生きる中で、目に入るものにいちいちニヤニヤできる、そんな人生に幸福を感じないわけがない。人間って単純だ。この期間中に得た色々を大切にしながら、今後も生きていきたいものである。

市川渚

1984年生まれ。N&Co.代表、THE GUILD所属。
ファッションとテクノロジーに精通したクリエイティブ・コンサルタントとして国内外のブランド、プロジェクトに関わっている。自身でのクリエイティブ制作や情報発信にも力を入れており、コラムニスト、フォトグラファーやモデルとしての一面も合わせ持つ。

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