【市川渚の“偏愛道” Vol.14】 日常と非日常、旅と好奇心

市川 渚<連載コラム>

市川渚<連載コラム>第1・第3日曜日更新
ファッションとテクノロジーの世界で活躍する
クリエイティブ・コンサルタント市川渚が
身の回りのモノ/コトへの強いこだわり=偏愛を語る!

【市川渚の“偏愛道” Vol.14】 日常と非日常、旅と好奇心

最後に旅に出たのはいつだっただろう。思えばそんなに昔ではなく、1月は台湾、2月は北海道に行っていた。でも、なんだか必要以上に遠い昔のように感じる。

旅のおもしろさのひとつは、自分の日常から距離を置き、非日常へと足を踏み入れることで、途方もない数の自分の知らない“日常”を再認識することだと思っている。旅に出ると自分のちっぽけさを目の当たりにする、というようなことが良く言われるけれど、つまり、そういうことなのだと思う。

非日常に触れることで、日常生活だけでは狭窄していく思考が解き放たれる。今の生活が“非日常”だった2ヶ月前は、それを楽しむこともできたし、多くの新しい気づきをくれた部分も大いにある。だけど、その非日常が“日常”になってきたこともあって、そろそろ、また、いつもの“非日常”を求めて、旅に出たい。

しかし思い起こせば、我ながら結構ここまで面白い旅をしてきたなあと思う。
2014年行ったドイツ。ドイツといえば、ベルリンや古城巡りがメジャーな観光だと思うけれど、我々の目的はクルマだった。メルセデス、フォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェなど、日本でもよく見かけるこれらのクルマは全てドイツから来たものである。夫がクルマ好きだということもあって、色々話を訊いたりモノを見たりしているうちに、私もいつのまにかクルマに対して相当に詳しくなってしまった。

この時はポルシェの本社やメルセデスの工場があるシュトゥットガルトや有名なサーキットであるニュルブルクリンクがメインの目的地だった。ニュルブルクリンクはクルマ好きなら知らない人はいない場所。ここで"リングタクシー"というプロのレーシングドライバーの運転でサーキットを走るという体験をしたのだけれど、200km/h超えのクルマに乗ると、速さの怖さよりも、胃の中身が全部出てきそうになるということを初めて知った。レーサーはアスリートなのだ。写真は渋滞した高速道路のように見えるけれども、サーキットのスタート地点に並ぶ車である。

フランクフルトの空港でポルシェをレンタカーして、夫の運転でアウトバーン(ドイツの高速道路)を数時間走ってニュルブルクリンクに向かったその道中もとても良い思い出だ。黄緑色の草原と緩い丘が、どこまでも続く景色が新鮮で目に焼き付いている。日本の景色はほぼほぼ、背景が山になるから。

この旅、日本で例えれば、TOYOTA好きの外国人がTOYOTAの本社や工場へはるばる足を運ぶようなイメージだろう。道中、日本人を見かけることはほとんど無かったし、各スポットへの行き方、口コミやブログは日本語のものがほぼ見つからず、行くまでの準備にかなり苦労をした。でも、必死に調べて得た情報を元に出かけたこの旅は、これまでの人生でかなり思い出深いものになっている。

タイのサムイ島に行った時は「この地に来たからには島がどうなっているのか、一通り見たい!」という願望が最終日にむくむくと膨らみ、宿泊していたリゾート施設のスタッフには「えっ、本当にリゾートの外に行くの?」という顔をされつつ(おそらくお篭りをする人がほとんどなのだと思う)、道端の素朴なレンタル屋さんでスクーターを借り、Google Mapで気になったスポットに立ち寄りながら、島を一周した。

公園やローカルなコーヒー屋さんに立ち寄ってみたり、スーパーマーケットや虫がブンブンと飛び回るローカルな市場にも行った。ガソリンがガラス瓶に入れられて売っていたのには驚いた。

時間が許す限り、その土地の色んな顔を可能な限り見てみたい。そういえば、サムイ島だけでなく、国内も島に行った時は必ずと言っていいほど、その島を一周している気がする。できれば、風を肌で感じられる、自転車やバイクがベストだ。

韓国に行った時は、私の愛する「LINE」のキャラクター、ブラウンのグッズを扱うLINE FRIENDSのストアやカフェをひたすら巡った。ソウルには3、4店舗ストアがあるのだけれど(当時)、そのほとんどを巡ったと思う。

ブラウンはどこで見ても可愛いし、世界観作りに妥協が一切なく、立地によって異なるストアコンセプトなども店頭体験という意味でとても学びのある旅であった。その後、旅先にLINE FRIENDSストアがあった場合は必ず立ち寄るようにしている。

Apple Storeも同様に。出かける場所を決めたら、真っ先にGoogle Mapで「街の名前 Apple Store」で検索して、ピンを立てておくようにしている。

シアトルの「Living Computer Museum」で、人生で初めて手にした自分専用のパソコンである初代iMacに再会できたのもいい思い出だ。このミュージアム、かなり古い貴重なものから最近のものまで、実際に動いていて触れるコンピュータが大量に展示されていて、大人はノスタルジーに浸れるし、子どもはコンピューターの歴史や成り立ち、仕組みを体験しながら学ぶことができる。サッと観に行ってみようと思いきや、気づけば半日くらいこの場所で過ごしていた。シアトルに行く機会のある方は、ぜひ足を運んで欲しい。

後半は思い出トークのようになってしまったけれど、このGENICでも連載をされている「HOTEL SHE,」の龍崎さんもどこかで書いていた。私たち、そろそろ旅に出かけるべきなのではと思う。海外じゃなくても、気軽に行ける場所でいい。だけど、日常の範囲内では好奇心のやりどころが、明らかに足りない。

さて、どこへ何をしに行こうか。

市川渚

1984年生まれ。N&Co.代表、THE GUILD所属。
ファッションとテクノロジーに精通したクリエイティブ・コンサルタントとして国内外のブランド、プロジェクトに関わっている。自身でのクリエイティブ制作や情報発信にも力を入れており、コラムニスト、フォトグラファーやモデルとしての一面も合わせ持つ。

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