【市川渚の“偏愛道” Vol.17】香りの好みの変化

市川 渚<連載コラム>

市川渚<連載コラム>第1・第3日曜日更新
ファッションとテクノロジーの世界で活躍する
クリエイティブ・コンサルタント市川渚が
身の回りのモノ/コトへの強いこだわり=偏愛を語る!

【市川渚の“偏愛道” Vol.17】香りの好みの変化

少し前、ひさびさに知人に会う約束があり、外に出る準備を整えている時だった。着替えて、メイクを終え、髪の毛を整え、仕上げにずっと愛用している香りの香水をシュッと自分の身体に吹いた瞬間、違和感を感じたのだった。あれ? 全然、しっくりこない。

これまで好きな香りには、明確に一貫した共通要素があった。フィグやベルガモットのような果実の香りに、ウッディ、スパイス系の混ざったちょっと複雑な香りがそれで、香水は似たような系統のものを濃厚さや甘さごとに何本か揃え、季節によって使い分けてきたのだけれど、この自粛期間を経て、それら全てをなんとなく受け入れられなくなってしまった。部屋の香りも同様で、独身時代から10年近く同じリードディフューザーを愛用していたのだけれど、なんだかそれもしっくりこなくなってしまった。

一方、無意識に欲した香りが、生成された香水などのものではなく、森や草木、花などといった自然の香りだ。これまで自然の香りを部屋に漂わせたい、なんて思ったことがなかったので、驚いた。外に出られず、旅にも出られず、東京の自宅にこもりきりの生活で、自然との触れ合いが足りないなと感じてはいたけれど、それを香りで埋めていこうと無意識に考えたのだろう。

というわけで、最近は自宅にいながらにして、森を中心とした自然の香りを楽しめる香り関連のアイテムを収集している。
抗菌、防虫成分が含まれていて、ジメジメとした季節にぴったりなのが、青森に植生している樹木、「青森ヒバ」から取れるヒバ油を使った香りグッズたち。飾り気ない森そのもののみずみずしい香りを楽しめるのが魅力だ。

青森ヒバを細かく切った「Cul de Sac-Japon」のヒバチップは、ガラスの容器に入れたものをバスルームとお手洗いに、麻袋に詰めたものをタオルなどのバスリネン置き場に配置している。

友人が作ったヒバの蒸留水はスプレー容器に入れて、寝具やソファなど臭いが気になる箇所にスプレーして消臭兼香りのスプレーとして使っている。左のヒバ精油は香りが弱くなったヒバチップにかけたり、湯を張った浴槽に数滴垂らせば、お風呂で森林浴気分が味わえて最高である。

1日の始まりには、まず窓を開けて部屋の空気を入れ替えたのちに「BAUM」の「AROMATIC ROOM SPRAY」を部屋にスプレー。私が使っているのは「WOODLAND WINDS」という種類で、爽やかな青々とした森の風のような香りがする。他にも2種類香りがあって、深い静寂の森で瞑想する香りをイメージした「FOREST EMBRACE」という香りも気になっている。

ちなみに、少し前に私のInstagramアカウントで森の香りのおすすめについて伺ったところ、複数の方からおすすめいただいたのが青森ヒバと「athletia」の「スイッチングアロマルームミスト - GREEN RAY」。これはかなり森っぽい香りらしい。今、持っている「FEEL THE WIND」を使い終えたら、購入してみようと思っている。FEEL THE WINDは森というよりも海と太陽の爽快感をイメージした香りらしく、私は朝のシャワー時にシャワールームにスプレーする形で使っている。おめざにおすすめ。

ルームスプレーはリードディフューザーのように、部屋を香りで満たしてくれるわけではないけれど、時間帯や天気、気分によって香りを変えることができるところが良いなあと、最近その存在を見直した感じ。

アメリカ西海岸各地の山や森、砂漠の植物から抽出した香りを使った「Juniper Ridge」のお香も最近のお気に入り。「キャンプファイヤーインセンス」という商品名の通り、大自然の中で焚き火をしているような気分に浸れる。

少し陽が傾き風が心地よい夕方に、またはしとしと雨の日に雨音を聞きながら、ゆらゆら揺れる煙と共に香りに身を委ねて、ひと休憩するのが最近の愉しみのひとつだ。

冒頭に書いた、自分で纏う香水に関しては、人からおすすめいただいたり、自分で購入してみたりして、しっくりくるものを探している最中なのだけれど、これまで苦手だったウッディ系、そしてフローラル系の香りにも閃きを感じる自分がいて、改めて香りに対する好みの変わりっぷりに驚いている。

ここ数ヶ月の生活スタイルの変化の中で、これからも大切にして生きていきたいと実感したのが「心地よさ」というキーワードである。身の回りに置いておいて心地よさを感じるものに囲まれて暮らしたいし、無理せず笑って過ごせる人たちと時間を共有したい。

考えてみると、これまで好きだった香りは、コンフォートゾーンである家から外に出て、1人の人間として社会で戦うモードに入るためのスイッチのような存在だったのかなと、ふと思った。「無理にスイッチを入れようとせずに、より自然体で日々を送ることが、心地よく生きることにつながるのでは」香りの好みの変化は、そんな自分自身からのメッセージなのかもしれない。

市川渚

1984年生まれ。N&Co.代表、THE GUILD所属。
ファッションとテクノロジーに精通したクリエイティブ・コンサルタントとして国内外のブランド、プロジェクトに関わっている。自身でのクリエイティブ制作や情報発信にも力を入れており、コラムニスト、フォトグラファーやモデルとしての一面も合わせ持つ。

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