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女主人の魔女活/龍崎翔子のクリップボード Vol.46

龍崎翔子<連載コラム>第2木曜日更新
HOTEL SHE, OSAKA、
HOTEL SHE, KYOTOなど
25歳にして5つのホテルを経営する
ホテルプロデューサー龍崎翔子が
ホテルの構想へ着地するまでを公開!

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女主人の魔女活/龍崎翔子のクリップボード Vol.46

いつもROIだのLTVだのを考えて過ごしていたからか、いつの間にか思い切り非効率的な営みを愛でるようになった。もはや、単位時間あたりの収益効率を考えなくていいということが私にとっての最大の贅沢行為なのかもしれない。

ホテルの運営というのは、いつの間にか仕組み化され収斂されて効率化されていってしまうものなのだけれど、もてなしの生々しさを保つためには、つねにあれこれ思索を巡らせてどのようにお客様をより楽しませることができるかを考え、実際に行動していくことが大事だとふと思うようになった。わたしはそれを「主人力」だと思っていて、同時に極める際限のない営みでもある。

宿の女主人が、お客様をもてなすために地域の空気感を宿泊体験に織り込もうとすると、自ずと魔女活に手を出すことになる。

雪解けの北海道の白樺から樹液を採取してコーヒーを淹れる。プルーンをホワイトリカーに漬けて果実酒を作る。ラベンダーをアランビック蒸留器で蒸溜してリフレッシャーを作る。冬には生姜とスパイスを煮込んでジンジャーエールを作る。層雲峡の土を粘土に混ぜ込み、陶器の箸置きを焼く。白山の森林資源からエッセンシャルオイルを採取し客室で焚く。近所の銀木犀を摘ませてもらって桂花陳酒と砂糖漬けを作る。

全てのお客様に楽しんでいただけるわけじゃないし、一体何の役にたつのか半信半疑になりながら作る。でも、快心の出来のとき、それをゲストに振る舞うのが楽しい。そんな原始的でささやかな、そして生々しいもてなしが好きだから、魔女活をするのかもしれない。

今は春が来るのを待って、ホテルの屋上で養蜂することを心待ちにしている。叶うならハーブを育てて虫除けスプレーを作ってお部屋に置きたいし、なんなら蒸溜した精油でルームフレグランスも作れるだろう。そうして妄想は止めどなく広がっていく。

みんなが忙しそうにしている傍ら、わたしは花を摘み、砂糖漬けにしたり煮込んだりする。一見して非効率の極みだけれど、この時間の積み重ねが宿の味になると信じている。

龍崎翔子

2015年、大学1年生の頃に母とL&G GLOBAL BUSINESS, Inc.を立ち上げる。「ソーシャルホテル」をコンセプトに、北海道・富良野に『petit-hotel #MELON』をはじめとし、大阪・弁天町に『HOTEL SHE, OSAKA』、北海道・層雲峡で『HOTEL KUMOI』など、全国で計5軒をプロデュース。京都・九条にある『HOTEL SHE, KYOTO』はコンセプトを一新し、2019年3月21日にリニューアルオープン。

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