【龍崎翔子のクリップボード Vol.25】生活感のある部屋

龍崎翔子<連載コラム>

龍崎翔子<連載コラム>第1・第3木曜日更新
24歳にして5つのホテルを経営する
ホテルプロデューサー龍崎翔子が
ホテルの構想へ着地するまでを公開!

【龍崎翔子のクリップボード Vol.25】生活感のある部屋

友達の住んでいるお部屋にお邪魔するのが好きだ。たとえお邪魔しなくても、SNSで写真を眺めるだけで楽しい。ファッションが人の内面の一番外側なのだとしたら、お部屋は人の内面が身体を飛び出して3次元空間に配置されている場所とでも言おうか。その人の世界に潜り込んでいるような感覚で、ますますその人を好きになる。

ホテルを作っている人に部屋に来てもらうのは恥ずかしい、というようなリアクションをされることもある(ごめんね…)けれど、インテリアがどうこうなんて正直全然興味ない。その人の趣味嗜好や性格、生活の片鱗が散らばっていて、五感でその人の存在を感じられる部屋がいい。

古今東西の音楽を愛する東大生のアパートに立ち込めるお香の香り、ファッションフリークな女友達の部屋の床に散乱する洗濯物の山、DTMerの家の無機質な壁紙に貼られた色とりどりのポスターと部屋いっぱいの機材、倉庫の上階に住む芸術家のリビングに置かれた手作りのソファとクッション。美しいかとか整っているかとか清潔かとかよりも、家主の精神性に触れた時に言葉にできない感動と愛を感じるのである。

アメリカのポートランドにマクメナミンズというホテル&レストランのブランドがある。廃校になった小学校や、閉鎖された精神病院、幽霊の出る娼館、発展場として栄えたホテルといった曰く付き物件を、ワイナリーやブルワリー、レストラン、ホテルにリノベーションしているのである。

ポートランド市民なら知らない人はおらず、休日のたびに多くのゲストでごったがえすマクメナミンズ。老若男女に愛される普遍的な空間かと思いきや、実は独特な美的感覚で有名。
黒ウサギに給水塔、精神病患者といったモチーフを多用した禍々しい奇妙なデザイン。これは創業者であるマクメナミンズ兄弟のテイストなのだという。

モノからコトへ~と言われるようになったけれど、本質的には「ヒト」消費になったのだと思う。いつから、広く浅くか狭く深くの二択だけになったのだろう??広く深く人々の心を捉えるもの、それは人の精神、人格なのだと思う。

HOTEL SHE,に泊まってくださったゲストから、「そこにいないはずの龍崎さんがすぐそばにいるように感じられた」という感想をいただくことがある。デザインが洗練されているとかよりずっとずっと大事なこと。人格の投影された空間をこれからも作りたい。

龍崎翔子

2015年、大学1年生の頃に母とL&G GLOBAL BUSINESS, Inc.を立ち上げる。「ソーシャルホテル」をコンセプトに、北海道・富良野に『petit-hotel #MELON』をはじめとし、大阪・弁天町に『HOTEL SHE, OSAKA』、北海道・層雲峡で『HOTEL KUMOI』など、全国で計5軒をプロデュース。京都・九条にある『HOTEL SHE, KYOTO』はコンセプトを一新し、2019年3月21日にリニューアルオープン。

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