【龍崎翔子のクリップボード Vol.10】ジェンダーレスなサウナ

龍崎翔子<連載コラム>

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23歳にして5つのホテルを経営する
ホテルプロデューサー龍崎翔子が
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【龍崎翔子のクリップボード Vol.10】ジェンダーレスなサウナ

サウナが好きだ。

わざわざサウナーを名乗るつもりは全くないのだけれど、サウナを研究するために本場フィンランドにまで飛んでいるので決してビギナーではないと思ってもらっていい。観光ホテルの温泉でも、近所の古びたサウナでも、広大なスーパー銭湯でも、私の入浴時間の大部分を占めるのが、そう、サウナなのである。

以前からサウナはそれなりに楽しんでいたのだが、本格的に目覚めたきっかけは北海道にいた19歳の時だった。零下十五度を優に下回る寒い冬の夜、私は近くのホテルの温泉に遊びに行っていた。そのホテルのサウナは屋外にあって、氷点下の世界と100℃の世界を往復しているうちに私はホワイトアウトしてしまった。身体中を駆け巡る究極の快感。私はこのサウナトランスを若くして体得してしまったのだった。

とはいえ、別にサウナオタクになったわけではなく、水風呂は何度が最高だの、ロウリュとアウフグースの違いだのには全く興味がない。なぜ私がサウナに心惹かれるのか、それを言語化できたのはフィンランドにサウナ巡りに行った時だった。

2月のフィンランドは、どれだけ厚着をしていても凍えるように寒い。でも、サウナに入った後の火照った身体なら、水着のまま氷点下に飛び出しても涼しいくらいで、雪原に突っ伏しても身体の表面がひんやりと冷えて心地よい。極寒の真冬の深夜の、厳しすぎる寒ささえも、サウナがあれば全身で味わうことができる。

本場のサウナは湖や海にダイブするのがお決まりのようで、氷の張ったバルト海にも何度も飛び込んだ。今まで体感したことのないほどの肌を突き刺す痛みも、幾度となく飛び込むうちに快感に変わり、私は北欧の海の一部となって氷とともに漂った。

旅の醍醐味の1つが“光”だとするなら、空気と水も間違いなくそれに並ぶと思う。サウナがあれば、全神経を張り巡らせ、肌の感覚を研ぎ澄ませて、その土地の空気や水と一体になることができる。だから、サウナは素晴らしいのだと思う。

もう1つ、フィンランドで面白かったのは、水着で入れる混浴のサウナがとても多かったこと。日本のサウナは男性限定の店が多く、女性が楽しめる場所が限られている。また、せっかくカップルや友達グループとサウナに行っても、途中で男女で別れてしまい、孤独な時間になってしまうことも多い。第一、ジェンダーの線引きをすることがナンセンスなこの時代、赤でもなく青でもない、パープルなサウナがあってもいいんじゃないかと思う。

BARがあって、音楽がかかっていて、修行みたいに耐え忍ぶんじゃなくて、水着で仲間とワイワイ喋りながら入れるサウナ。そんなジェンダーレスなサウナを作ることを企んでいる。

【龍崎翔子のクリップボード】バックナンバー

Vol.09 洗いざらしのリネン

Vol.08 ローカルの光

龍崎翔子

2015年、大学1年生の頃に母とL&G GLOBAL BUSINESS, Inc.を立ち上げる。「ソーシャルホテル」をコンセプトに、北海道・富良野に『petit-hotel #MELON』をはじめとし、大阪・弁天町に『HOTEL SHE, OSAKA』、北海道・層雲峡で『HOTEL KUMOI』など、全国で計5軒をプロデュース。京都・九条にある『HOTEL SHE, KYOTO』はコンセプトを一新し、3月21日にリニューアルオープン。

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