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洗いざらしのリネン/龍崎翔子のクリップボード Vol.09

龍崎翔子<連載コラム>第2木曜日更新
HOTEL SHE, OSAKA、
HOTEL SHE, KYOTOなど
25歳にして5つのホテルを経営する
ホテルプロデューサー龍崎翔子が
ホテルの構想へ着地するまでを公開!

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洗いざらしのリネン/龍崎翔子のクリップボード Vol.09

ぴっちりしたリネンよりも、クタクタのリネンにくるまるのが好きだ。


ホテルに泊まった時に、布団がマットレスの下に折り込まれているようなベッドだったりすると、見栄えはいいものの中が窮屈すぎて足で布団を何回か蹴って外に引きずり出してからやっと眠りにつける、なんてことは毎度のこと。綺麗にベッドメイキングされ、足元にフットスローが上品に乗っている写真を予約サイトやホームページで見かけるたび、あの窮屈な夜を思い出す。

自宅のベッド

そんな個人的な好みも相まって、私の家のリネンはいつも洗いざらしで、さらりとしたコットンに包まれた布団はいつもちょっと行儀悪くベッドの上に乗っかっている。1DKの決して広くない部屋の一番陽当たりのいい窓際をベッドが陣取っていることもあって(おかげでドアを開けてすぐベッドが登場する間取りになっている)、白くくすんだリネンに朝日が射し込む光景は日常生活の中でも最高レベルに美しい。

HOTEL SHE, OSAKAのキービジュアル撮影の時のオフショット

同じような感覚で、ホテルのベッドの写真もシワが寄っている状態で撮影することが多い。もちろん、客室を清掃する時は丁寧にベッドメイキングをするのだが、instagramなどに載せたりする写真は、なるべく綺麗すぎるものより、生活の気配を感じるような、ベッドの温度や柔らかさを感じるようなものの方が無性に魅力的に感じるのである。

考えてみれば、1日の1/3近くをすごすベッドは、人間にとっての巣だと言っても過言ではないと思う。ホテルのベッドが旅先の巣であるとするならば、ぴっちりとベッドメイキングされたベッドは人の気配を感じない代わりに、自分の空間でもないような息苦しい感覚に陥ってしまうのだと思う。さらに言えば、夜に疲れて辿り着いた見知らぬ空間への緊張感を象徴してしまっているように感じる。一方で、しわくちゃのリネンは寝起きの無防備な姿と、そこでの安心感を象徴している。たとえかりそめであったとしても、自分の巣だと感じれる空間となっているのだと思う。

モデル:@appleapple0403

優しい朝日の射す、洗い立てでクタクタの、生活の気配のあるリネン。それこそが旅先の朝に安らぎをもたらす存在なんじゃないかなと思う。

【龍崎翔子のクリップボード】バックナンバー

Vol.08 ローカルの光

Vol.07 スローなジャンクフード

龍崎翔子

2015年、大学1年生の頃に母とL&G GLOBAL BUSINESS, Inc.を立ち上げる。「ソーシャルホテル」をコンセプトに、北海道・富良野に『petit-hotel #MELON』をはじめとし、大阪・弁天町に『HOTEL SHE, OSAKA』、北海道・層雲峡で『HOTEL KUMOI』など、全国で計5軒をプロデュース。京都・九条にある『HOTEL SHE, KYOTO』はコンセプトを一新し、3月21日にリニューアルオープン。

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