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ローカルの光/龍崎翔子のクリップボード Vol.08

龍崎翔子<連載コラム>第2木曜日更新
HOTEL SHE, OSAKA、
HOTEL SHE, KYOTOなど
25歳にして5つのホテルを経営する
ホテルプロデューサー龍崎翔子が
ホテルの構想へ着地するまでを公開!

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ローカルの光/龍崎翔子のクリップボード Vol.08

もしかしたら、旅先で一番楽しみなのはそこにしかない光かもしれない、と最近思うようになった。同じ太陽から地球上に降り注ぐのに、緯度や気候や地形によってわずかに違う光となり、それぞれ違った風合いに眼に映る。その土地に射し込む光と、それによって縁取られたモノや人々、風景を見るために旅をしているんじゃないかと最近は思うのである。

そのことに最初に気づいたのは、18歳の頃、大学受験を終えて家族でオーストラリア旅行に行った時だった。いつもと同じカメラで何気なく切り取った光景が今までにないほど鮮やかで、空の色や肌の陰影さえも日本とは違って見えた。

オーストラリアは乾燥していて空気中の塵が少なく、コントラストが高くくっきりと見えるのに対し、日本は湿度が高く霞みがかって、輪郭が柔らかに見えるという。同じ国の中でも、街によって光は違っている。京都ならどんよりとしていて、くすんだ暗い色が似合うし、瀬戸内なら乾燥していて、柔らかい光が降り注ぎ、淡い色が合う。沖縄なら湿った空気に高い陽射し、芳醇な光が射して、ビビッドな色合いが映えるだろう。

瀬戸内の光

色の見え方は、太陽光の波長によって変化する。赤道に近づくほど赤みが強くなり、赤道から離れるほど青みが強く見える特性があるため、緯度によって、見えている色味が変わっているのだそう。

日常とは違う光を受けて新しい一面をのぞかせるものもあれば、その土地の光を浴びるからこそ美しく見えるものもある。

さりげない光景に美しさを見出すことが旅の醍醐味じゃないかと感じるのである。

沖縄の光

こんな話を聞いたこともある。北欧の冬は日照時間が短く、街はグレー一色の世界になってしまう。だからこそ、そこに住む人々は光を求め、北欧インテリアに欠かせないダイナミックな照明器具が生み出されたり、陰影の美しい空間が発達したり、光を柔らかく拡散するマットな白壁の建築が多く作られたりしたのだという。また、暗い冬でも家の中で明るく過ごすために、マリメッコをはじめとしたカラフルなファブリックアイテムが広く受け入れられたのだそう。

フィンランドの光

南欧の白い家が強い日差しを反射させて気温を下げるためだったりとか、アメリカの室内が暗いのは虹彩のメラニン色素が薄い人々にとって居心地のいい暗さだからだとか…

その街に降り注ぐ光、ただそれだけによって建築や街並み、ファッションや生活習慣に至るまでの独自の文化が育つのである。

旅先ではそんな歴史に想いを馳せながら、ローカルの光を浴びたい。

【龍崎翔子のクリップボード】バックナンバー

Vol.07 スローなジャンクフード

Vol.06 インダストリアルセクシーな街並み

龍崎翔子

2015年、大学1年生の頃に母とL&G GLOBAL BUSINESS, Inc.を立ち上げる。「ソーシャルホテル」をコンセプトに、北海道・富良野に『petit-hotel #MELON』をはじめとし、大阪・弁天町に『HOTEL SHE, OSAKA』、北海道・層雲峡で『HOTEL KUMOI』など、全国で計5軒をプロデュース。京都・九条にある『HOTEL SHE, KYOTO』はコンセプトを一新し、3月21日にリニューアルオープン。

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