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セクシーなプールサイド/龍崎翔子のクリップボード Vol.01

龍崎翔子<連載コラム>第2木曜日更新
HOTEL SHE, OSAKA、
HOTEL SHE, KYOTOなど
25歳にして5つのホテルを経営する
ホテルプロデューサー龍崎翔子が
ホテルの構想へ着地するまでを公開!

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セクシーなプールサイド/龍崎翔子のクリップボード Vol.01

8歳の頃、家族でアメリカ横断旅行をしていた時、ラスベガスの郊外でメキシコ人家族の経営するモーテルに泊まった。
そのモーテルから、ラスベガス中心のホテル群に向かう途中、家族に手を引かれながら横目で見送ったプールで、私より少し年上の数人の白人の男の子たちが、プールサイドから飛び込んで高い水しぶきを上げていた光景が、まぶたの裏に残っている。

決して泳ぐのは得意ではなく、水泳の授業ではいつも一番下のグループに振り分けられるほどのレベルだが、ハワイでダイビングをした時は、いつまでもいつまでも海の中にいて、現地の人に”fish girl”と呼ばれたことがある。
水のある空間が好きなので、前世はきっとクラゲか何か水生動物だったのだろう、と自分では思っている。

そんなわけで、クロールや平泳ぎはさっぱりだが、浮き輪でプールにぷかぷかしたり、仰向けで水に浮かんで空を眺めたりする時間は、昔からとても好きだった。
サメが泳いでいたり、突然高波が来たりと、ふとした時に命を奪われるかもしれない大海原とは違い、人工的に作られたプールには波もなく、身体を傷つけるものもなく、水に飲み込まれてしまうこともない。

旅に出るとなれば、プールのついているホテルを選び、必ず水着を持っていく。
ホテルのプールには、無機質なフィットネスプールもあれば、都会のオアシス然としたラグジュアリーなプールも、地中海のような白亜のプールも、タイル貼りのソーキングプールも、リゾートによくあるロゴが底にプリントされているプールも、クラシカルな様式美のプールもある。
一口にプールといえど、ひとつひとつ味わいが違えば、楽しみ方も違う。

なかでも、ここ数年、プールの醍醐味はプールサイドにあると感じることが増えた。プールサイドで朝食を食べて、デッキチェアで日光浴をして、暑くなったらプールに飛び込んで、夜はビールを飲みながら星を見る、そんな1日を過ごすのが私にとっての最高の贅沢。
当たり前の日常の営みが、プールサイドでは非日常な体験に様変わりする。do(何をするか)ではなく、be(どう在るか)が変わるだけでこんなにも生活が豊かになるのかと、プールサイドでデッキチェアに寝転ぶたびに実感させられる。

その様には、ホテルに通ずるものがあるとしばしば思う。ホテルで営まれる行為は日常生活の延長線上に過ぎないが、ホテルという空間が”当たり前”を特別なものにする。

ホテルの最も原始的な形のひとつに、オアシス都市の隊商宿があると思う。砂漠の片隅に湧きいでた泉が、渇き、疲れた人々を癒すのだとしたら。プールもまた、現代の生活に疲れた人々を潤す泉なのだと思う。

まだ、プールのついているホテルを手がけられていない。日本ではプールに入れるシーズンが短いし、宿の規模もある程度必要になるので、採算を合わせるには多少の世知辛い現実を乗り越えないといけない。でも、日本にはまだまだセクシーなプールが少ない。そして、プールサイドでチルアウトできるプールは、ホテルにしか存在しない。

合理性のその先へ、ロマンを掻き立てる、最高にチルアウトなプールを作りたい。

龍崎翔子

2015年、大学1年生の頃に母とL&G GLOBAL BUSINESS, Inc.を立ち上げる。「ソーシャルホテル」をコンセプトに、北海道・富良野に『petit-hotel #MELON』をはじめとし、大阪・弁天町に『HOTEL SHE, OSAKA』、北海道・層雲峡で『HOTEL KUMOI』など、全国で計5軒をプロデュース。京都・九条にある『HOTEL SHE, KYOTO』はコンセプトを一新し、3月21日にリニューアルオープン。

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