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天国への階段/龍崎翔子のクリップボード Vol.49

龍崎翔子<連載コラム>第2木曜日更新
HOTEL SHE, OSAKA、
HOTEL SHE, KYOTOなど
25歳にして5つのホテルを経営する
ホテルプロデューサー龍崎翔子が
ホテルの構想へ着地するまでを公開!

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天国への階段/龍崎翔子のクリップボード Vol.49

毎年の新年の抱負は、今年こそ雪山を滑る、になりがちな傾向がある。富良野スキー場の麓で事業を始めた私でさえも、歳を重ねるにつれて、趣味と予定と馬と金銭感覚が合う人がどんどん減り、みんなでスノボ行こうだなんてちょっとしたファンタジーに感じられるようになっている。そんなわけで、たとえ雪山を滑れなくてもせめて今年こそは色々な宿に泊まりたいと、そう願う年始になるわけである。

ホテルをやっているくせに宿に泊まっていないってどういうこと、となるのが目に見えているが、もちろん通常よりははるかに出張の頻度も多ければホテルに宿泊する機会も多い。それに、ホテルに関する知識や情報も勝手に集まってくるからGoogle マップのピンはいつもいっぱいだし、素敵なホテル紹介バトルでは負け知らずだと自負している(その素敵なホテル情報をあまり世の中に向けて発信してはいないのだけれど、その話はまたの機会に…)。

ただ、いちホテル好きではなく、ホテル経営者となると話が変わってくる。まず、ホテルは基本的に24時間365日年中無休で、常に誰かが働いている。その状況下で休みをとってお出かけをして…というのはなかなか良心に耐え難い。それに、全国各地に自分のホテルやアパートがあるわけなので、わざわざ泊まりに行く必要がない。大体、仕事が出張だらけなので、休みの日まで移動をして非日常体験をしては疲労で身体がいかれてしまう。もちろん、色々な素敵な体験をしてサービスに還元するのも私の仕事なのでそうこう言ってはいられず、そういうわけで、強い意志を持たない限り色々な宿を巡るということはなかなかに難度の高い抱負なのである。

月に1度、願わくば2度はホテルに泊まるという志を胸に、秘蔵の行きたいホテルリストを眺めて、どこに行こうかとあれこれ思いを巡らせる時間。私のリストはすでに600軒近く溜まっていて、おそらく向こう数年で消化するのは不可能に違いない。和歌山にしようかな、でも淡路島もいいぞ、唐津や長崎も捨て難い…ここの朝食が美味しそう、ここのサウナは良さげだぞ、ここの景色を見ながら昼寝したいな…という形で1回の宿泊にあらゆる想像が浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返し、脳汁が分泌され続ける。

ホテルを予約するたびに思う。私は多分、ホテルに泊まることそのものよりはるかに、ホテルを選ぶのが好きなのだと。あらゆる理想郷の可能性に浸り、心の中で旅をする。選んでしまったら最後、たったひとつの自分の意思決定を信じて宿泊の時が訪れるのを待つのみになってしまう。時と場合によっては期待外れで失望したりもする。だから、ホテル選びは楽しい。ホテルが天国のような場所なのだとしたら、ホテル選びは美しい希望を胸に天国への階段を駆け上がるような時間なのだから。

龍崎翔子

2015年、大学1年生の頃に母とL&G GLOBAL BUSINESS, Inc.を立ち上げる。「ソーシャルホテル」をコンセプトに、北海道・富良野に『petit-hotel #MELON』をはじめとし、大阪・弁天町に『HOTEL SHE, OSAKA』、北海道・層雲峡で『HOTEL KUMOI』など、全国で計5軒をプロデュース。京都・九条にある『HOTEL SHE, KYOTO』はコンセプトを一新し、2019年3月21日にリニューアルオープン。

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