使い方は出来上がってから考える
紀尾井清堂は2021年に竣工した地上5階建ての、鉄筋コンクリート造(一部プレストレストRC造、鉄骨造)の建物です。建築家・内藤廣(ないとうひろし)氏による設計で、用途は未定という謎に包まれた建物です。
内藤廣氏は、「海の博物館」や「牧野富太郎記念館」、「周南市立徳山駅前図書館」などを手掛けた建築家で、表層的な造形よりも構造を重視する建築家として知られています。
紀尾井清堂の発注者は企業研修などを行う一般社団法人「倫理研究所」。かつて内藤廣氏が「倫理研究所 富士高原研修所」を手掛けたことがあります。
倫理研究所は内藤廣氏に紀尾井清堂について「使い方は出来上がってから考えるので思ったように造ってください」とリクエスト。このような依頼は初めてだった内藤廣氏は、「パンテオンのような常識に縛られない魂を揺さぶられるようなもの」をテーマに設計しました。
2階〜5階部分は4層の吹き抜けになっていて、階段で各フロアが繋がっています。真っ直ぐ伸びた階段は、それぞれ異なる向きにかかっています。
内部は木がふんだんに使われていて、温かみのある空間。
天井には開閉式の9個の深い穴があり、そこから光が差し込みます。紀尾井清堂は、明かりを取り入れるための窓は基本的にはなく、自然光はこの天井からのみ。
この穴は、底辺は四角形ですが、上に行くにつれてなだらかな円形になるという不思議な形で、見ていると穴に吸い込まれそうな感覚になります。
一歩足を踏み入れると、都会にいることを忘れ、日中は太陽の動きとともに移ろう光だけを感じられる空間となっています。
コンクリート+ガラスの宙に浮いたキューブ
内部とは全く違った雰囲気の外観。4本の柱によって、15m角のコンクリートキューブが持ち上げられ、まわりはガラスの箱で包まれています。1階の壁はガラスのみなので、遠くから見るとキューブが浮いているように見えます。
外部に飛び出した階段は、3階と4階を結び、コンクリートとガラスの間に設置されています。
ガラスとガラスの間に5cmの隙間があるのが特徴。
「奇跡の一本松の根」展
紀尾井清堂の1階部分は開かれたピロティになっていて、令和4年3月11日~令和5年2月9日(予定)の期間で「奇跡の一本松の根」展が開催されています。
かつて7万本あった陸前高田の高田松原の松。東日本大震災で壊滅的な打撃を受けながらも奇跡的に1本だけ残ったという「奇跡の一本松」の根。
根が放つ強い存在感と生命力に、大きな感銘を受けることでしょう。遠くなりつつある被災地に思いを馳せるきっかけにも。
「奇跡の一本松の根」展へはサイトでの事前の予約が必要です。また、展示会参加者は2階〜5階部分を自由に見学することができます。
ピロティの一角には、奇跡の一本松の写真が展示されており、イサム・ノグチ氏の「AKARI」で照らされています。
また、四隅にはコンクリートキューブを支える柱が。根本は四角形で、上部に行くにつれ六角形になっているという不思議な形です。
床や壁は、島根県石見で石州瓦を焼く時に使われる棚板を再活用し、サイズや表情がバラバラの素材を現場で組み合わせて仕上げられています。通常は捨てられてしまう廃材を使用しているため、荒々しい感じが出ていて、1階フロアは洞窟のような雰囲気となっています。
紀尾井清堂(きおいせいどう)/東京<日本>
紀尾井清堂 基本データ
<住所>東京都千代田区紀尾井町3-1
<駐車場>なし
行き方・アクセス
<電車>JR東日本「四ツ谷駅」(麹町口)から徒歩で約10分
東京メトロ「麹町駅」(2番出口)から徒歩で約5分
東京メトロ「赤坂見附駅」(D出口)または「永田町駅」(7番出口)から徒歩で約6分
「奇跡の一本松の根」展 開催概要
<TEL>予約に関して:03-3264-2279(倫理研究所総務部)
展示内容に関して:03-3262-9636(内藤廣建築設計事務所)
<展示期間>令和4年3月11日~令和5年2月9日(予定)
<開館日>火・木・土曜日(祝日・年末年始等を除く)
※臨時閉館する場合あり。最新情報は予約専用サイトで確認を。
<開館時間>10:00~16:00
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