menu

色に恋して。デジタル写真をフィルム風に「FUJIFILM フィルムシミュレーションの魅力」vol.12 はら かずあき

デジタルカメラで撮影した写真を、フィルム写真のようなカラーに。そんな夢のような機能が、富士フイルムのデジタルカメラに搭載されています。その名も「フィルムシミュレーション」。まるで、フィルムを交換するような感覚で色再現を楽しめる機能で、なんと20種類。フィルム時代から90年以上にわたり、色の表現を研究してきた富士フイルムだからこそ作れる機能です。
「Xシリーズ」「GFXシリーズ」すべての機種で使用できるとあって、この機能に恋して、富士フイルムのデジタルカメラを愛用し続ける写真愛好家やフォトグラファーも多数。
そこで、本連載では「フィルムシミュレーション」の魅力を、全12回にわたってお届け。毎回1名のクリエイターがお気に入りのフィルムシミュレーションで撮影した作品とともにその魅力を語ります。

最終回となる第12回は、会社員として働きながら、週末は子供たちの写真を撮っている週末フォトグラファーの、はら かずあきさん。富士フイルムの「GFX100S II」で撮影した作品とともに、お気に入りのフィルムシミュレーションについて紹介します。

  • 作成日:
目次

プロフィール

はら かずあき

週末フォトグラファー/会社員 1972年生まれ、長野県出身。仕事での行き詰まりをきっかけに、自分の本当にやりたいことは何かを考え続け、写真を始めることを決意。家族、主に長女、次女、長男の三人の子供たちを被写体に写真を撮っている。

よい写真が撮れていると実感しながらの撮影は、楽しい

写真を始めるまで、はら かずあきさんは自分が本当にしたいことは何なのか、ずっと考えていました。そんななかで、6年前のある日、ふと写真をやってみようと思い立ちます。写真を撮り、撮った写真を見返したそのとき、写真は”残すことができるもの”なのだと気づきました。以来、はらさんにとって写真とは、「自分が生きてきたことの証」。写真を残すことは、自分が存在した証を残すことにもつながると、はらさんは家族を被写体に、日常の瞬間を撮影し続けています。

camera:GFX100S II lens:GF45mmF2.8 R WR
フィルムシミュレーション: モノクロ+R
「縁側で、何かをしている次女と末っ子長男の後ろ姿。夕暮れ時の縁側に差し込む光と木漏れ日と、寄り添う二人の背中に惹かれました。モノクロ+Rで撮影することで、自分が見せたかった木漏れ日と、被写体が際立つ写真になりました」。

はらさんは、普段から富士フイルムのカメラを愛用しています。富士フイルムのカメラはクラシカルなデザインのものが多く、以前からかっこいいなと感じていました。そのなかでもコンパクトなカメラを求め、「X-E3」と「X100F」に興味を持っていたある日、知り合いから、X100Fを譲ってもらったのが始まりでした。

「実際に使ってみると、見た目のデザインはもちろん、マニュアル撮影時のカメラ操作にストレスがなく、設定のしやすさにも感動しました。絞りやシャッタースピードの設定をダイヤルで行うのが、本当に使いやすいと感じています。また、富士フイルムにしか再現できないフィルムシミュレーションの色も、さすがの一言。選んだフィルムシミュレーションの色がファインダーや背面モニターに反映されるのも大きな魅力。撮っている写真の完成形がイメージできることに加え、よい写真が撮れていることを実感しながらの撮影は、より楽しさを感じられます」。

camera:GFX100S II lens:GF45mmF2.8 R WR
フィルムシミュレーション:クラシックネガ
「長女の部屋に忍び込み、鏡の前で髪をとかしながら、ふいにヘアブラシを見つめる末っ子長男です。小学校1年生で、まだ髪型を気にする年齢ではないのに、真剣に髪をとかしている姿に惹かれたのですが、長女が撮影中に部屋に戻って来て、私の部屋で何をしているんだと怒られました(笑)。和室の雰囲気と、彩度が抑えめでフィルム写真のように仕上がるクラシックネガが合っていると感じました。また、強めのコントラストによって、部屋に置かれている物の立体感を感じられる写真になりました」。

今回使ったカメラは、フルサイズよりもさらに大きなラージフォーマットセンサーを搭載する「GFX100S II」です。

「画質のよさに本当に魅力を感じました。家の中で自然光を生かして撮影する場面では、逆光になることが多いです。そのため、外の風景に露出を合わせると室内の人物が黒潰れしたり、逆に人に露出を合わせると外が白飛びしたりしてしまうことがよくあります。それが、GFX100S IIで撮影すると、どちらに露出を合わせても、黒潰れも白飛びもすることがなく、レタッチで調整することができました。レタッチしているときの解像度の高さ、調整できる範囲の広さには、本当に驚かされました。また、GFX100S IIは背景のボケ感がフルサイズより大きくなるように感じました。柔らかいボケ感が写真全体の雰囲気を、やさしく仕上げてくれます」。

camera:GFX100S II lens:GF45mmF2.8 R WR
フィルムシミュレーション: クラシックネガ
「末っ子長男は、上二人のお姉ちゃんと比べると、とても甘えっ子です。お母さんが大好きで、よくお母さんの上着を着たり、ズボンをはいたりしています。小さい子が、大人の服を着るというアンバランスな姿に惹かれました。大きくなったらこのアンバランスな姿も2度と見ることができなくなるので、貴重なシーンだとも思いました。クラシックネガの彩度が抑えめの色が、時間が経過している土間や木材と合っているように感じます。また、強めのコントラストにより、子供が座っている場所とその後ろの影が強調され、被写体がより目立つ仕上がりになりました」。

GFX100S IIを使うと「シャッターを切る回数が減った」と、はらさんは話します。

「普段使っているカメラに比べると、GFX100S IIは大きく、重さもあります。そのため露出を設定し、フォーカスを合わせ、シャッターボタンを押すまでに若干の時間が必要で、スナップのように連写で撮影をするカメラではないと感じました。とはいえそれによって、ファインダー内の構図や被写体が見せる瞬間をよく観察して、それからシャッターを切るようになりました。撮影スタイルが変わるということは、GFX100S IIでしか撮れない写真があるということです。新しい世界に出会うかのような高揚感を覚えました」。

My favorite フィルムシミュレーション

「フィルムシミュレーションは、フィルムメーカーとして長い時間をかけて培ってきた技術を持つ富士フイルムのカメラだからこその魅力であり、とても特別感があります。私は撮影前にそのときのお気に入りのフィルムシミュレーションを設定して、一度の撮影中はずっと固定で撮影します。撮影中、ファインダーや背面モニターにもフィルムシミュレーションの色が反映されるので、撮っていてとても楽しいです」。

「フィルムシミュレーションは必須」と話すはらさんが、今回使ったのは、「モノクロ+R」「クラシックネガ」「クラシッククローム」の3つです。

1:モノクロ+R

「人物を撮影したときに、人肌のトーンの階調が繊細で柔らかく表現されます。レタッチのときに露出を調整することで、柔らかいトーンのまま陰影を付けることができ、人物撮影に適していると感じました。また、今回初めてモノクロでの撮影を行ったのですが、モノクロは色が少ない分被写体が際立ち、自分が惹かれた部分がより強調されるように感じました」。

camera:GFX100S II lens:GF45mmF2.8 R WR
フィルムシミュレーション: モノクロ+R
「休日の朝、いつもより遅い時間に目覚めて、布団の中でモゾモゾしている瞬間が面白いと思い撮影しました。まだ完全には目が覚めていないけれど、お父さんがいつもと違う大きなカメラで自分を撮っているぞ、と思いながらカメラを見つめている表情です。モノクロ+Rで撮影したら、主体である子供の表情が強調されました。肌の階調が柔らかく、やさしい仕上がりになっています」。

2:クラシックネガ

「私は築100年ほどの古民家で暮らしていて、写真は家の中で撮ることが多いです。クラシックネガは、まさにフィルムで撮影したような仕上がりになります。全体的にうっすら赤みを帯びた仕上がりが、フィルムで撮影したような雰囲気を出してくれます。古民家での撮影と相性がいいと感じました」。

camera:GFX100S II lens:GF45mmF2.8 R WR
フィルムシミュレーション: クラシックネガ
「朝の光が入る玄関で、地球儀を見ている末っ子長男。朝の柔らかな光に惹かれ、シャッターを切りました。和室の雰囲気と、クラシックネガが合っていると感じました。また、クラシックネガはコントラストがハッキリしているため、差し込む光と、部屋にある影の部分がハッキリ分かれ、写真に立体感を持たせることができました」。

3:クラシッククローム

「クラシッククロームは、色の発色が抑えられていて、レトロ感のある写真に仕上がります。言語化するのが難しいのですが、“いい色合い”の写真になります。クラシッククロームも、古民家での撮影に合っていると思います」。

camera:GFX100S II lens:GF63mmF2.8 R WR
フィルムシミュレーション: クラシッククローム
「縁側で折り紙に熱中している末っ子長男。子供が何かに熱中している、自然体の姿に惹かれました。外は曇っていて部屋に入る光は少なめでしたが、クラシッククロームはコントラストがハッキリしているため、被写体である子供もしっかり表現できました。また、彩度が抑えめで、引きで撮影したこともあり、写真の真ん中にポツンと佇む子供が少し寂しくも見える仕上がりにもなっています」。

はら かずあきさんが愛するフィルムシミュレーションの特徴

1:モノクロ+Rとは?

通常のモノクロに、コントラストを高める「レッド(R)フィルター」を使ったような仕上がりになります。ほかに、表現意図に合わせた画質調整として、緑色を明るく、赤色を濃く表現する「グリーン(G)フィルター」と、コントラストを高める「イエロー(Ye)フィルター」もあります。

camera:GFX100S II lens:GF63mmF2.8 R WR
フィルムシミュレーション: モノクロ+R
「末っ子長男が、遊びに夢中になっているときの足の仕草が面白くて撮影しました。足だけの写真なのに、被写体の気持ちが表れているように感じられるところが気に入っています。主体である足がモノクロ+Rでの撮影によって強調され、また、肌の階調が柔らかく、優しい仕上がりになっています」。

2:クラシックネガとは?

スナップシューターに愛用されてきたネガフィルム「SUPERIA」がベース。メリハリのある階調と、彩度を抑えつつも明部と暗部の色味を変えることで深みを増した色で、立体的な表現が得られます。

camera:GFX100S II lens:GF45mmF2.8 R WR
フィルムシミュレーション: クラシックネガ
「木漏れ日がきれいに差す縁側で、漢字の練習をしている娘を撮影。和室と畳の上に差し込む木漏れ日が、フィルムで撮影したような仕上がりになるクラシックネガと合っています」。

3:クラシッククロームとは?

20世紀のグラフジャーナル誌に使われた写真のような色再現を目指したフィルムシミュレーション。彩度は低め、暗部の階調は硬めに設計されており、ドキュメンタリータッチでリアリズムを求める写真を撮る際などに最適です。

camera:GFX100S II lens:GF45mmF2.8 R WR
フィルムシミュレーション: クラシッククローム
「縁側で、スマートフォンで遊んでいる次女。幅が狭く奥行きはある場所に座っていたので、写真の構図として面白いと思いカメラを向けました。クラシッククロームはコントラストが強めの仕上がりになるため、子供が着ている服や奥の暖簾のしわまでしっかり強調されて、立体感のある写真になりました。彩度が抑え気味のため、畳や障子といった和室の雰囲気に合うと感じます」。

はら かずあきさんが使用したカメラ

GFX100S II

対角55mmの新開発ラージフォーマットCMOSセンサー「GFX 102MP CMOS II」を搭載。1億2百万画素という驚異の解像力と階調表現が、被写体の質感・立体感、そして空気感までをも表現します。読み出された膨大な情報も高速処理・最適化する最新エンジンX-Processor5を搭載し、初めてのラージフォーマットでも、違和感のないリズム・感覚で撮影できます。また、新センサーのマイクロレンズを改良し、センサー縁部の光の利用効率を高めたことにより、レンズ周辺部分の画質やAF精度が従来機よりも向上。1934年フィルムの生産開始以来、色の研究を絶えず続けてきたそのノウハウを注ぎ込んだ機能「フィルムシミュレーション」は、最新の「REALA ACE」を含め全20種類のモードを搭載。表現に幅を与えてくれます。

FUJIFILM WEB

おすすめ記事

連載:色に恋して。デジタル写真をフィルム風に 「FUJIFILM フィルムシミュレーションの魅力」

次の記事