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自分の色を見つける方法/市川渚の“偏愛道” Vol.08

市川渚<連載コラム>第1・第3日曜日更新
ファッションとテクノロジーの世界で活躍する
クリエイティブ・コンサルタント市川渚が
身の回りのモノ/コトへの強いこだわり=偏愛を語る!

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自分の色を見つける方法/市川渚の“偏愛道” Vol.08

ちょうど、私も取材していただいた本誌『GENIC』最新号の特集テーマが「My Identity with Camera.(写真を通して伝えたいこと)」ということで最近、何故自分は写真を撮るのかということについて色々と考えていた。
写真を撮って世に放つ、という行為は私にとっては自分自身にインプットされた情報を伝える手段のひとつでしかなかったりする。たまに「作品的な写真を撮ってみよう」と作家ぶってシャッターを押してみることもあるのだけれど、残念ながら良い写真に仕上がったためしがない(そもそも作品的な写真って何だよ、とも思いつつ)。

私の場合、無意識だとしても、何かを伝えようという意図がないと、写真が撮れない。残念ながら。撮ること自体も好きだけれど、あくまでも撮ることは手段であって目的にはならないのだ。

そんな私の写真は「白っぽい世界観に特徴がありますね」とよく言われる。身の回りに白やシルバーのものが多いから、必然的に白っぽい世界観になってしまう、ということが大いにありつつ、写真を現像/編集するときに白をどういった色味にするかという点から絵作りの方向性を決めている、というところも大きいと思う。

きっかけは、まだRAW現像に手を出していない頃、写真加工アプリ「VSCO」で片っ端から色々なフィルターを試していたとき。それまで白といえばカラーコード #FFFFFF になるようなウェブサイトの背景と同化する真っ白のイメージだったのだけれど、実際は緑がかっていたり、オレンジがかっていたり、ほぼ無彩色だったりと、白にも色々な色があるということを色んなフィルターを試しながら実感したのだった。
当時から背景が白だったり、白の面積が多い写真を撮ることが多かったりしたこともあり、フィードに並んだ写真の白の色味の違いを揃えたい、そんな欲求が私を駆り立てた。

やがて再現できるようになった自分好みの白の色味はこんな色。画面上の色はその人その人の環境に多少左右されてしまうものなので、特定の色を正確に共有するのは難しいけれど、少しくすみがあるチョークのような白。マゼンタをほんの少しだけ加えるのがポイントだったりする。

しばらくはVSCOのA9をベースに彩度やコントラストを自分好みに設定したプリセットをいくつか作って対応していたのだけれど、本格的にRAW現像をするようになってからは、“私の白”を再現できる基本の“自分プリセット”を作って、使用するカメラや被写体、撮影シーンに合わせて明るさや色を細かく調整している。この作業は写真の中の白に他の色をどうコーディネートしてスタイリングしていくか、という感覚に近い。

台湾の写真では少し赤を強めに(撮影:Sony α7 III)。

雪山での写真は青空の色味を細かく調整して(撮影:DJI OSMO Action)。

自然光、室内での物撮り。肌の色や赤、ピンクの色味に気を配る(撮影:Sony α7 III)。

DJIの機材は基本的にコントラストがきつめなので、それを考慮しながらクルマの黄色を引き立たせることを意識(撮影:DJI Mavic Mini)。

以前はとにかく彩度をグイッと下げ、コントラストを弱め、シャープネスを少し上げた写真が自分っぽいと思い込んでいた部分もあったけれど、最近は彩度のレベルはいじらずに、トーンカーブ、カラーミキサー、明暗別色補正を細かくいじって、撮った写真の元の色を殺さず、いかに自分の色を出すか、という課題をなんとなく自分に課している。

市川渚

1984年生まれ。N&Co.代表、THE GUILD所属。
ファッションとテクノロジーに精通したクリエイティブ・コンサルタントとして国内外のブランド、プロジェクトに関わっている。自身でのクリエイティブ制作や情報発信にも力を入れており、コラムニスト、フォトグラファーやモデルとしての一面も合わせ持つ。

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