【龍崎翔子のクリップボード Vol.29】想像力を掻き立てる地名

龍崎翔子<連載コラム>

龍崎翔子<連載コラム>第1・第3木曜日更新
24歳にして5つのホテルを経営する
ホテルプロデューサー龍崎翔子が
ホテルの構想へ着地するまでを公開!

【龍崎翔子のクリップボード Vol.29】想像力を掻き立てる地名

どういう基準でホテルを出す街を選んでるの?とよく聞かれる。

今までを振り返ってみてると、荒涼とした京都駅の裏側でホテルを出したかと思えば、コンクリートジャングルのような大阪の港街でホテルを出したり、北海道の山奥の旅館をもらって来たり、と結構運と縁に任せて気まぐれに街を選んでいるような気がする。

正直、世界中のどんな街でも、そこでしかできないホテルを作れるような気がしている。世の中にひとつとして同じ地形を持つ土地はない。地形が違えば気候が違い、歴史が違い、文化が違ってくる。持っている空気感が全く同じ土地が存在しないのなら、どんな土地でもそこでしかできないホテルを作れるし、それこそがホテルプロデューサーの腕なのだという自負がある。

でもあえてひとつだけ挙げるなら、地名の美しさが何よりも重要だと思っている。富良野、東九条、弁天町、湯河原、層雲峡…。偶然ではあるのだけど、私たちがホテルをしている街はどれも漢字三文字で、その土地の情景が眼に浮かぶような美しい名前が付けられている。

街が商品なのだとしたら、地名はブランド名だ。ブランド名は、ユニークで、覚えやすくて、ブランドの世界観が伝わるものでなくてはならない。もし地名が微妙ならば、(例えば松濤を奥渋と呼ぶように)新しい名前を付けてあげても良い。そうすれば、今までの地名に紐づいたものとは異なる新たな土地ブランドを生み出すことができる。

でも、やはり可能ならその土地に受け継がれてきた名前が良い。地名にはその土地らしさの根源である地形や歴史が埋め込まれている。それを丁寧に掘り起こすことで、街の空気を感じ取ることができる。

だから、ホテルを作るとき、私は地名を見る。物語の香りがする美しい名前なのか、街の成り立ちや歴史を感じさせる名前なのか。知らない街への憧憬を深める地名を、ホテルに冠したい。

龍崎翔子

2015年、大学1年生の頃に母とL&G GLOBAL BUSINESS, Inc.を立ち上げる。「ソーシャルホテル」をコンセプトに、北海道・富良野に『petit-hotel #MELON』をはじめとし、大阪・弁天町に『HOTEL SHE, OSAKA』、北海道・層雲峡で『HOTEL KUMOI』など、全国で計5軒をプロデュース。京都・九条にある『HOTEL SHE, KYOTO』はコンセプトを一新し、2019年3月21日にリニューアルオープン。

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