プロフィール
七菜乃
写真家 山梨県出身。東京と山中湖を拠点に活動。2015年より写真作品の発表を始め、セルフポートレートを含む人物写真やヌード作品を中心に制作してきた。近年は国内外を旅しながら、人物、動物、植物、街、風景へと撮影対象を広げている。
- GENIC WEB: 七菜乃記事・インタビュー
- Instagram @nananano2026 @nananano.2026 / X
言葉は必要です。誰かに伝えたり、考えたり、人とつながったりするために、私も言葉を使っています。
でも、言葉にした瞬間、その言葉だけが答えのようになってしまうことがあります。私は、そこにとらわれたくありません。
人も、身体も、写真も、一つの言葉や意味に決めなくていい。もっと自由でいいと思っています。
今回の展示では、旅の中で出会った人、街、部屋、花、動物、風景を分けずに撮りました。言葉や意味を探す前に、作品を見たときに生まれた感覚を、そのまま受け取ってもらえたら嬉しいです。
ステートメントと展示作品の一部をご紹介
私はこれまで長く、裸を主な題材として写真を撮ってきた。
裸に貼りついた固定観念を、写真によって少しずつほどいていきたいと考えているからだ。
この春、私はジョージアに滞在し、その途中でポルトガルとスペインにも足を延ばした。
現地の言葉も英語も話せない私は、会話の多くを翻訳機やAIに頼っていた。言葉は何度も変換され、意味が揺れ、その正しさを確かめられないこともあった。
それでも、何も伝わらないわけではなかった。
翻訳された言葉よりも、その前後にある沈黙や表情、距離、空気のほうが、私の中に強く残っている。
人は何かを感じ、そのあとで言葉にする。けれど、言葉になった瞬間、それは少しだけ別のものになる。
写真もまた、言葉になる前に感じたものを残すための行為なのだと思う。
今回の旅では、裸だけでなく、街、窓、部屋、花、動物、景色、何気ない時間にもカメラを向けた。
そのことで、私の見方は何も変わらないのだと気づいた。
服を着ていても、裸でも。
そこに人がいても、いなくても。
私が見ているのは、その場にある光や空気、その中にある佇まいなのだと思う。
私にとって裸は、特別なものではない。本当はほかの服を着ていてもいい。
ただ、服には性別、年齢、役割、時代、職業など、多くの意味がつきやすい。
私は、そうした意味がつく前の姿を見たい。
裸というだけで、作品が別の意味で受け取られることがある。展示の告知ができず、SNSに載せることも許されないことがある。
けれど、裸はただの裸でいい。
身体は、ただの身体でいい。
身体、性別、年齢、国籍、役割。そうしたものに貼りついた固定観念を、私は写真の中で少しずつほどいていきたい。
私が撮りたいのは、裸そのものではない。
光の中にいる人。
言葉になる前の感覚。
名前をつける前に、そこにあったもの。
言葉が通じても、通じなくても、感じ取れるものはある。
この旅では、言葉が十分に届かない場所にいたからこそ、言葉になる前にあるものを、少しだけ確かめられた気がしている。
── 七菜乃
七菜乃 写真展「pre-verbal」情報
開催日時
2026年10月2日(金)〜10月18日(日) 13:00~19:00
休廊日:月曜、火曜
入場料
無料
会場
神保町画廊
- 〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-41-7安野ビル1階
- Google Map
行き方・アクセス
<電車>
東京メトロ半蔵門線、都営地下鉄新宿線「神保町駅」から徒歩で4分
