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“彫刻のまち” 山口県宇部市へ。人とアートに出会う旅

本州の端、山口県の瀬戸内海側に位置する「彫刻のまち」としても有名な「宇部市」。至るところにアートがあり、写真好きにとっても刺激がたくさんある街です。
山口県の空の玄関、山口宇部空港から市街地まで車で数分とアクセスもよく、働き方の選択肢が広がってきた今、移住先としても注目を集めています。
今回は、写真好きで旅好き、GENICのカメラ企画でも活躍中のてい えみさんが宇部市を訪問。おすすめのアートスポットや、実際に宇部市に移住した人に取材して教えてもらった、宇部市の魅力をたっぷりと紹介します。

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目次

創造力を刺激する“彫刻のまち”「宇部市」で訪れたいアートなスポット

UBEビエンナーレの会場「ときわ公園」でダイナミックな野外彫刻を鑑賞

宇部市でアートを鑑賞するなら、必ず訪れておきたいのが「ときわ公園」。
常盤湖を中心に東京ドーム約40個分の広大な敷地が広がる園内には、100点を超える数の彫刻が展示されています。
ときわ公園では1961年に日本初の大規模な野外彫刻展「第1回宇部市野外彫刻展」が開催されて以来、現在も2年に1度「UBEビエンナーレ(現代日本彫刻展)」を開催。国内外のアーティストが応募する世界で最も歴史のある野外彫刻の国際コンクールとして、会期中は多くの人で賑わいます。

東入口から入場して常盤橋を渡っていく途中にも、インパクトのある彫刻作品たちがお出迎え。

ロッキング・ド-ル/関 正司

風になるとき/西野 康造

こちらの作品はなんと、左右の大きな翼が風を受けて羽ばたくという、動く彫刻…!
風向きや強さによって優雅に羽を動かす姿は、まるで生きているよう。ついついしばらく見惚れてしまいます。動画でも残しておきたい作品です。

左から、in Wave~Departure~/佐野耕平 森の掟/伊藤 嘉英 月と山、水脈/岡田健太郎 蟻の城/向井 良吉

こちらが「UBEビエンナーレ」の会場にもなる「彫刻の丘」。湖を見下ろす小高い丘の上に、コンクールに出展された最新作が立ち並びます。
広い空と湖を眺める、開放感のある景色が気持ちのいいスポット。

Sin/外礒 秀紹

湖を有する「ときわ公園」では広角レンズはもちろん、遠くから望遠レンズで周辺の景色と一緒に彫刻作品を撮影するのもおすすめ。
その日の天気や時間帯によって変化する空の色やまわりの自然も、アートの一部として切り取ってみて。

遊/増野 智紀

言葉/武田 克史

彫刻は手で触れてみることもできます。作品に手を置いてみたり目線を向けるようにしてみたりと、ポートレート撮影の幅も広がります。

園内ではサクラやハナショウブ、アジサイなど季節によって色とりどりの花々も楽しめます。
彫刻のほかにも、世界中の珍しい植物を集めた「世界を旅する植物館」や動物園に遊園地、なんと神社(!)まで…とにかく広いときわ公園、一日中いても飽きないほど見どころがたくさんです。

ときわ公園 基本データ

<住所>山口県宇部市則貞三丁目4番1号
<TEL>0836-54-0551(ときわ公園課)
<休園日>なし
<駐車場>あり(15分無料~24時間500円)

料金

入場無料

行き方・アクセス

<電車>JR宇部線「常盤駅」から徒歩で約15分
<車>山口宇部空港から約5分

街にアートが溶け込む、宇部新川駅「シンボルロード」

ノアの家族/池田 宗弘

明治時代以降、石炭産業を中心に発展を遂げた宇部市。戦後の復興期に工業都市への転換を進めるなかで、工場から排出された煙などによる環境問題の改善意識が高まり、それが街づくりへの情熱へと発展し、街を花や緑、彫刻で彩る運動が盛んになっていきました。
そして現在では、「緑と花と彫刻のまち」として、市内全域に約200点の彫刻が常設展示されています。

街歩きを楽しみながら点在する彫刻を鑑賞できるスポットの一つが、JR宇部新川駅から続く平和通り、通称「シンボルロード」。
約500mの通りには、16点の彫刻が展示されています。

SEED 増殖/伊藤 憲太郎

彫刻に映り込んだ自分の姿を一緒に撮影してみるのもおすすめ。自分も作品の一部になったような写真が撮れます。

メッセージ/二口 金一

街の景色の中に、溶け込むように自然に点在している彫刻たち。
宇部市の彫刻マップを片手に、一つ一つの作品のタイトルや解説を読みながら散策してみると、彫刻ヘの解釈が深まり、また違った街の見え方が楽しめます。

循環・メビウス/後藤 良二

シンボルロードを散策していると彫刻の他にもう一つ目につくのが、電話ボックスに施されたユニークなデザイン。
宇部市のシンボルでもある「白鳥」など、カラフルなイラストが目を引きます。街歩きをしながら、ぜひ探してみてください。

平和通り(シンボルロード) 基本データ

<住所>山口県宇部市中央町

行き方・アクセス

<電車>JR宇部線「宇部新川駅」すぐ

宇部市最北端、美しい棚田や昔ながらの暮らしが残る「吉部地区」へ

市街地から車で35分ほどの市内最北端に位置する吉部(きべ)地区は、田園風景が広がる自然豊かな地域。
この地域で育てられた「吉部米(きべまい)」は、全国のお米の品評会で特別優秀賞を受賞したことがあるほどのおいしさです。

吉部米の田んぼが織りなす棚田の風景はとても美しく、どこを切り取っても絵になります。

旧吉部小学校グランド奥から歩いて400mのところにある「大棚(おおだな)トンネル」も、必見ポイント。

昔使われていたという鉄道のレール跡を歩いていくと見えてくる、石積み+レンガ造りの趣のあるトンネルです。

<移住者インタビュー1>宇部での暮らし体験プログラムに携わる八代谷さん

そんな吉部地区に、地域おこし協力隊の隊員として兵庫県神戸市から移住した、八代谷 寿子(やしろたに ひさこ)さんにお話を伺います。吉部米のおいしさを広めるため、キッチンカーでイベント出店を行う「kitchen846」を2019年に創業、現在はご自身のキッチンカー事業の他に、宇部市役所と連携し、将来的な移住を見据えて宇部市とかかわりを持つ人を増やす「関係人口の創出事業」に取り組んでいるそうです。

「年に数回、県外から5人程度の若者を受け入れ、宇部市に1、2泊滞在してもらっています。羽釜でご飯を炊いたり農作業を手伝ってもらったりと、宇部での暮らしを体験できるようなプログラムを提供しています」。

まずは「こんな暮らしもあるんだ」と、宇部市での日常の暮らしを味わってもらうことを大事にしているのだそう。

プログラムでは、一度目の滞在で一緒に植えた農作物を、二度目の滞在時に収穫してもらうことも。
収穫のタイミングが合わない場合は収穫物を郵送で送ったり、期間中はオンラインで参加者同士の近況報告をし合ったりと、継続した関係が保てる仕組みを実践しています。

「移住というとハードルが高いかもしれないけれど、例えばプログラムに参加してくれた人が10年後20年後に都会での暮らしに疑問を持った時や、どこか田舎に移住したいなと思った時に『そういえば宇部もあったな』と、思い出してもらえるような関係をつくりたい」と話す八代谷さん。

「すぐに移住に繋がらなかったとしても、疲れた時にたまに帰って来れるような、第二のふるさとのような場所になれれば」。

そんな八代谷さんが特に感じる地域の魅力は、人の温かさ。
「近所に住むおばあちゃんやおじいちゃんの家に行くと、『来てくれるだけで嬉しい』と言って食べきれないほどの食べ物を用意してくれたり、いつも温かく迎えてくれるんです」。
八代谷さんにとって、移住するまでは縁もゆかりもなかった宇部市ですが、今では「ここに本当のおじいちゃん、おばあちゃんがたくさんいる感覚」なんだとか。

移住フェアなどで八代谷さんが県外に行くと、関係人口プログラムの参加者が会いに来てくれることもあるそう。
“あの人にまた会いたい”と思える存在が、自分の住む街の外にできることは、まさにふるさとが増えるような感覚なのではないでしょうか。きっと、何かあった時の心の拠り所になってくれるはずです。

吉部地区 基本データ

<住所>山口県宇部市東吉部、西吉部

行き方・アクセス

<電車・バス>JR山陽本線「宇部駅」からバスで約55分「宮の前」下車
<車>山口宇部空港から約45分
山陽自動車道「宇部I.C.」から約30分

見渡す限り一面の茶畑に圧倒される「小野地区」へ

小野地区は市街地から車で約30分の中山間地域に位置し、「小野茶」の生産が盛んな地域です。
なかでも「小野茶畑(藤河内茶園)」は一ヶ所の茶園としては「西日本最大級の規模を誇る大茶園」と言われ、その広さはなんと東京ドーム約80個分…!
見渡す限り、360度茶畑に囲まれた景色はまさに圧巻です!

茶畑を見下ろせる小高い丘には展望台もあり、広大な茶畑を撮影するには最適なスポット。
どこまでも続く緑のじゅうたんのような景色に、思わず深呼吸したくなります。
小野地区は、自らも移住してきたという人が率先して地域の魅力を発信しています。今回は、小野地区にお住まいの2名に、お話をお伺いしました。

<移住者インタビュー2>夫婦で移住後、ゼロから農業を始めた「まこっこ農園」の才木さん

「小野茶畑(藤河内茶園)」からほど近い小野地区にご夫婦で移住したという才木 祥子さん。
2009年に東京から宇部市に移住し、専業農家「まこっこ農園」を運営し、ミニトマトや白ネギなどを生産しています。
現在は2人のお子さんと家族4人で暮らす才木さんに、小野地区への移住についてインタビューさせていただきました。

小野地区の魅力について尋ねると、「人!人が温かいこと!」と即答してくださった才木さん。
「農業をやりたくて宇部市に移住してきたものの、憧れだけで始めた農業は想像以上に大変でした。それでも、ゼロからスタートして13年間も農業を続けてこれたのは地域の方々が温かく受け入れてくれて、たくさんサポートしてくれたおかげです」。

「まこっこ農園」の白ネギ。葉の部分まで食べられるおいしさが自慢です

真ん中のスタイリッシュなおうちが、5年前に建てたという才木さんのご自宅

小野地区は子育てにも、とても恵まれた環境だと感じているそう。
地域にある小野小学校は、全校生徒が18名という小さな小学校。でも、少人数だからこそのメリットがたくさんあるのだとか。

「小野小学校では『複式学級』という、2つ以上の学年の生徒を1人の先生が見る制度が取られています。少人数だからこそ常に先生の目が行き届き、生徒同士がお互いに教え合う機会も増えるので、自分で考える力がつくんです」。

実際、小野小学校に通う子どもたちは、才木さんいわく「みんな目がキラキラしていて、素直で良い子ばかり。きちんと感謝できるし、感性豊かにのびのびと育っている子が多い」のだとか。
授業の一環として地域の人たちが講師となって、お茶の加工方法やしめ縄の作り方を教えたりすることも!
地域みんなで子どもたちを見守り育てる環境があることは、子育て世代にとっては何より安心で魅力的です。

ハウスで育てているミニトマトは、フルーツのような甘さ

才木さんもお気に入りという、家のすぐ近くに広がる畑や山々の自然豊かな景色

お休みの日も特別なことはせず、家の近くを子どもと散歩したり家のプロジェクターで映画を観たりと、日常の延長にあるちょっとした時間を家族みんなで楽しんでいるそう。
「田舎暮らしは不便なこともあるからこそ、楽しく暮らせるように工夫しようと、家族で過ごす時間が増えました」と語る才木さんからは、移住して得られた心の充足感がとても伝わってきました。

<移住者インタビュー3>地域おこし協力隊として活躍する梅澤さん

神奈川県からご夫婦で宇部市に移住した梅澤 脩さんは、2021年11月より宇部市の地域おこし協力隊として活動しています。

主な活動内容は宇部市の移住促進や小野地区のPR。特に小野小学校の児童数増加を目的とした取り組みに力を入れているそう。

「5月下旬から6月上旬頃には、この辺りはホタルがとってもきれいなんですよ」と、梅澤さん

都心で会社員として働いていた頃はストレスも多く、都会での暮らしに疲れてしまっていたという梅澤さん。宇部市に移住してからは過度なストレスから解放され、協力隊として充実した日々を送る今の暮らしにとても満足しているそうです。

山や湖に囲まれ、自然豊かな土地で静かに暮らせる今の環境は、梅澤さんにとってまさに理想的。
小野地区はのどかな地域でありながらも、街中やスーパー、新幹線の駅などにも大抵は車で20〜30分で行ける、「ちょうどいい距離感」も大きな魅力です。

「2022年4月には『おのっこ未来応援隊』という任意団体を有志で立ち上げ、小野地区の児童数を増やす活動にますます力を入れて取り組んでいます。
小野小学校の子どもたちはみんな礼儀正しくて、自分の考えを自分の言葉で伝えられる子が多いんです。そんな彼らを見て、将来自分の子どもも安心して預けられると感じました」。

才木さんご夫妻と梅澤さん。ビニールハウスにて

2組の移住者のお話から見えてきたのは、小野地区の人たちの温かさと、のびのびとまっすぐに育つ子どもたちの存在でした。

移住者を温かく迎え入れてくれ、子どもたちの成長を一緒に見守ってくれる地域の人たち。移住を検討している人にとって心強い環境が宇部市には揃っています。

小野地区 基本データ

<住所>山口県宇部市小野

行き方・アクセス

<電車・バス>JR山陽本線「宇部駅」からバスで約50分「下小野」下車
<車>山口宇部空港から約30分
山陽自動車道「宇部I.C.」から約30分

観光や撮影のブレイクに食べたい宇部グルメ

地元の人から愛され続けるご当地ラーメン「中華そば一久」

宇部市を中心に山口県内に8店舗あり、宇部市民に昔から愛され続けている「中華そば一久」のラーメン。

こってりとした濃厚な豚骨スープは、一度食べたらやみつきのおいしさです。

定番メニューの「ラーメン」は、チャーシューとネギというシンプルなトッピング。

麺はつるつるとした細めのストレート麺。しっかりスープが絡みます。
自社工場で作っているという餃子も、生餃子ならではのジューシーな焼き上がりでオーダー必須メニュー。
ラーメンが出てくるまでの間、アツアツの餃子をつまみながら待つ時間も至福です。

中華そば一久 新川店 基本データ

<住所>山口県宇部市中央町1丁目9-14
<TEL>0836-31-1915
<営業時間>月~土曜 11:00~翌3 :00 日曜 11:00~23:00
<休業日>なし
<駐車場>なし

行き方・アクセス

<電車>JR宇部線「宇部新川駅」から徒歩2分

濃厚なお茶の風味が後を引くおいしさ!小野茶直売所の「小野茶ソフトクリーム」

「小野茶畑(藤河内茶園)」を観光したら、ぜひとも立ち寄って食べてほしいのが小野茶直売所の「小野茶ソフトクリーム」。茶畑から車で7分ほどの場所にあります。

直売所の入口で販売しているソフトクリームの種類は「小野茶」「釜炒り茶」「ミックス(小野茶&釜炒り茶)」の3種類。

どの味にするか迷ったら、一番人気の「ミックス」がおすすめ。小野茶の濃厚な苦味と、釜炒り茶の香ばしさが一度に味わえます。

お茶の風味がぎゅっと凝縮された濃厚な味わいが、後を引くおいしさ…!

暑い日は「水出し煎茶」もぜひ。すっきりと飲みやすいので、ごくごくと飲め、喉を潤してくれます。

直売所の目の前に広がるのは小野湖。ベンチに座って湖を眺めながらソフトクリームを食べるのも良さそう。観光や撮影の休憩にぴったりのスポットです。

小野茶直売所 基本データ

<住所>山口県宇部市櫟原152-13
<TEL>0120-46-2116
<営業時間>9:00~17:00
<休業日>なし
<駐車場>あり(無料)

行き方・アクセス

<車>山陽自動車道「宇部I.C.」から約30分
山口宇部道路「嘉川I.C.」から約5分
JR山陽本線「新山口駅」から車で約15分

街と自然がほどよくブレンドされた“ちょうどいい まち”宇部市でアートに触れる

ときわ公園やシンボルロードなど、市内の至る所でアートを感じられる「宇部市」。街中から車を30分ほど走らせれば、昔ながらの田園風景や地域の人との繋がりが色濃く残る農村地域にもアクセスできます。今回紹介したアートなスポットは、すべて空港から車で15分以内、吉部地区や小野地区も車で30~40分程度です。まずは気軽に、宇部市へ訪れてみませんか?
もちろん、移住先を探している人にもとてもおすすめ。自然豊かなのどかな場所で暮らしながら、週末はカメラを片手にアート鑑賞へ。宇部市なら、街と自然をともに楽しむ「ちょうどいい暮らし」が叶えられそうです。

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宇部移住計画

てい えみ プロフィール

フリーランス編集者・ライター/被写体 「自然と繋がるやさしい暮らし」をコンセプトに、自然を感じるお出かけスポットやサスティナブルな暮らし、旅先の魅力をSNS中心に発信。被写体としても活動中。2021年より千葉県南房総市へ移住し、#南房総山奥暮らし の様子も発信中。

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