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愛犬の「らしさ」を大切に 女鹿成二

スナップ撮影が大好きなのに、自分の手グセのようになってしまった切り取り方に飽き飽きして、撮る手が止まってしまっている。
そんな悩みを抱えていませんか?
そこから抜け出すために、スナップが素敵なフォトグラファーたちから、新たな視点を頂戴しましょう。それぞれのスナップ写真との向き合い方から、多くのことが学べます。
写真家に聞く「スナップの腕をあげる3つの極意」 4人目は、なにげない日常を優しく写し出す写真家、女鹿成二さんです。

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愛犬の「らしさ」を大切に

愛犬の性格が滲み出る瞬間、生きていることの尊さを感じる

「立ち上がる瞬間なのかトイレの途中なのか覚えていないですが、雪が降る中、小屋にも入らずポツンといる感じがよくて少し引いて撮影。愛犬の絶妙でなんとも言えない瞬間の面白さ。こちらに気付いているのかいないのか」。

「僕にとってのスナップ写真とは、直感的に楽しみやすいもの。瞬間を切り取ること、あるいは意図せず撮れたり写っていたりしたものということでしょうか。被写体との距離感や客観的に見ているような視点、写真から伝わる余韻は意識していて、基本的には人も動物も風景も同じような感覚で写真に収めています。愛犬のらんまるを撮影するようになったのに特別な理由はなく、純粋に写真に残しておきたかったから。愛犬をスナップするときは、個人的な好みもありますが35mmや50mmの単焦点がおすすめ。画角や構図は、自分が動いて調整しています。基本的に絞り優先で、設定を最小限にして瞬間を逃さないようにするのがコツです。愛犬を撮るようになって感じたのは、同じ瞬間は2度とないということ。それは無意識に、他の写真にも影響しているかもしれません」。

【TIPS 01】好きなパーツに寄ってみる

「愛犬の耳がピンッと立っていて形がかわいかった。何に反応しているのか。白い世界の中に赤い首輪の色合いがマッチした、後ろ姿の余韻を切り取りました」。

「僕はらんまるの耳や毛の柄が特に好きで、耳に表情があるときに撮りたくなることが多いです。そんなときはマクロレンズやクローズアップフィルターを使って、思い切って顔やパーツに寄ります。実際に撮った写真を見ると、小さいころから成長を見てきたので、大きくなったなとしみじみしてしまうこともあります。また、家などで撮影する場合“かわいい表情だけど、背景がイマイチ”という場面もあると思いますが、そんなときは絞りを浅めにしたり、アングルを高めからにして背景を整理したりします。状況によっては下からあおったりしても新鮮かもしれません」。

「久しぶりに実家に帰省して、カメラ片手に犬と遊んでいるところ。瞳に目が行きやすいように寄りで、背景に犬小屋を入れて撮影しました。透き通った瞳のきれいさと優しい表情を切り取った1枚です」。

【TIPS 02】カメラを意識されないように工夫して様々な表情やしぐさを捉える

「午後の暖かい光で日向ぼっこをしているらんまる。真ん中に配置して、ずっしりした感じを出しました。なんとも言えないくつろいだ表情、クセのある座り方、渋み。写真を見れば見るほど、ジワジワと余韻のあるユーモラスな佇まいに惹かれます」。

「らんまるは哀愁のある表情や座り方をすることがあるので、撮影する時は徐々にそっと近づいたり、あるいはあえて少し遠い距離感で撮ったりして、気付かれないようにしています。あとはおやつをあげたり撫でたりして、ある程度触れ合っていると落ち着いてきたり、他のことに興味を示したりするので、そこでまた違う素を引き出すのも面白いですね。持久戦ですが、やっぱり人を意識していないときにしか出さない表情や仕草があるんです。らんまるがカメラを意識しないように撮影することで、撮れる写真の幅も広がったと思います」。

【TIPS 03】愛犬の性格を理解して、自然体で楽しんで撮影する

「シャンプーをした後、母がタオルを持って拭こうとするのを、全力で嫌がっているのか、ただ戯れているのか(笑)。普段は外飼いなので、家の中にいるのが珍しく、小さいころは家の中でご飯をあげたり寝ていたりしたな~、という主観的な懐かしさがあり思わず撮りました」。

「犬もいろんな性格の子がいるので、それを楽しんで撮影することが大事だと思います。ただかわいい瞬間だけではなく、自然体で愛犬の性格が滲み出る瞬間を逃さず切り取ると、生きていることの尊さも感じられるんです。撮影するときは、ブレやピントを気にしすぎないことも重要。そこが逆に躍動感や臨場感に繋がったりする、愛犬をスナップする面白さのひとつだと思います」。

女鹿成二

写真家 1990年生まれ、岩手県出身。2011年日本写真芸術専門学校卒業、studio23入社。2014年今城純氏に師事。2017年独立後、写真集や雑誌、CDジャケット、広告撮影など幅広く活動中。2020年クリエイティブユニット「東京讃歌」として写真展「somewhere」を開催。2021年「私が撮りたかった女優展Vol.3」参加。
愛用カメラ:Nikon F6、PENTAX 67II、FUJIFILM NATURA CLASSICA、FUJIFILM 写ルンです シンプルエース
愛用レンズ:AI Nikkor 50mm f/1.4D、SMC PENTAX 67 90mm F2.8

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GENIC vol.69【写真家に聞く「スナップの腕をあげる3つの極意」】
Edit:Izumi Hashimoto

GENIC vol.69

1月号の特集は「SNAP SNAP SNAP」。
スナップ写真の定義、それは「あるがままに」。
心が動いた瞬間を、心惹かれる人を。もっと自由に、もっと衝動的に、もっと自分らしく。あるがままに自分の感情を乗せて、自分の判断を信じてシャッターを切ろう。GENIC初の「スナップ写真特集」です。

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