【写真を通して伝えたいこと #5】葵(21世紀生まれの写真家)

GENIC編集部

カメラというツールを通した自己表現は、まさに多彩で十人十色。
今回は、フィルムに収めた淡い青春をSNSで発信する、この春に高校を卒業したばかりの写真家 葵さんの、写真には写らない心の内に迫ります。

葵 / Age 18

葵 埼玉県出身・在住の若手写真家。高校1年の冬からカメラを始め、学校での日常を撮ったフィルム写真が話題に。昨年は友人と初の写真展を開き、米原康正氏キュレーションのグループ展にも参加。写真メディアのクリエイターやイベントカメラマンとしても活動中。

❝今の自分にしか撮れない未完成の青。❞

これは学校のプールで、友達2人と一緒に潜って、バシャバシャ遊んで騒いでいるところを、水中で使える“写ルンです”で撮った写真です。普段もそうなのですが、友達を撮るときは「さあ撮るぞ!」と構えるのではなく自然に、自分も遊びながら撮っています。

自分にしか撮れない写真とは?

「不安定で、でも時にきらきらと輝いて見える、未完成な写真。今の自分の価値観や考えは、周りに左右されたり、自分と向き合うたびに変化して、とても不安定です。でも、大人になるにつれてきっとそれらは固定されて、自分が定着していくのだと思う。その時に見えている世界と、未完成な今の自分が見えている世界は違うはずだから」

プールの授業中に、防水の“写ルンです”で撮影した写真です。シャッターを押したタイミングや水中に差し込む光の具合が、まるで奇跡のような1枚でした。青の世界観が自分をよく表現している写真なので、TwitterとInstagramのプロフィール画像にもしています。

夏休みの部活の日に撮影した写真で、きらきら、ゆらゆらと流動する光と、水の中で何かを探しているような表情をした手が、自分が表現したい写真そのもので、とても気に入っています。

❝忘れてしまうような些細なものに心が動いた瞬間を大事に残したい❞

文化祭の当日の朝、友達と髪をセットしあっているときに撮影した、宝物の1枚。自分を写すことは滅多にないのですが、フィルムカメラで初めて鏡越しに友達と撮り、自分も写っている写真は、特別でより一層愛おしく感じることを知りました。

高校1年生のときに、Twitterのタイムラインでフィルム写真を目にし、その翌日に見た目が気に入ったNikon FEをメルカリで即購入したという葵さん。「勢いで手にしたものの、フィルムはおろかデジタルカメラの知識もなかったので、学校の近くのキタムラに持っていって、おじさんに一から教えてもらいました」

とある放課後に撮影したものなのですが、たまたまこの日は天気が良くて、日の入り前の光が駅のホームに降り込んでいました。喋っている友達の姿はいつもと同じようなのに、光によってこんなにもあたたかくきらきらとしたシーンになるのかと感動した、思い出の写真です。

その女子高生らしい瞬発力と感性で、Twitterから一気にブレイク。そんな葵さんの写真は、その名にふさわしく、そして青春を切り取ったものらしく、文字通り青の色彩が際立っている。「高校で水泳部に所属していたので、プールへの思い入れが強く、青の世界観がとっても好きなんです。この青の世界観にかかせない水は、ゆらゆらしていて不安定で、外から刺激を受けると一瞬でさまざまな形へと変化を遂げ、時に危うく、時にきらきらと輝いて見えます。それがまるで今の私たちの心を表しているようで、なんだか惹かれるんです」

お昼ご飯を食べているときに、たまたま友達と靴下が同じだったことに気がついて撮影した写真です。 無造作な足の形も好きなのですが、自分の中での1番のポイントは髪の影。髪自体は写り込んでいないのに、影を通してそのものを認識することがなんだか面白くて、少し不思議で、魅力的です。

被写体は、目の前で笑っている友達の姿だったり、放課後の廊下に差し込む夕日だったり、みんなで盛り上がる体育祭のワンシーンだったりと、日常生活で出合う本当に些細なものたち。「些細なものだからこそ忘れてしまうので、それらに心が動いた瞬間を大事に写真に残したいと思っています。写真は自分と向き合う方法のひとつ。どんな時にどんな物や事に対してどんな感情を抱いたのか、コロコロと日々変化していく感情をそのたびに残したい。そして写真は、過去と今と未来の自分を繋いでくれるものでもあります。今の自分が見ている世界を未来の自分に伝えたい。この先もずっと写真家として活動していきたいと思っています」

OLYMPUS PEN EE3を手にして間もないときに撮影しました。放課後、廊下で友達と「なんだか光がすごい!」とはしゃいだ思い出があります。
現像されたこの写真を見て、iPhoneやデジタルのカメラとは全く違う光の捉え方に心を奪われ、より一層フィルムを好きになりました。

カメラを通して何を捉えたいと思っていますか?

「"忘れたくない""大事にとっておきたい"と思った空間や瞬間を捉えたいので、思うままに、その場その瞬間の自分の感情をフィルムに閉じ込めるような気持ちでシャッターを押しています」

体育祭で、輪の中にいる団長の合図とともに飛び跳ねて盛り上がっているときの写真なのですが、じつはファインダーを覗かず、私も飛び跳ねながら手を伸ばして撮影しました。この輪の中にいる誰のものでもない視点から収めた、今にも声が聞こえてきそうな写真でとても惹かれますし、こういう写真を目指している気がします。

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