【龍崎翔子のクリップボード Vol.06】インダストリアルセクシーな街並み

龍崎翔子<連載コラム>

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23歳にして5つのホテルを経営する
ホテルプロデューサー龍崎翔子が
ホテルの構想へ着地するまでを公開!

【龍崎翔子のクリップボード Vol.06】インダストリアルセクシーな街並み

「この街には何もないよ」と言われるような街が、実は結構好きである。住んでいる人は決して気づかないかもしれないけど、そこにある当たり前の光景は私にとっては特別なのだ。

もちろん、風光明媚で、洗練されていて、歴史や文化が重ね塗りされているような観光都市も好きだが、例えばこのような街が自分の魅力に気づいているセンスのいい美女だとしたら、「えっ私なんか・・・」となってしまっているような普通の女の子も愛しいのである。あなたのそばかすは可愛いし、ふさふさの眉毛も素敵だよと伝えたくなる。もちろん、ファッションやメイクでいわゆる美女を目指すのも賛成だけど、上手に垢抜けたらそのままでもとっても魅力的だよ!!と。

街を高架が張り巡っていたって、倉庫がポツンポツンと立っていたって、商店街がひなびていたって、寂れたビルが立ち並んでいたって、私にとってはとっても愛しいのである。

工業的だ、無機質だと言われることも多いが、人工物であるということは人の手で作られたものであるということであり、それはつまり人の意志が宿っていて、物語があるのだと私は思う。

港にクレーンが立っている光景は、そこで船が作られ、人々が暮らし働き、人々を海の向こうに送り出したりしていることの表れだし、廃れたコンクリートジャングルは、そこで人々が生活を営み、そしてそこを離れてしまったからこそ存在する。そんな平凡でありながら物語性をはらんだ魅惑的な光景に、どうしても抗えない魔力のようなものを感じるのである。私はそれを”インダストリアルセクシー”と呼ぶことにしている。

地形がまったく同じ場所はないのだから、集まった人の営みも違えば、そこに流れる歴史も異なり、それがその土地独特の空気感になるのだと思う。

世の中に、「良い」「悪い」なんてないし、「イケてる」「ダサい」もない。あるのはそれらを良い悪い、イケてるダサいに分類し評価する価値観と、歴史に育まれた個性だけなんじゃないかな、と思うようになった。

だから、私たちが作るホテルは、どれも「え、そこ?」となるようなところにある。なんにもないじゃん、と思うかもしれないけど、まあまだそう決めつけないで。

ブス、という言葉を投げつけられた人が自尊心を失ってくすんでしまうのは、街も同じ。まだ誰にも気づかれていない魅力を掘り出して、素敵だよ、とささやきかけ続けることで、ある日サナギが蝶に羽化するように輝き出すんじゃないかと密かに思っている。

そんな、インダストリアルセクシーな街並みを愛してる。

Photographer @tsuyoshinges(1枚目の写真)、 @nikku_ject(3枚目の写真)、 @maki_hampi(4枚目の写真)

【龍崎翔子のクリップボード】バックナンバー

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Vol.04 アナログなアイテムたち

龍崎翔子

2015年、大学1年生の頃に母とL&G GLOBAL BUSINESS, Inc.を立ち上げる。「ソーシャルホテル」をコンセプトに、北海道・富良野に『petit-hotel #MELON』をはじめとし、大阪・弁天町に『HOTEL SHE, OSAKA』、北海道・層雲峡で『HOTEL KUMOI』など、全国で計5軒をプロデュース。京都・九条にある『HOTEL SHE, KYOTO』はコンセプトを一新し、3月21日にリニューアルオープン。

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